※触ってしまったので赤いですがエロはないです

これはピンチです。
テスト期間に入り全部活動が一時中止、この一週間だけを楽しみにやってきたのですが、目の前にはむくれる彼女と一本のAV。愛しの名前ちゃんの自宅へお呼ばれしてるんるんだったはずなのに、何故かピリピリとした空気を感じて一也くんは思わず正座をしました。

「どういうことですか」

キッと一也くんを睨み付ける名前ちゃん。今日親がいないんです、なんて恥ずかしそうに伝えてきた昼休みの名前ちゃんとは大違いです。一也くんはまじまじとAVのパッケージを見つめました。

「こ、これは…?」
「とぼけないでください」
「いや…ほんとに分からないです…」

上級生だというのに思わず敬語が出てしまうあたり、この緊張感を感じ取っているのでしょう。可哀想に一也くんは指先が白くなるほど強く拳を握り、膝の上に遠慮がちに乗せているのです。名前ちゃんはそれでも許してくれません。

「倉持先輩が御幸先輩にって言ってましたよ。これ、御幸先輩のものじゃないんですか」
「倉持ィ〜…」

話は繋がりました。一也くんは何と説明しようかと一旦目を閉じます。結論から言えばこのAVは一也くんのものでも、そして倉持くんのものでもないのです。野球部内でたまに回ってくる、誰かしらの悪ふざけ。テスト期間は名前ちゃんとゆっくりいちゃつけると惚気を溢したせいか、倉持くんが今日意図的に一也くんに回してきたに違いありません。それも彼女伝いに。

「よし、言い訳を聞いてくれ」
「いやです」

やっと話が纏まり目を開いた一也くんですが、名前ちゃんはつーんとそっぽを向いてしまいます。一也くんは困りました。こうなると、どう弁解していいのか分からないのです。

「名前…」
「……御幸先輩は、おおきい人が好きなんですか…」
「えっ?」
「だから、おっぱいがおおきい人が、好きじゃないですか!」

クッションを抱き抱えて名前ちゃんが大きな声を出します。AVのパッケージには、巨乳のお姉さん。一也くんは優しくクッションに触れました。

「そんなことねーよ、俺は名前しか興味ない」
「み、御幸先輩…」
「だからほら、機嫌直せって」

クッションを優しく退けると、名前ちゃんはどうしたらいいか分からないという顔で一也くんを見上げるので、堪らずその頬を両手で包みます。

「名前のことしか見てねぇから…」

甘く下げられたトーンに名前ちゃんは分かりやすくドキッとしました。顔がゆっくり近付いてきて、キスの合図です。大好きな一也くんにキスされることが名前ちゃんにとって一番の幸せ。

「あ…っ、」

ですが。

「ちょっと、まってください!」

寸前のところで名前ちゃんは唇をガードしました。一也くんはびっくりです。これまで一度もキスを拒絶されたことがなかったのですから。

「何だよ」
「な、流されませんよ、御幸先輩はいつもそうやってわたしをごまかすんです!」

キッ。再び一也くんを睨みます。事ある毎にキスでご機嫌取りをしてきた自覚のある一也くんは、ああ、今回は何だかめんどくさいことになるかもなあ、なんてやんわり思うのでした。


 * * * 



どうしてこんな状況に…。一也くんは頭を抱えます。テレビの画面に映し出される男女の艶かしい性交渉に、ふたり並んで無言なのです。あん、あん、男に媚びるような甲高い嬌声に一也くんは耳を塞ぎたくなりました。確かに大きな胸を揺らしながら腰を振る姿は大変魅力的ではありますが、一也くんのタイプではないのです。一也くんはちらりと視線を遣ると、隣に居た名前ちゃんも一也くんを見つめていました。

「…何だよ」

クッションを抱き締めたままの名前ちゃんは眉をひそめ、一也くんに問い掛けます。

「…まだですか」
「だから、こんなんじゃ興奮しないって」
「うそです…」

恥ずかしそうな声に、一也くんはため息をつきます。これを見ようと提案してきたのは名前ちゃんだったのです。何でそんなもの見なきゃいけないんだよ、と一也くんは止めたのですが、口では何とでも言えます、御幸先輩がこれを見て興奮しないでいられたら御幸先輩のことを信じますから、と。誤解を解くべく仕方なく鑑賞を始めたのですが、一也くんは早く名前ちゃん自身といちゃつきたいというのに、あんまりです。

「なぁ、何十分見てても意味ないって。ほんとに興奮しないから」
「ほ、ほんとに…? ぼ、…ぼ、っ…き…、しないんですか?」
「え? 何だって?」

目敏く聞き返す一也くんをバシッと叩きます。顔を真っ赤にしてしまった名前ちゃんは恐る恐る一也くんの腰元を見つめるのですが、確かに反応はなさそうです。

「じゃあ、ほんとに御幸先輩のじゃないんですか…」
「だからそうだって言ってんだろ、まったく…」

そう言っても名前ちゃんはふいと顔を背けてしまい、また視線を画面に戻します。なんと手強いのでしょう。一也くんはこれ以上見たくないのですから、うんざりした様子です。再びため息を溢して自分も画面へ視線を戻そうとした、そのとき。ごくり。名前ちゃんの喉が鳴ったのです。一也くんはもう一度名前ちゃんに視線を遣ると、クッションを握り締めたまま画面に釘付け。心なしか瞳は潤み、もじもじと膝を擦り合わせているようでした。

「ふうん」

こういうときにすぐににやにやしてしまうのは一也くんの悪い癖です。しかし一也くんは、このAVで興奮しているのは名前ちゃんの方だと気づいてしまったのです。きっと初めて目にしたのでしょう、他人の性交渉を見つめながら紅潮する頬。一也くんはそんな姿にムラッときてしまう健全な男子高校生です。

「名前、そのクッション貸してよ」

一也くんがぐっと身を近付けながらクッションに触れると、名前ちゃんはビクッと大袈裟に反応し、一層クッションを握りました。

「な、なんですか!? あ!? 御幸先輩、それ…!」
「ん? あぁ、勃っちゃった」

一也くんの股間は僅かな膨らみがあり、名前ちゃんはびっくりして固まります。その隙にクッションを退けてしまう一也くん。とっても悪いお顔をしています。

「名前があんまり可愛いからこうなったの、わかる?」
「う、うそです、やっぱりAVに興奮したんじゃ…!」
「じゃあお前はAV見たから濡らしてんの?」

えっ、と名前ちゃんが言うより先に、一也くんの大きな手のひらがスカートの中に入ってきました。ぐずぐずに濡れている下着は一也くんの予想通りです。布越しにツツゥと撫でられて名前ちゃんは息を飲みます。

「これ見て、この男優に興奮した? 妬けるねぇ」
「ち、ちが、」
「じゃあ何? もしかして、自分もこんなことがしたくなっちゃったとか?」
「それは…っ、」

黙ってしまう名前ちゃんが可愛くて一也くんは笑ってしまいます。困った顔をしながらも興奮を上手く隠せず、一也くんのシャツを握ってくるのです。布越しとはいえ火照る熱を感じ取るには十分で、湿る布に指を往復させれば可愛らしい肩がぴくりと上に上がりました。

「っ、みゆ、せんぱ…」
「AVよりお前の方がずっとえろい…」

下着に手を入れ、少し動かせばもういやらしい音が響いてくるそこに一也くんはたまらず欲情し、その興奮を隠さない表情に名前ちゃんも胸を高鳴らせます。こうして誤解は晴れ、名前ちゃんは一也くんを受け入れるのでした。

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倉「昨日の修羅場はどうだった?ヒャハハ!」
御「てめ、わざとだろ!ま、おかげでかなり盛り上がったけどな」
倉「…くそ眼鏡が…」
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