毎日毎日忙しくしていた主に御褒美が来た。きらきらと輝く美しい刀。主が、今一番欲しかった刀。主が勢いよく抱き締めて喜んでいて、相手の刀剣は慌てたように腕の中で困っているのをぼんやりと眺める。主はこの為に毎日頑張って働いていたんだから、欲しくて欲しくて仕方なかったんだよな。主に選ばれる刀剣は俺なんかじゃないんだよな。ただそれだけのことなのに、目が逸らせない。俺は主に初期刀として選ばれた刀で、数年間主が選んだのは唯一俺だけだった。勿論その間にも主が望む刀剣は何本かあったけど、選んで本丸に迎えられたのは、俺だけだったんだよ。それなのに、俺はその唯一じゃなくなる。主にとって俺はどんな存在なんだろう。悔しくて、虚しくて、言葉にできない。俺の主は主しかいなくて、唯一の主なのに、加州清光は主の唯一の刀剣なんかじゃない。選んでくれたのが嬉しくて、ふたりきりから始まった本丸生活が楽しくて、なるべく気にしないようにしていたんだけど、最初の選択肢がもっとずっと多かったらきっと主は俺を選んでくれなかった。その証拠に、ほら、新しい刀剣に満面の笑みを向けている。

「清光!」

主が俺に気づいて嬉しそうに声を上げる。俺が最後に主のことを思いっきり笑顔にさせてやれたのはいつだったっけ。わかんない。こんなとびきりの笑顔、俺の為に見せてくれたことあったっけ。これもわかんない。大好きな主のことなのにわかんない。全部、全部、主のことなんかわかんない。俺、主に愛されてるのかすらわからないよ。

「何、新入り?」

主の隣に歩いていくと、主は嬉しそうに俺に刀剣の紹介を始める。正直、全然頭に入ってこなかった。こんなこと思いたくないのに、嫉妬で胸が焼けそうだ。汚くて醜いこんな感情を持ってくるくせに愛されたいなんて、強欲なのかな。

「で、こちらが加州清光。この本丸の一番の古株だよ!困ったことがあったら全部清光に聞いてね」
「もー、主はすぐそうやって…」
「ふふ、清光を頼りにしてるんだよ」

どう頼りにされてるのかわかんない。新入りが来る度に案内役を任されて、それが嫌なわけじゃないんだけど、主が欲しがった刀剣と一番最初に接しなきゃいけないのが苦しかった。今までも苦しかったのに、今回はそれ以上に。主が自ら迎えた刀剣を、俺が付きっきりで面倒を見なきゃいけない。唯一を外された俺が、それを奪われた刀剣に。

「まぁ、初期刀だからね」

主に向かって笑顔を見せる。
ねえ、今だけ強がって見せるから、俺をずっと傍に置いて頼っていてね。

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シール、誰を選びましたか……
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