戦闘に行く時は昔からそうだ。
私は小さい頃から弱虫で、怖い未来を想像してはボロボロと涙をこぼしてしまう。
今日もまた、みんなが無事で帰ってきてくれるのか、まさか折れてはしまわないだろうかとひぐっと声を漏らす。
そんな私を見て彼らはいつも、服を握りしめた拳を優しく解き、「大丈夫だよ」と私の小指に小指を絡めるのだ。

時は流れ。
幼い少女だった私もいつしか女性へと変わり、22歳の春。
庭の中心にある大きな樹木には薄桃色の桜の花が綻び、ふわりと心地の良い風が舞う。

私は桜の木の周りに集う刀剣男士を縁側に座って眺めている。

あぁ、そんなことより。
豊作を願う「祈年祭」を中心立って行う石切丸のかっこいいこと。

つい、ほぉっとため息が漏れた。

ふわりと舞う緑色の羽織に、平安時代を思い浮かべるような烏帽子。優しく暖かなその目は春の雰囲気に溶け込んでいる。

一連の祈祷が終わると、燭台切光忠お手製の桜もちと温かな緑茶が提供された。霜に隠れていた畑も今では小さな緑色の芽を沢山のぞかせ、上を見れば透き通るような桃色。みんなでブルーシートを引いて花見をしようって言い出したのは粟田口のかわいい子達だったか。

……もっぱら彼らは花より団子みたいだけど。
(太郎次郎は花よりお酒かしら。)

「隣いいかい、主」
「あ、お疲れさま石切丸。これできっと今年も豊作になるね」
「そう言ってもらえると、祈祷した甲斐があるよ。」

うんうん、と頷きながら桜餅を口に運ぶ。

「ふふっ。粉が口の周りにたくさん」
「え、本当かい?それは恥ずかしいな」

くすくす微笑みながらお餅とお茶を交互に嗜む。

それは、二人とも食べ終わり、お茶を飲んで一息ついた頃だった。
ふと横を向くとぱちっと合う目と目。
瞬間桃色になる私の頬。

ほかの刀剣男士に見つからないよう、そっとお互い手を繋ぎ屋内へと足を進める。

ぐいぐい私を引っ張るその腕は、私を暖かく柔らかく抱き寄せてくれるそれとは全く違って見える。

祈祷をするといつもそうなのだ。
神様との交信であるそれのあとは気が高まるのだと聞いたのは高校生になった頃だ。
今までその気をおさめるために他の女性と性行為をしていたと聞いた私はふつふつと嫉妬の気持ちを募らせた。

私の石切丸なのに。
私の刀剣男士なのに。

その時私は小指を絡めた。

「私がその気を鎮めるから。もう二度とほかの女性を抱かないで」

それは嫉妬からか、恐怖からか。
今まで彼はその約束を違ったことはない。

それからというもの私たちは年に何度かある石切丸の気が高まるその日に肌を重ねている。

かたん、と襖が開けられると、いつもは片付けてあるはずの私の布団が綺麗に敷かれている。準備は万端ということらしい。

「久々なような気がするよ、主」
「そ、そりゃあだって、お正月以来だもの。石切丸、祈祷がないとそういうことしたがらないじゃない」
「ん?主は常々私に抱かれたいと思うのか…?」
「ち、ちがぁっ…ふっ……!」

ちゅむっと唇が合わさった途端に入ってくる熱いそれに頑張って私も応えようとする。

そこに布団があるのに。

待ちきれないように合わさった唇にどんどん溶かされて、立っていられなくなった私を強めに抱き寄せるとさらに口付けを深くする。甘く絡め合う舌と舌。
上顎を舐められ体を震わすと、それに気を良くしたのかさらにそそっと擽るように舐める。そのまま舌をべろぉっと舐められもう腰はぐにゃぐにゃだ。

石切丸は普段ほんわかしてるくせにキスは情熱的だ。
パッと見ガツガツしてそうなのに優しいキスをする兼さんとは真逆だなぁと快感に浮かされた頭の中で考える。

ようやく解放された頃には私は布団に倒されていて、彼は烏帽子を脱いでいた。

「髪、さらっさら…」
「そうやって撫でる癖はいくつになっても変わらないね」
「だって気持ちいいんだもん。石切丸、肌もすべすべだし」
「それは主だって同じだろう?」

首筋をそろっと撫でられて思わず目をつぶる。そのまま襟元を緩ませると着物を軽くはだけさせ現れた肌にキスを落とす。

「真っ白で、綺麗で、汚れのない身体…。」
「その身体を、これから、石切丸だけが汚せるのよ…?」

そう言われた時の石切丸の得意げな顔。
その目だけで達してしまうような男の顔。

「はぁんっ」

急に乳首を噛まれて高い声が上がる。

「んっ、ふうっ、っ、あっ」
「本当に主は敏感だ」
「んやぁっ、んんっそこばっかっ」
「好きだろう?嫌がる事はしないよ」

爪でガリッと乳首の先をかかれ、痛みの奥に快感を見つけてしまう。
いつからこんなに淫乱になったのか。
誰にこんなに淫乱にされてしまったのか。
もはや分からないけれど、私の身体は少し痛いくらいがとてつもなく気持ちよく感じる。

ちゅぷ、ちゅっと溶けるくらい舐められ痛いほどつままれもう頭の中は真っ白だ。

「ぁあ、あっ、も、やだ、きもちっ」
「そうだね、気持ちいいね。」
「んうっ!ぐり、ぐりやら、っあ」

きゅぅぅっとつままれて涙が出てくる。

気持ちいい
胸だけでこんなに
おかしくなる

「ひぃあっ」

真っ白な襦袢だけになった石切丸の膝が私の股の間に入って大事なところをぐりぐりと刺激する。

「もう濡れているのかい…?かわいい人だ」

下着の上から指を押し付けるとちゅぷっと音が鳴る。そのまま上下に擦り付け、端から指を入れるといきなり。本当にいきなり一番大切なところを押しつぶす。

「ぷっくり腫れてる。」
「んゃあっぁぁっ、んっあ、あぁっ」
「そんなに気持ちいいかい?」
「だ、ぁあっやら、やぁっ」

うんうん、とうなづくだけでやめてくれない。親指と人差し指でくりくりと潰し、つるっと逃げたそこを追いかけるようにまた潰す。

「ひぃっ。も、もうっ、あぁっ」
「そうだね、まだ長い。一度達しておこうか」
「あぁぁ、あっ、ひっ、やあっ。い、く、いっちゃ、やだ、あ、あ、あっ……っっっ」

ぴんっと張った足の指先。
ぎゅうっと目をつぶると頭の中が真っ白になる。
肩で息をしながらそっと目を開けると、そこには欲情した男の目。

「い、しきりまる…」
「ん、ほら」

腕を伸ばすと優しく抱きしめてくれる。
熱いくらいの体温と重さがこれが夢ではないと思わせてくれるのだ。

「このまま、もう1回」
「んゃっ」

多分二本。
大事な部分に入った指が私の中のぷくっとしたところを強く擦る。
ぐちょぐちょと響く音がその激しさを物語る。

「ぁぁぁっ!あっ、はあっあっあっ」
「まだだめだよ、主」
「ひぃあっ!んっ、あっあっ!っ、」

びくびく、と体が震えて止まらない。
どうにか我慢しようと力を入れれば入れるほど達してしまいそうだ。

「やぁ、も、ぁ、あっんっ、あぁっ」
「気持ちいいね主。もっと、もっとしてあげようね…」
「ひぃっやぁぁあっ!いっ…………!」

ぐりぐりぃっと膨れたところを擦られ、気を失うような快感。
何度も何度も指だけで快感を与えるのは石切丸の特徴だ。、

骨喰は舌を器用に扱うし

堀川くんはすぐ入れたがる。

なかなか入れてくれないのは安定で

入れてから長いのは加州。

最後まで優しいのが燭台切で

最後には痺れを切らし追い立てるのは長谷部。

それから、あとは…。

途中から思考回路が止まり、息ができないほど体を仰け反らせ、気づけばもう身体は疲れきっていた。その間に私の身を隠していたものは全て取られ、石切丸もまた、締まった体で私を抱きしめる。

「いいかい…?」
「うん、ほしい…。」

熱を含んだ目と目。
そっと入り口に触れ、優しく入るそれにようやく私は安心する。

石切丸
私から離れないで
貴方は私の刀剣男士なのよ?
折れることも離れることも許さない

締め付けるようにきゅうっと力を入れると、目の前の端正な顔が少し歪む。

「っは、石切丸、かっこいい、」
「そんな煽るようなこと…。主はずるい」

ふっ、と笑うと大きなストロークを何度も繰り返す。奥の奥まで突き刺さり、声すら出ない。

「ひ……ぃっ、ぁ、あ、ぁっ」

だんだんと高くなる声にガツガツと打ち付けられる腰。

「は、ぁっ!主、気持ちいいかい…?」
「う、ん、もっと…!もっとぉ……!」
「本当に主は、かわいい人だ、狂おしいくらい……っ」
「ンンッ…!はぁっ!ぁっ、あっー」
「主……っ主…っ」
「ゃ…!も、あっ、いしき、りまるぅっ」

もうだめ

目を瞑ってしまいそうなのを堪えて石切丸の顔を見つめる。

彼もまた熱を孕んだ目で私を見つめる。
いつもは白い頬がほわりと赤い。

欲望のみを写すその顔を見て、ああ好きだ、と泣きそうになりながら呟いた。

その時の石切丸の顔は……

「ゃぁぁぁあっ!」

ガクガクと震える私の体を抱きしめながら、彼もまたブルっと体を震わせた。

あの苦しそうな顔は快感からか、別のところからか。

それを聞くことは、やはりできなかった。

.
.
.
.
.

行為が終わると石切丸は私を抱きしめて眠る。その腕の中で私はまた静かにひく、と喉を鳴らした。

いつか離れてしまわないだろうか。
折れてしまわないだろうか。
みんな、こんな私に愛想をつかさないだろうか。

はらりと落ちる涙と共に目をつぶる。

私は昔から怖いことがあると泣いてしまう。そんな私を見て彼らは、強く強く強ばった私の身体を優しく解いて安心させてくれるのだ。

あの日の小指のように。

fin.
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