お互い性的に一番弱いところを舐め合わないと出られない部屋

あれ、ここは、どこだっけ。
むくりと体を起こした名前ちゃんはぼうっと辺りを見回します。たくさんの机が並んでいて、自分は制服を着ていて、ああ、学校かあ、とやっと把握したようです。随分長い間眠ってしまっていたようで、少し首が痛みました。

「終わってたんだ…」

帰りのHRがいつ終わったか分かりませんが、教室には誰もいません。名前ちゃんはもそもそと机の中に手を入れて、今日課題を出されている分のノートだけ取り出します。今日は帰ったら何しようかな、テレビ何やってたっけ、と考えていると、廊下からバタバタと大きな足音が聞こえました。自然とそちらに視線を向けると、全速力で教室に駆け込んで来たのは同じクラスの影山飛雄くん。名前ちゃんはドキッと心臓を鳴らしました。

「あ…」

教室に入ってきた瞬間チラッと目が合ってしまいましたが、飛雄くんはすぐに視線を逸らして自分の机の前にしゃがみこみます。机の中の物を次々と机の上に出しているようでした。名前ちゃんは心臓を高鳴らせながら自分の胸に手を当てます。

「あっあのっ、なにか、探してるの?」
「ん?」

話し掛けられた!と名前ちゃんは嬉しくなりましたが、飛雄くんは名前ちゃんに視線を遣ると目を細めるようにぐっと眉間に皺を寄せます。じいっと名前ちゃんを凝視しますが特に言葉を発しないので名前ちゃんはドッドッと心拍数を上げながら落ち着きません。大好きな飛雄くんに話し掛けられただけでも緊張しているのに、そんな長い間見つめられたら心臓が飛び出てしまいそうです。

「数学のチャート」
「えっ、あ、そう…なんだ」

数秒後に返された言葉は随分と素っ気ないものでした。たった数秒なのに見つめられていた時間を長く感じた名前ちゃんはこれ以上話していたら心臓がもたないと判断し、飛雄くんから視線を逸らします。

「今日は課題たくさん出たもんね、影山くんは遅くまで部活もあるのに大変だぁ…」

聞いておいて何もないのも不自然なので一応そう言ってそろそろと距離を取ります。このまま立ち去ろうかなあ、でも、大好きな影山くんとせっかくふたりきりなのに、ああ、でも。心の中で葛藤を広げていると、飛雄くんが眉間に皺を寄せました。

「よく知って、ますね…?」

不審者でも見るような険しい視線で名前ちゃんを射抜きますので名前ちゃんも慌てました。ただのクラスメイトが所属してる部活を知っていたら気持ち悪いかなあ、でも、影山くんは有名だしなあ、それともわたしと同じクラスだってことも知らないのかなあ。乾いた笑顔を作って見せると飛雄くんは更に眉間に皺を寄せてしまいます。

「あ、あの、クラスの子が影山くんの話をしてたから…いつも頑張ってるねって…」
「あぁ…」
「わたし一応影山くんと同じクラスなんだけど…」
「…」

そのくらい知ってる、と返ってきてほしいなんて期待しましたが、飛雄くんは黙り込んでしまいました。やはり知らなかったようです。いつも教室ではバレーのことを考えているか眠ってしまっているのか二択なので仕方ないと言ってしまえばそれまでなのですが、もう少し周りに興味を持ってほしいところです。

「…名前はなんていうんスか」
「!わたしのですか」
「うす」
「苗字名前です!」
「…」

興味を持ってもらえたかも!?とはしゃぐ名前ちゃんに可哀想ですが、飛雄くんは名前を聞いて頭の中でワード検索を掛けているだけなのです。苗字、苗字…、考えてみても聞いたこともありません。

「俺は…影山飛雄です…」
「はい知ってます…」
「…」
「…」

謎の自己紹介を終え、多少気まずくなり始めました。今日は廊下が嫌に静かです。他のクラスからも人気を感じられず、ますます落ち着きません。これ以上会話を繋げることは難しいと判断した名前ちゃんはとりあえず今が何時なのか確認しようと時計に視線を遣りますが、不思議なことにいつもある場所に時計がないのです。

「あれ…」

名前ちゃんがそう呟いたのと、ほぼ同時でした。名前ちゃんの背後からシャーッとカーテンを引く音が一斉に鳴り、びくっと振り向くと教室のカーテンが全て閉まっています。教室には名前ちゃんと飛雄くんしかいませんから、驚きの余り声が出ませんでした。カーテンが独りでに閉まったのです。

「えっ、ど、どういう、」

理解が追い付かないでいると、次は飛雄くんの背後でガシャンと施錠の音がしました。教室のドアから聞こえたようですが、まさか、と真っ青になるふたり。ドアに付いている小さな窓には外から布のようなものが当てられているようで外の様子が見えません。

「影山くん、今なんか鍵の音が…」
「俺も聞こえた…」

急いでドアに駆け寄りますが、ドアは引いてもびくともしません。

「やっぱり開かないっスね」
「え!?ほんとに!?」
「あっちのドアもやってみます」
「う、うん」
「…こっちもだめだ」
「そんな…」

完全に閉じ込められてしまいました。ならば窓から、と思ってカーテンの閉められた窓に駆け寄ってみますが、校庭で野球部の練習姿は見えるのに窓の鍵が開きません。窓の鍵がまるで何かで固められたように動かないのです。どうにも脱出不可能です。
と、そこへ、ピーンポーンパーンポーンと陽気な放送が流れました。

「1年生の影山飛雄くん、苗字名前ちゃん、おめでとうございます。当選です。あなた達には今から協力し合って親睦を深めてもらいます。教卓の上に課題が置いてありますので頑張ってクリアしてくださいね!サヨウナラ!」

ピーンポーンパーンポーン。
ふたりともスピーカーを見つめながらぽかんとしてしまいます。当選、課題。一体何のことでしょう。名前ちゃんは恐る恐る教卓に近付くと、成る程一枚の紙が置いてありました。

「…」
「…何て書いてあるんスか」
「えっ、とね…」

名前ちゃんは思わず自分の目を疑います。口にするのも憚れるような内容です。えっ?ほんとに?と何度も読み直すのですが、何度読んでも同じでした。

「苗字さん…?」

飛雄くんが心配そうに紙を覗き込んできます。固まる名前ちゃんの横で飛雄くんは小さく声を漏らしました。

「『この部屋はお互い性的に一番弱いところを舐め合わないと絶対に開きません』…?性的に一番弱いって何だ?」
「えっ」
「えっ、名前さん知ってるんスか」
「えっっっ」

なんで、知らないの!
声にならずにぱくぱくと口を開け閉めすると、飛雄くんはウーンと首を傾げます。

「性的にって何だ…?弱点を舐め合うってことか??弱点…??」
「影山くん、それほんとに言ってる…?」
「何がっスか」

ほんとなんだ…、と名前ちゃんは肩を落とします。確かに飛雄くんはバレー以外に執着を見せませんが、それにしてもです。

「お互いの性器を舐めなさい、って、ことだよ思う…よ」
「せい…き?」

直接的な表現にすると飛雄くんはみるみる顔を赤くしていきました。これすら伝わらなかったらどうしようかと思っていましたが、大丈夫そうです。飛雄くんは名前ちゃんから目を逸らした後、あー、なんて短く声を漏らします。

「これ、しなきゃ出らんないっスかね…」
「…うん、多分。絶対にって書いてあるし…」
「そう…っスね」

どうしても開かないことは先程検証済みです。困りました。飛雄くんはうろうろとその場を落ち着きなく歩きましたが、そのまま自分の机に戻って机の上に腰掛けました。

「俺、こんな行事があるなんて知らなかったんスけど」

飛雄くんが話し掛けてくるので慌てて名前ちゃんも飛雄くんの近くに行き、わたしも、なんて相槌を打ちました。

「というか、こんな校内行事おかしいよね。誰かの悪戯だったり…?」
「うーん…けど窓の鍵とか徹底してるし…」
「教室の鍵だって生徒は持ってないよね…」
「んー…」

飛雄くんは手悪戯を繰り返しながら話していましたが、急にバッと顔を上げます。

「練習…っ!あれ、時計がない!?」
「さっきわたしも思った。そうだよね、影山くん練習に行かないと…」
「もう既に遅れてるんスけどね」

飛雄くんは部活を意識し出してから分かりやすくそわそわしました。早くここから出たい、バレーをしたいと顔に書いてあります。

「影山くん…、嫌かもしれないけど、する?」
「えっ」
「そうしないと出られないよね」

心臓が飛び出しそうな名前ちゃんがそう言うと、飛雄くんは少し唇を尖らせます。きっと迷っているのでしょう。飛雄くんのことが好きな名前ちゃんはどちらでもいいのですが、飛雄くんは単に居合わせただけで名前ちゃんの存在などさっき知ったばかりなのです、そう簡単に答えは出せません。

「…苗字さんは嫌じゃないんスか」
「えっ、いや、あ、あの」
「俺は…、部活に行けるなら、まあ…」

飛雄くんのこんなに弱々しい声は先月英語の時間に課題を英語で読み上げろと当てられたとき以来に聞きます。名前ちゃんを意識してか頬が赤く、視線は落ち着きなく動いていました。そんな姿を見ていると、何とかしてあげたいと思ってしまいます。名前ちゃんは飛雄くんの足元にそっとしゃがみました。

「えっ、ちょ、」

言葉では焦っているようでしたし、実際焦っているのかもしれなかったのですが、飛雄くんだって男の子です。それらしい抵抗も見せずに名前ちゃんを見下ろすのは、期待と好奇心が拭えなかったのでしょう。ゆっくりベルトを外され、チャックを下ろされますと、もう熱が籠っていて少し反応していました。スラックスと一緒に下着をゆっくり下ろし、名前ちゃんは優しくそれを口に含みます。

「っ…」

人の口の中は思っているよりも熱を持っていて、飛雄くんは眉を寄せました。自分の指よりもずっと柔らかな舌が艶かしく飛雄くんのモノをなぞるのです。最初は先端を含まれ、唾液を垂らしながら亀頭を嬲られ、それが竿を伝って濡れていくと今度は一旦口から出されて裏筋に吸い付かれます。ぬるり。優しい刺激のはずが未知の快感への好奇心と相俟って少しの刺激も敏感に拾い上げてしまうのです。飛雄くんは下唇を噛みながら熱い吐息を耐える他ありません。

「っ、ふぁ…、ん」
「…は」

決して狭い教室ではありませんが、この空間の中ではお互いの吐息以外聞こえません。外では吹奏楽部の合奏や野球部の練習の声援等が飛び交いますが、何かに制御されているかのように遠くに感じ、お互いの息遣いがやけに大きく聞こえるのです。飛雄くんが耐えきれていない深い息も、名前ちゃんが鼻から漏らす甘い声も、お互いの聴覚を刺激して一層興奮を高めました。くち、くち、にち、にち。名前ちゃんの小さなお口の中で粘膜と触れ合い唾液と混ざり合って厭らしい音を立てます。飛雄くんは思わず腰を引いてしまいそうです。

「う、…っ、く、待っ…」
「んん、ん、ん」
「待て…っ、ぁ、んく…っ」

飛雄くんの切なげな声に名前ちゃんはぞわぞわします。喉奥に熱を押し込んでおしゃぶりすると、飛雄くんはびくびくと口の中で小さく痙攣をし、欲望を放ちました。口いっぱいに熱いものが広がります。

「ふ、ぁん…、」

鼻から抜ける生臭い臭いについ眉を顰めてしまいますが、飛雄くんを見上げると息を乱して背を丸めている様子が言葉にし難いほど愛おしく、ごくんと喉を鳴らしました。味は不味いので勿論半ば強引ですが、飲んでみたいと思ったのです。

「っは、はぁ…っ、いま、」
「ひ、引いた?」
「ん…」

飛雄くんが一瞬目を見開いて、信じられない、という表情をしたので名前ちゃんは少し焦りましたが、飛雄くんは机に座り直すとスラックスを穿き直しました。まだ気怠いのか顔がぼぉっとしています。

「次は苗字さんの番…っス」
「えっいやっわたしはいいよっ」
「でもしなきゃ開かないんじゃ…」
「あっそっそうか…」

大好きな影山くんに、舐められる?
名前ちゃんは頭がパンクしてしまいそうです。舐めさせてもらっただけでも幸せだったのですが、舐めてもらうなんてとんでもない、しかも飛雄くんは名前ちゃんのことだって知ったばかりなのにそんなことさせられません。でもしないと出られないのです。困って立ち尽くしていると飛雄くんは自分の机から降りて、名前ちゃんにチラリと視線を遣ります。

「ここ座って」
「で、でも」
「練習あんま遅れらんないっスから」
「あぁそうだよね…」

飛雄くんはいつだってバレーが大好きです。そんなこと飛雄くんをずっと見ていた名前ちゃんだって分かっています。早く練習に行かせてあげたい気持ちと自分の羞恥がぶつかり合ってどうしようもない名前ちゃんはおずおずと飛雄くんの机におしりをくっ付けます。

「あ、あの、」

ほんとにするの、なんて確認する暇もなく、飛雄くんは名前ちゃんに覆い被さると腰を持ち上げて机の上に名前ちゃんを乗せてしまいました。躊躇いなくスカートを捲られ、小さく息を飲みます。飛雄くんは名前ちゃんのショーツを引っ掴むとやや強引に下げました。ワンテンポ遅く名前ちゃんが抵抗を試みますが、ショーツへ糸引いたそこはもう既に飛雄くんにバッチリ見られています。

「うわっ」
「ああああ影山くん!これは!」

自分でもこんなに濡れていたとは思っていなかった名前ちゃん。動揺して大きな声を出しますが、飛雄くんはそれに紛れて小さくごくりと喉を鳴らしました。初めて見る女の子の体なのです。

「すっげ…こうなってんのか…」
「え、あ、ちょっと待って」
「ん…、」

飛雄くんは名前ちゃんの声なんか聞いていません。太ももに手を添えて軽く持ち上げると、ぬるぬるしたおつゆを出しているそこへ舌を伸ばしました。しょっぱいような、少しすっぱいような、変な味です。舌で何度か舐め取ると名前ちゃんの腰がぴくんと小さく跳ねました。

「は、ぁう…っ、影山、く、」
「んっ…」
「あぁ、あ…っ」

ぴくん、ぴくん、名前ちゃんの腰は動きます。飛雄くんの舌の動きに合わせて刺激を求めているようにも見えました。飛雄くんもう少し舌を突き出して膣中への先端を挿入しました。ぬるり。柔らかい感触が肉裂を割ってくるので名前ちゃんは焦ります。

「やぁ…っ、あ、まって、やあんっ、あっ!」
「んん、ん、ぢゅ、う、」
「あぁっあっ、んあっ…ぁっ」

未知の刺激に逃げるように体を捩りますが飛雄くんは太ももを離してくれません。舌は膣中を何度も出入りして内壁をねろねろと嬲りました。

「まって、や、やぁあ…っ、まっ、かげやま、くん」
「ん…っ、うごく、な」

腰を押さえ付けるように脚を固定し、飛雄くんは頭を埋めます。中からどんどん溢れてくる蜜が邪魔だとでもいうように飛雄くんはそれを吸い上げて飲んでしまいます。ぢゅる、ぢゅるる、と下品な音を立ててからまた舌を突っ込んで内部を刺激し、また蜜を啜ってから内部を刺激する、この単純な動作の繰り返しに名前ちゃんの太ももは次第に引き攣り、頭は熱で爆発しそうでした。

「あ、あぁ、あ、だめぇっ、」

飛雄くんの髪に手を添えて名前ちゃんはびくっと大袈裟に腰を引きます。膣が世話しなく収縮を繰り返し、どくんどくんと脈打ちました。続く倦怠感にぐったりと体の力を抜くと、飛雄くんも察したのか顔を離し、びしょびしょに濡れた口許を袖口で拭います。

「大丈夫っスか」
「は、ぁ…っ」

まだどくんどくんと熱を持っていて上手く返事ができません。名前ちゃんはのろのろ飛雄くんを見上げると少しだけ頷いて見せました。それを確認してから飛雄くんはドアへと向かい、手を掛けますが…、

「ん?」
「え?」
「開か、な、い」
「え?」
「開かないっスけど」
「え!?」

飛雄くんはしょんぼりと肩を落としてしまいます。部活に行きたいのだと思って焦る名前ちゃん。働かない頭を無理矢理ぐるぐる回します。

「だ、だって、性的に一番弱いところって書いてあったよね?」
「うす」
「一番弱いところ…一番…、あ!もしかして…!」

名前ちゃんがパッと顔を上げると飛雄くんまで釣られて目が輝きます。すぐに駆け寄ってきて教えろとばかりに目を合わせる飛雄くん。しかし少々言いづらいです。

「なんスか」
「あいや、えっと、その」
「思い付いたんスか」

ずいっと顔を近づけてくるものですから名前ちゃんはつい視線を逸らしてしまいます。

「だからその…個人差はあるんだけど女の子の弱いところってもうひとつありまして…わたしの場合はそっちの方が弱いのかもしれないです…」
「もうひとつ?」
「うんだから…ク…いやあの、うん、とにかくあるの…」

名前ちゃんは顔から火が出そうでした。説明してあげたくてもそれ以上どう言えばいいのか分かりません。困っていると飛雄くんは再び名前ちゃんの足元にしゃがみます。

「もしかして、こっち?」

飛雄くんはちょっと唇を尖らせながら赤く腫れているクリトリスを指差します。先程舐めているときから尖ってきて少し気になっていたものです。名前ちゃんは顔を真っ赤にしながら小さく頷くと、飛雄くんは躊躇いなく顔を埋めました。

「か、影山くん!?」

熱い舌が名前ちゃんのクリトリスをなぞります。突然の刺激にびくっと背中を反らすと、飛雄くんもびっくりして名前ちゃんを見上げました。すごい反応です。

「かげや、まく、いまだめっ、」
「えっ?」
「いま、いったばっかだから、だめなの…、すこしまって…っ」
「っ…」

とろんとした顔で、いまはだめ、だめ、と繰り返す名前ちゃんに飛雄くんは心臓を殴られでもしたかのような感覚に陥りました。女の子がこんな顔をしているところを見たことがありません。こんなに艶かしく涙を滲ませて息を乱す生徒が本当に同じクラスにいたでしょうか。飛雄くんは堪らずクリトリスにしゃぶりつきます。

「っあ、あぁ!?まっ、てぇ…っ、かげやまくん…っあっあぁ…っ!」
「ん…っ、ん」
「だめぇっ、だめ、あ、あぁあ、いまだめっ、あ、はなし…っ、あぁああ!」

びくびくんっ。名前ちゃんの腰が大きく跳ね、息遣いが変わりました。ハーッ、ハーッ、荒々しい呼吸に飛雄くんの体も熱を持ちます。変な味だと感じていたそれも口の中で熱を持つかのように飛雄くんを欲情させるのです。

ガチャッ

解錠の音がして名前ちゃんはぴくっと顔を上げました。ぼろぼろ生理的な涙を溢しながらも鍵が解けたことに安堵しているようです。

「影山くん、ドア開いたね」
「え?あぁ…」

飛雄くんはその場から動きません。床にしゃがみこんだまま名前ちゃんをじっと見つめていました。熱くなっていく体がバレないように少し前屈みになっているのです。

「影山くん?」
「ん…じゃあ、行く…」
「えっ、ちょっと待って、鞄…、」

飛雄くんが慌てて立ち上がって教室を出ていこうとしますが、本来忘れ物として持ちに来た数学のチャートすら置いていこうとしていたので名前ちゃんは焦りました。声を掛けても飛雄くんはこちらを向きません。

「まず!トイレ…行くから…」
「えっあっはい」
「…」

下腹部を押さえている飛雄くんは幾分不自然ではありましたが、特に引き止めるでもなく名前ちゃんは素直に見送りました。飛雄くんの机を汚してしまったので後処理をしなければいけません。

「影山くんもえっちなことできるんだなぁ…」

ぼそ、と呟いてから名前ちゃんはハッとします。不自然な前屈み、下腹部を押さえた手。飛雄くんはトイレに何しに行っているのか勝手な妄想を始めてしまいました。

「ま、まさかね…っ」

腰を浮かせると、自分の愛液と飛雄くんの唾液で濡れた机が小さな水音を立てます。にちっ。なんと背徳的で素敵なのでしょう。

「影山くん、かっこよかったなぁ…」

うっとりと溜め息を吐く名前ちゃんが飛雄くんとどう進展していくのかは、また少し先のお話です。


END
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スケベをさせたいだけの企画でした。名前様、お付き合いありがとうございました。
20170331
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