添い寝をしないと出られない部屋


真っ白な部屋の中央に布団が一式。
二人で寝るには少し狭そうなそれから一定の距離をとる大地さん。

後ろから顔は見れないけど耳がまっかっか。
寝っ転がるだけなのに。

「あ、の大地さん、早く寝ちゃいましょ…?」

くいっと後ろから服をつまむと、こっちが驚くくらいビクゥッ!!!と体がはねた。

私の方を振り向いた大地さんは見たことのないくらい動揺してて、いつもどっしりした彼とのギャップにふふっと笑ってしまう。

「なんで苗字ちゃんはそんなに余裕そうなんだよ…」

頭をガシガシかくと、意を決したように布団に向かい、ガバッと捲って自分が入ると私の方向に背を向けた。

「あの、早く寝っ転がってくれ、早く終わらそう」

その言い方に最初こそきょとん、としたもののだんだん頬を膨らませた。

なによなによ、そんなに一緒に寝るのがいやなの?
確かに1年生のマネージャーの私は大地さんとあまり関わりがないけどそれでもそんな態度とらなくたっていいのに。

むうっとむすくれると、布団に入って大地さんの背中に背中をくっつけた。

いつもする、鍵のあく音がしない。

これってもしかして、ちゃんと向かい合うとかしないと開けてもらえないの…??

私がそう思い立ったと同時に大地さんの体がこっちに向いた気配がした。

「苗字ちゃんごめん、少し頭あげて」

思ったより耳元で聞こえる低めの声に身体中の熱が上がる感じがする。

はい、と答えたかどうか。
少し頭をあげると筋肉質の腕が入ってきて前から私の肩を抱いた。逆側からも腕がきて、羽交い締めされるように抱きしめられる。

え、むり。
むりむりむり。
体があっつくなって、心臓がうるさい。
大地さんと触れる背中もあっつくて。

耳元に大地さんの息があたって、ひゃぁ、と声が上がった。
恥ずかしいと思うやいなや。
耳元に大地さんの熱が近づく……。

「名前ちゃん…」
「へ、あ、名前…」

さらに密着度が増して私の足と足の間にぐっと大地さんの膝が入った。
制服のスカートは少し捲れ、なんともえっちくて…

「あ、あ、あの……っっっ」

ガチャッ

もう聞きなれた鍵の空いた音。
時まで止まったように静かな空間でぼそっと大地さんが呟いた。

「……あいたな。」

「あ、あきましたね。」

……。

「ご、ごめん!俺……!!!先行く!!!!」

布団から勢いよく立ち上がりダッシュで次の部屋に向かう背中を見送ると、ドクドクとうるさい胸の音を聞きながら自分の体を抱いた。

背中に残る大地さんの熱が、冷めない。
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