「、お祭りよりさぁ、温泉とか良くない…?」

艶やかな黒髪がきっと浴衣に合うと思う。背も高いし、体のラインが出やすい和服はきっと降谷の色気まで引き出してくれるはず。でもそんな姿わたしにしか見せなくていいから人混みは却下ということで。

「名前さん、」
「旅館でお泊まりしてさぁ、っ、のんびり温泉入って、それで、」
「名前さん…っ、」

ぐい、と後ろから顎を掴まれ、振り返ると舌を遣う方のキスをされた。絡め取られる舌が熱くて、反り返る喉が少し苦しくて、でも押し付けられる腰が、気持ちいい。

「ん、んん…っ、降谷…っ、くるし…」
「名前さんが喋るから…」
「体勢、変えよ…?」

ねだるように言うと降谷が一旦わたしの中から熱を引き抜き、ずぢゅ、と下品な音が聞こえて少しだけ顔が熱くなる。ゆっくり肩を抱えられて優しく仰向けに寝かされると、降谷がその上に覆い被さってきた。綺麗な顔。やっぱり浴衣着てほしいなあ。

「何色がいいと思う?」
「もう喋らないでください」
「降谷だったら、っ」

ぐ、と熱を押し込まれ、また息が苦しくなった。蕩けて滑りのいいそこに降谷の熱が溶け込んで背から脳まで一直線に貫かれたように快感が駆け抜ける。変な声が出そうになるのを必死に堪えて降谷に笑いかけた。

「、紺、とかさぁ…っ、えへへ…」
「名前さん…っ」
「んっ、ふぁ、でも白も、ぁん…っ」
「…」

拗ねたようにムッと口を閉じる降谷。わたしの腰を両手で引っ掴んでくるから何事かと思えば、奥まで腰を押し付けて先端を固く閉じた入り口へ押し当てた。

「あ、ぇ…っ? や、やだぁ…っ」

焦って腕を伸ばしても降谷がぐりっと腰を擦り付けるだけでその腕は情けなく引っ込んでしまう。押し潰すように抉られ、ゆっくり嬲るように腰を動かされ、降谷によって覚えさせられた性感がわたしに悲鳴を上げさせた。声、出したくないのに。

「あ、あぁ…っ、や、やめ…っ!」
「喋らないでって言ってるのに名前さんが集中してくれないから」
「ごめ…、やぁっ、やだあぁ…っ」
「何で?」

何でって気持ちいいからだけど、そんなことを言ったらますますされちゃいそうだから慌てて自分の口を手で覆った。塞いでも溢れてしまう声に顔が真っ赤になる。大好きなひとにこんな恥ずかしい声を聞かせるのは未だに慣れないのに、降谷とするといつも出てしまうから苦手だ。

「っ、あ、ああぁ…、あ…」

何かを握っていないとおかしくなりそうで、口を塞いでいない手でシーツを掻き乱す。腰が勝手に上下に動くと、降谷が逃がすまいとそれを押さえつけて更に深く腰を押し付けた。こりこりと固くしこる入り口に何度も先端をくっつける。何度も、何度も。

「だ、めぇ…っ」

びくんっ、と腰を浮かせると、降谷がわたしの腰から手を離して目元を拭ってくれた。ぐったりと力が抜けて気だるくなった体が動かせないでいると、降谷がわたしの顔を覗き込む。

「目が綺麗です」
「、め、ですか…」
「もっと濡らしたくなる…」

濡らしたくなる!?
完全に気を抜いていたから不意打ちでとんでもないことを言われて体が強張った。膣もきゅ、と締まってしまう。なんと素直な体。普段の降谷からは想像しがたいサドい台詞に目を回していると、降谷が「光ってて綺麗ですから」と付け加えてきたので深い意味はなかったようだ。降谷がわたしの頬を両手で包んでまじまじと見つめてくるものだから気恥ずかしくて目を逸らそうとすると、強引にぐいっと正面に正されて腰を押し付けられた。

「動いていいですか」
「もう、動いてるよね…」

ゆるゆると遠慮がちに動き出す腰に苦笑いすると、それを許可と取ったのか少しずつストロークが大きくなっていった。奥をぐりぐりされるのも気持ちいいけど抜き差しされるのも気持ちいい。特に降谷は大きいから突かれる度に先程散々擦られたところに届いてしまって容赦なく責められる。

「あ、また濡れてきた…」
「んあぁ…っ、あ、あう…っ」
「名前さん、かわいい…、」

目を合わせられるのは恥ずかしいけど、気持ち良さそうに目を細める降谷の色気が強くて目が逸らせない。愛おしそうに、少し切なそうにわたしを視線でも愛撫する。好きが溢れてくる。

「降谷ぁ…っ、ぁ、すき…っ」
「、僕も好きです」
「降谷、っ」

わたしが視線を逸らすことは許さないくせに、降谷は少しだけ背を丸めてわたしを抱き締めて熱を吐き出した。イクときの顔見たかったな、なんてちょっとだけ思う。腰を震わせながらわたしの頬へ擦り寄ってくる降谷は何だか甘えてるみたいでかわいい。

「やっぱり黒も見てみたいかなあ」
「…またその話…」

だって本当に似合いそうなんだもん、と言うとまた不機嫌そうにムッとする降谷に唇を奪われる。笑いながら謝って降谷の頭を撫でると、降谷はもう一度わたしを抱き締めた。

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えっちの雰囲気に慣れなくて話そうとしちゃう夢主ちゃんと、わざと集中させるために弱点を責めていたのにまだ考えてたのかと思って少し落ち込んじゃう降谷でした。
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