縁側に腰掛けてぼんやりと外を眺めていると昨日の出来事が嘘のように思えてくる。行為が終わったと同時に気を失ってしまったのか、起きたら隣に清光がいなくて尚更自分の夢だと思ってしまう。思いたかった。清光と肌を重ねるのはとても心地好くてうっとりしてしまうほどの快楽であったが、逆にそれが酷く惨めだった。こんな病を患って、大好きな清光に迷惑を掛けて、あんな行為に付き合ってもらっておいて、自分だけ気持ちいいなんて。この体に吐き気さえする。

「あ、あるじさま…」

隣に座っていた五虎退が心配そうにわたしを見上げた。これはわたしだけの問題ではない。わたしが誘ってしまったら例えこの短刀であっても欲望を引き摺り出されてしまうのだ。そう思うと自然と表情は強張り、上手く笑えているか分からなくなってくる。大丈夫だと返す代わりに頭を撫でてやると、五虎退は嬉しそうに笑った。

「主さま、きっと大丈夫です。心の優しい主さまのこと、神様はきっと見ているはずです」
「ふふ、そうね」

神はあなたもでしょ、と冗談を言って返そうかと思ったがやめておいた。秋田もわたしの隣に寄り添う。

「僕達にできることは何でもやります。いつでも主君のお手伝いをしますからね」
「ありがとう、頼もしいよ」
「僕もです!」

前田が力強く主張する。嬉しくて目頭が熱くなった。この子達はわたしの病をきちんと理解しているのか、自分達も迷惑を受けると解った上でこのように優しい言葉を掛けてくれているのか、それは分からないけど兎に角嬉しかった。暖かい言葉に不安が僅かばかり溶かされていく。いい刀の主になれたな、とただ幸せを噛み締める他なかった。


--------------------
短刀達はちゃんと理解しています。名前様、お付き合いありがとうございました。
20170201
(  )
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -