する!と即答すると、口をきゅっと閉じて目を見開く清光。自分から提案したくせに。身を乗り出して「しないの?」と清光に問い掛けると、ワンテンポ遅れて、え、ああ、そうね、と清光が視線を泳がせた。

「主、ポッキーゲーム知ってるの…」
「知ってるよ、そのくらい」
「あ、そう…。それでもやりたいの?」
「…したくないの?」

歯切れの悪い言い方だ。わたしが乗っからないと思ったのか、照れると思ったのか、どちらにせよすることになるとは予測していなかったようだ。早く早くと視線で訴えると、清光は心底困ったような顔でパッケージを開けていく。眉が、下がっている。

「主〜…、ほんとにする?」

ポッキーを取り出しながら上目に視線を寄越す。可愛い。恥ずかしくなってきて困っている清光は可愛い。いつもは自分が追い詰められる側だから、こういうのは新鮮だ。

「恥ずかしいの?」
「うーん、恥ずかしいっていうか…」

ちろ、ちろ、視線が泳ぐ。恥ずかしいんだろうけど、上手い言い訳が見つからない、そんな感じに見えた。負けじと清光を見詰めると、やっと観念したのかわたしにチョコレートがついている方を差し出してくる。

「…はい」
「ん」

楽しくなってきて、ポッキーを咥える。本当ならドキドキするイベントなのに、清光が恥ずかしがっているからなのかいつもより余裕を感じた。自分より怖がっている人がいるとお化け屋敷も怖くない法則? 清光を待つと、渋々といった様子で逆の先端を咥える。思っていたよりも近い。
パキン
ひとくち、進めてみる。近い距離にある清光の顔が少し照れ臭いけど、こうもまじまじと見詰めることも普段ないので、何だか嬉しい。睫毛が長くて、吸い込まれそうな瞳をしていて、肌が白くて。またひとくち、進めた。
パキン
清光も進む。進みながら咀嚼する様子が小動物を連想させた。ひとくち、またひとくち。清光のすっと通った鼻筋が、近い。
パキン
清光の唇がもう目の前にあった。距離が近すぎて清光の顔がぼやけてしまって上手く見えないけど、ほんのり色付いた頬が可愛くて、伏せ目がちに開かれる切れ長の目が愛おしくて。もうひとくちで、清光に触れる。

「っ、」

あと少し、というところで、清光がわたしの瞼を手で覆った。大きな掌に遮られる視界、唇に当たる柔らかな熱。チョコレートの甘味が鼻から抜けて、清光が離れていった。

「清光、」

覆った掌を退かさせようと名前を呼ぶと離してくれたものの、清光はばつが悪そうに視線を床に落としていた。顔がやっぱり少し赤い。

「主、見すぎだから…っ」
「だって清光が綺麗な顔してるから…」
「っ、いつも、目閉じてるじゃん」
「うん、そうなんだけどね…」

わたしの視界を遮っていた手で、今度は自分の口許を覆う清光。今までキスするときに目を開いていたことはなかったけど、もしかして、見られるのが恥ずかしい、とか?

「…清光って、可愛いとこあるよね…」
「はあっ!?」

ムキになって拗ねる清光が唇を尖らす。可愛くて口許が緩んでしまうと、それに腹を立てたのか、清光はわたしの肩をトンと押して畳へ押し倒した。視界が一変する。

「あ、れ…?」

訳が分からず清光を見上げると、どうやら覚悟を決めた方がいいような雰囲気を感じた。ムッとしている清光は、確かに可愛いんだけれど。

「可愛いなんて、言えなくしてやるから」
「あは、は…」

どうしてこうなってしまったのか、本日の主役であるポッキーは卓袱台の上に寂しく置かれたままであった。

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ポッキーゲームする?と誘ってくる可愛い清光をフォロワーさんが描いていましたので、つい…。
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