声が出そうになり、慌てて唇を噛む。割れ目を撫でて蜜を自分の指へ絡めている葵くんは、くす、と小さく笑ってからわたしの耳へ唇を寄せた。

「かわいい…」

のんびりと、穏やかな、甘い声。それにすら感じてしまって肩を浮かせると、葵くんはますます嬉しそうに目を細めた。男の人の、太くて長い指が蜜壷へ宛がわれる。

「すごい、熱いね…」

ぐぬ…、指が中へ沈んでいき、その感触に腰を逃がしそうになる。葵くんの大きな背中にしがみついて耐えるものの、内壁を押し割って入ってくる大好きな葵くんの指が、わたしの内側をゆっくり擦るから我慢がきかない。わたしの熱い膣内が葵くんの指を咥え、葵くんの指が温められていく。熱が溶け合っていく感覚。

「もう少し動かしても、大丈夫？」
「、うん」
「ちから抜いててね」

本当は大丈夫じゃない。ぐ、ぐ、と指が動いて壁を擦り、声が我慢できなくなる。引いてしまう腰も、しがみついてしまう腕も、葵くんにとってやりにくいだろうけど我慢できない。堪らず眉を寄せると、葵くんはわたしを抱き寄せながらわたしの髪の毛に顔を埋めた。

「びくびくしてる。ちゃんと気持ちいいんだね」
「っ、ん、ん、」
「もっとリラックスしてもいいよ。僕が気持ちよくしてあげるから」

わたしが感じていることが葵くんに伝わっているということが何だか恥ずかしくて更に唇を噛んでしまう。葵くんはわたしの髪の匂いを嗅ぎながら指を動かしているようで、耳許では葵くんの呼吸が、下からはわたしのはしたない水音が響いていた。恥骨の裏をなぞるように指を滑らせられると体が強張る。

「いい反応、ここ、好きなんだよね」
「っ、あ、」
「ほら、ここだよ、分かる？触ると、きゅうってするんだ」

勿論気持ちよくなっているのはわたしだから、葵くんの指を締め付けている自覚はある。それをわざわざこうして伝えられると恥ずかしくておかしくなりそうだ。何度もそこだけをすりすり擦る葵くんに、息が、声が、どんどん漏れていってしまう。

「あ、あ…っ、葵くん…っ」
「うん、気持ちいいね」
「んや、ぁあ…っ」

いつもと違うわたしの声。自分じゃないみたいで口を塞ぎたくても、気持ちよさに怯えたまま葵くんにしがみつくことしかできない。蜜がどんどん溢れてきて、葵くんの指をきゅうきゅう咥え、はしたない声を上げる。葵くんから見てわたしは、どんな風に見えているのだろうか。

「あ、おい、く、」
「大丈夫。すごく、かわいいよ」
「！…っ、あ、あぁあ、っあ、」

わたしの心を読み取ったような言葉に大袈裟に身体が跳ねてしまった。びくんっ、と腰が上がると葵くんは指を抜いて、宥めるように優しく抱き締めてくれる。乱れた息のまま葵くんの肩へ唇を押し付けると何だか安心した。わたしも葵くんを抱き締め、息を落ち着かせようと深い呼吸を繰り返す。

「名前、すごく可愛い。僕の指、気持ち良かったんだ」
「う、うん」
「声も、可愛かった。僕の腕の中で震える名前も、すごく可愛い。汗、かいてる」
「う…、」

汗ばんだ肌を撫でられ、どう答えたらいいか分からなくなる。葵くんは思ったことを素直に言葉にしてくれるが、それが何とも擽ったくて恥ずかしい。ひとつひとつを愛されているのだと自覚してしまって目が合わせられなくなるのだ。

「そういうのは言わなくても大丈夫だから…」
「何で？言葉にしなきゃ、伝わらない」
「そ、そうだけど」
「名前はすごく可愛い。それに、名前は僕の言葉で喜んでくれてるみたいに見えるから。もしかして、嫌だった？」

しゅんと眉を下げてしまう葵くんにぶんぶんと首を振ると、直ぐに柔らかい笑顔を見せてくれる。嫌なわけではない、ただ恥ずかしい。こうもストレートに褒められると、どうも居心地が悪いのだ。

「あ、葵くんのそれ、恥ずかしいんだよ…」
「恥ずかしい？それって？」
「だから、そ、その…、かわいい、とか…」

目が合わせられないままぼそぼそ喋ると、葵くんがわたしの顎を持ち上げてしまう。強制的に合わせられる視線にどぎまぎするが、葵くんは穏やかに笑っているだけだった。

「じゃあ、もっとしよう。恥ずかしがってる名前は、いつも以上に可愛い」
「あ、葵くん…！」
「顔が真っ赤だ。本当に可愛い」

かわいい、かわいい、と、そんなに言われても困ってしまう。やめさせようにもやめる気がなさそうな葵くんをどう説得すればいいか分からない。何も言えないのが悔しくて拗ねたように葵くんの胸板をぽか、と叩いてみると、葵くんは笑ってその手を取り、キスを落とした。

「もっと、可愛い名前が見たい。触っても、いい？」
「…うん…」
「ありがとう」

葵くんと体を重ねるといつもこうなってしまう。愛されている自覚をはっきり持たせるように、言葉にしてわたしへ届けてくれる。わたしはそれに応えられているだろうか。葵くんへの気持ちは伝わっているだろうか。わたしは葵くんと違って全部を言葉にするのは得意ではないから、せめて少しでも届くようにと葵くんの首へ腕を回した。

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プレイ記念に。言葉で気持ちを伝えることを覚えた葵が、過剰に言葉で愛してくれると可愛いです。
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