ハグをしないと出られない部屋

真っ白な部屋の真ん中に一枚の紙。

『「ハグ」を3分間してください。
その間は何をしていても構いません。』

「ひゃっあ」
「ヒュー」

顔が真っ赤になった私とは別に口笛を吹く菅原さん。

「ほらほら、早くぎゅーするべ、名前?」
「え、え、えっ!やだ、はずかし…っ」
「ほーんと名前は恥ずかしがり屋だなあ。ほら、ぎゅーするだけだから、な?」

菅原さんと付き合い始めて3ヶ月。
手を繋ぐにもドキドキして、ぎゅうなんて心臓飛び出そう。
それに、付き合ってから気づいたんだけど、私が思ってたよりも菅原さんはとっても大人でちょっとえろっちい。
そんな菅原さんにぎゅうされている間何してもいいなんてなにされちゃうか……!!!

かぁぁっと赤くなった私を見てふっと意地悪げに笑った菅原さんはその場に座ると、片膝だけを立てて腕を広げた。

「名前?まだ?」

ん?と首を傾げる菅原さんがあまりに可愛くて、あまりにかっこよくて。

しゃがんで自分から胸に飛び込む勇気なんてないの知ってるはずなのに。
ほんと菅原さんっていじわる。
すんごい優しい顔してるのに、すんごいいじわる。

ほーらっ、て床をぽんっと叩かれて、私は仕方なくそろそろとしゃがんで膝歩きで歩み寄る。

「うーーーーっっ。」

目をつぶってぽすっと胸の中に飛び込むと、すんごいあまあい声で名前を呼んでぎゅっと抱きしめてくれた。
あまりに恥ずかしくて、下を向いたまま擦り寄ると嬉しそうな声でふふっと笑って頭を撫でてくれる。

「こっから3分…何してもいいんだっけ?なにするべ?」
「え、なに、って、え、」
「なに、えろいことしてほしいん?さすが俺の彼女だなーっ」
「ちがっ、ちがうもん!そんなこと!」
「じゃあどうしてほしい?」

ん?と優しくとかれて頬が緩むのがわかる。
何かねだっていいなら、それなら…。

「そ、そのまま、あたま、なでててほしい」

ぴたっと止まる撫でる手。

「あ、ごめ、」

そう言った途端。

「ほんとに名前は可愛すぎる。」

え?と顔を上げると、丸い目が顔のぎりぎりまで迫ってきて、おでこがこつんとあたる。

「そんな事言われたら、本当に止まんねえよ?」

優しげに細める目の奥に隠しきれない欲の影

「す、菅原さん、好き」

その目を見つめて少し期待しながらそう言うと、目を瞬かせた菅原さんはそのまま私の唇を奪う。

「……っふ」

何度も何度も啄まれて、ちゅっちゅっとリップ音が部屋に響く。
それだけで息が上がっちゃう。

少し唇が離れたタイミングに、っは、と息を吸った時だった。

「んんぅっ??!」

唇の間を優しく割って入ってきたそれに舌がくすぐられる。
最初は私の舌の裏を丹念に舐めていたかと思うと、上顎を舌先でなぞったり、ちゅうっと吸われたり。
何もかもが初めてすぎる私は、はふはふと息をすることしかできない。

「ふぅっ、はっ、んっ」

こぼれる息が恥ずかしくて舌を引っ込める。

すると。

「んっふ!」

頭の後ろに回った手が菅原さんへと引き寄せ、その口付けはさらに深くなる。

「ふっ!ぁん…っ」

背中にあった菅原さんの手がいつの間にか前に回ってきて……

それでその手が……

私の胸に……

ガチャッ

ドアが開いた音がすると、名残惜しそうに私たちの唇が離れた。
えっちい菅原さんが最後に舌を抜いたせいで、それが見えた私はさらに顔を赤らめる。

もう一度ぎゅっと私を抱きしめた菅原さんの顔はなんだか満足そうだ。

「ほら、行くべ。」

そう言って私の頭を撫でてくれた菅原さんの顔を、私は見ることが出来なかった。
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