合コンで知り合ったときから彼の印象は「かわいい」だった。よく相手のことを見ていて細かいところまで気が付く。女の子が好きそうなものを把握してる。話していてすごい楽しい。トド松くんといるとすごく自然体で、それは友達と過ごすそれと同じなんだと数回会ってから気付いた。トド松くんは今日も可愛らしいピンクが中心のコーディネートで、わたしを飽きさせない話題で、過ごしやすい時間を提供してくれた。
「風がきもちいね」
アルコールの入った体はぽかぽか熱を発して微かな夜風が肌を撫でるだけですごく気持ちが良い。隣にいるトド松くんも、そうだね、なんて言いながら帰り道を歩いていく。ふわふわ宙に浮くように気分が良くて些細なことが楽しくて仕方なかった。飲ませ上手のトド松くんといるといつも飲み過ぎちゃうなあ。
「ん、…ん?」
ぽつり。急に鼻の頭に水滴が落ちてきた。上を見上げるとトド松くんも一緒になって上を見上げ、手のひらを空へ向ける。それは次第に大粒に、そして大量になり、雨が降ってきたと理解した。
「わわ、傘持ってない…」
「困ったなぁ、僕も持ってないよ…どこかで雨宿りする?」
トド松くんの提案に頷きかけたけど、すぐそこまで帰ってきてるのに今更どこかに寄るのも何となく気乗りしない。トド松くんだって雨宿りがてら家で休めばいいなあ、なんて安直な考えでトド松くんに振り返った。
「ねえ、うちもうすぐなんだけど、寄ってく?」
(( 雨に隠れて ))部屋に入ると同時に玄関の鍵を掛けた。そんなに広くないワンルームだけどもうここに引っ越してきて3年は経つ。真っ暗で何も見えない壁に手を付いていつも通りに電気のスイッチを探してると、後ろにいたトド松くんが急にわたしに抱き付いてきた。
「えっ…」
驚いて小さく声を漏らした瞬間、ゴロゴロと大きな音を立てる外。わたしの体も反射的にビクッと強張った。かなり近くで雷が鳴っている。
「名前ちゃんも雷苦手なの?」
トド松くんはそう言いながら腕を離す。突然で吃驚したけどとりあえずそちらを振り向くとトド松くんは困ったように笑っていた。も、ってことはわたしと同じで雷が苦手なのかな。
「う、うん、ちょっとこわいよね…」
「だよね、今のかなり近かったし。急に抱きついちゃってごめんね」
「ううん、全然平気だよ」
笑って見せるとトド松くんは安心したように笑い返して、それから、わたしの後ろにあった壁にトンと手を付く。
「平気って、なにが?」
笑顔は崩さないまま優しく問われた。トド松くんの顔が近くて、後ろに下がろうと思っても壁があって、うっかりサンドイッチにされてしまったことに理解が追い付かない。あれ、わたしまだ酔ってるのかな、トド松くんの顔がすごい近くて、この状況は、まずいんじゃないのかな。
「あれ…?」
どうしてトド松くんがこんな近くにいるのか分からなくてトド松くんを見上げると、顎を持ち上げられて更に顔を近付けられた。雨宿り、しに来たんだよね?
「待ってトド松くん、なんか、近いよ…」
「そうだね、こんなに近かったら唇がくっついちゃうかも」
「そ、それって、だめじゃない?トド松くんは雨宿りしに来ただけ…でしょ?」
「何を焦ってるの、名前ちゃん?」
トド松くんはわたしの耳に唇を寄せる。息が掛かりそうなほど近い。
「男を家に上がらせたのは名前ちゃんでしょ?」
頭の中で警報が鳴った、気がした。酔っていても分かるくらいこれはまずい状況で、トド松くんの聞いたことない低い声がわたしの鼓膜を揺さぶって、逃げなきゃ食われると思って胸板を押した。細いと思っていた体は案外しっかりしていて男女の体格差を思い知らされる。
「僕に何されても平気なんでしょ?全然平気ってさっき言ったよねぇ」
「ちょっとトド松くんっ、急に、」
「名前ちゃん僕のこと全然意識してくれてないの知ってたからどうしようかと思ってたけど、まさか家に招いてもらえるなんて思わなかったよ」
トド松くんが耳から顔を離し、わたしに向き直る。目を細めたトド松くんは愉しそうで、いつもと変わらない表情のはずなのに何かが違う。トド松くんから目が離せなくなっていたら、また雷が大きな音を立てた。
「っ…!」
思わずぎゅっと目を瞑ると、トド松くんはわたしの顎を引っ掴み、唇を覆うように塞ぐ。それにびっくりして一瞬目を開けたけどまたすぐに雷が光って、慌てて目を閉じた。雷もトド松くんも、怖い。はむ、はむ、と唇を遊ぶように食まれ、トド松くんの柔らかい唇の感触を覚えさせられる。トド松くんの胸板を押してもびくともしない。
「ん、う…っ」
顎をしっかり掴まれたままだから顔も反らせず、トド松くんにされるがまま。下に顎を引かれて僅かな唇の隙間に舌を捩じ込まれた。
「ふあ、や…っ、ん」
いよいよ本気でまずいのにお酒の抜けない体では上手く力が入らなくて、舌を熱で擦られる。蕩けそうなほど熱い舌、トド松くんもアルコールが抜けてないみたい。ちゅく、と水音が響いて体を捩ると、トド松くんは一層舌を絡めてきて口内で厭らしい音を立てながらわたしを犯した。ふわふわ体が熱くなって、お酒に酔わされてるのか熱に浮かされてるのか分からない。このまましてたら、だめ、だと思う。
「あ…っ、とどま、」
唇が離れた隙間から言葉を漏らしたのにまたすぐ塞がれて、わたしの声は口の中から出してもらえなかった。んん、んん、と言葉を発してみようと試みるけどまるで敵わない。頭がぼうっとしてきて、トド松くんの足がわたしの足の間に入ってくる。
「目、濡れてる」
「あ、ぅあ…っ?」
やっと唇を離された頃にはもうすっかり壁に体重を預けていた。足に力が入らなくてトド松くんに支えられる。わたしの舌からトド松くんの口の中へ唾液が糸引いてて、どれだけ熱を分け合っていたのかはっきりと自覚させられた。これ以上は本当に、まずい。
「トド松くん、あのね、」
口端を拭ってトド松くんを見上げるとすっかり気分が良くなってるみたいで、さっきみたいなギラギラした目じゃなくて穏やかな笑みを浮かべていた。そのとき、外がピカッと光る。
──ガラガラピシャーン!
ひっ、と息を飲んだ。かなり、かなり近い。光ってから数秒も経たずにこんな大きな音がするなんて、すぐそこに雷が落ちている。
「顔が真っ青だね」
「あ、あ…、」
「本当に雷が苦手なんだ、可愛い」
トド松くんがわたしを優しく抱き締める。トド松くんのことだって怖いのに、人肌が安心するというか、しがみつけるものができて恐怖が紛れるというのが正しい。暗闇の中でトド松くんは優しくわたしの背中を摩った。
「雷の音は怖いよね」
「う、うん」
「でも大丈夫だよ、僕がいるからね。僕が忘れさせてあげる」
トド松くんの優しさに数瞬ホッとしたのに、ぬる、と耳を舐められて過剰に肩を揺らした。びっくりして声が出る。
「っや、なに…っ」
「雷の音、聞こえなくしてあげようと思って」
トド松くんは片方の耳を掌で塞ぎながら、もう片方の耳に舌を入れてくる。くち、くち、トド松くんの舌が動く度唾液が混ぜられるような音が鼓膜に直に響いてるように大きく聞こえる。
「ふあっ、あっ、やぁ…っ」
「声大きいよ、自分の声も聞こえてないの?」
「あ、う…っ、ん、んん」
「耳弱かったんだね。真っ赤になってる」
くちくちからぐちゅぐちゅに音を変えて、耳が濡れてくる。トド松くんの唾液で濡らされ、熱い舌で嬲られる。下品な水音で聴覚を占め、頭がおかしくなりそう。
「あ、ぁあ…っ、とど、まっ、」
「耳朶も、可愛い」
耳朶に歯を立てられ、腰が抜けそうだった。トド松くんの足がなければとっくに床に膝をついてたと思う。わたしの足の間にあるトド松くんの太股が、わたしの脱力と共に刺激を与えてくる。力が入らないとはいえ自分の腰をトド松くんの太股に押し当ててるみたいで恥ずかしい。そんなことを考えてるのに気付いたのか、トド松くんがわたしのそこを足で押し上げる。
「ひっ、あ」
「名前ちゃん、随分濡れてるね。僕のパンツまで湿ってる」
「えっごっごめ、」
慌てて腰を浮かせようとしたらトド松くんがさらにぐりっと足で刺激してきてショーツ越しに敏感なところが擦れる。思わずトド松くんのシャツを握る。
「や、ぁあ…、とど、まつく、」
「大丈夫、こうしてたら怖くないからね」
「え、あ…っ?」
そう、なのかな。トド松くんはわたしのことを安心させようと、してくれてるのかなあ。心臓がドッドッと煩くて冷静になれない。トド松くんがわたしの服に手を忍ばせた。
「体熱いね…良かった、たくさん降られる前に帰れて」
少しだけ冷えてるトド松くんの手に体が震えた。ブラのホックをぷつんと外されて胸を両手で揉まれたけど、わたしは力なくトド松くんの肩に手を添えることしかできない。感触を確かめるように揉みしだかれ、先端の突起を親指で掠められる。びくっと反応するとトド松くんの太股に触れるからバレそうで、必死に耐えようと指を噛む。今まで何とも思ってなかったトド松くんが、わたしの胸を愛撫してるなんて信じられなかった。
「はぁっ、ん、や、ぁ…」
「指噛んだらだめだよ、傷付いちゃう」
「や、だって、ぇ、っん、はずかし…っ」
先端をきゅうっと摘ままれ、思わずトド松くんの太股に擦り付けた。あ、これ、気持ちいい。
「ふぁ…、あ、トド松くん…」
「うんうん、気持ちいいね、大丈夫だよ」
「あん、あ、はぁ…う」
「もっと気持ちよくなってもいいよ」
脳が溶かされる。トド松くんの少し冷たい手が少しずつわたしの熱と混ざり合ってきて、それでの刺激が更にわたしに熱を持たせるから、これが良いことなのか悪いことかの区別がつかなくなってきた。
「あ、ぅ、んんっ、はあ…」
「僕のことだけ考えてて」
噛んでいた指を優しく外され、代わりにトド松くんの指が口の中に入ってきた。快感が凄くて、ちょっと怖くて、だめなのに抗えなくて、トド松くんの指にしゃぶりついた。トド松くんの反対の手がスカートの中に入り、わたしのショーツを下ろす。
「すご…、名前ちゃん敏感なんだね」
「は、え…っ?」
下を向くとショーツへだらしなく糸を引いて足の間からとろとろ垂れていた。一気に恥ずかしくなっていやいやと首を振ると、トド松くんは優しく笑って宥めてくれる。わたしの口から指を引き抜くと、それをスカートの中に持っていく。
「あ、や…っ、とど、まつく、だめ…」
「だめ?何で?」
「それは、だめだ、と、おもう」
「じゃあやめとく?」
トド松くんはわたしをじっと見つめた。だって、トド松くんは友達だし、こんなことして、いいわけがない、よね?
「やめ、」
言葉を返そうとしたら、外がまた激しく光る。トド松くんに集中してたから気が紛れてたけど、まだ雷が止んでなかった。すぐに近くで音が落ちる。
「っ、う」
戻ってきた恐怖でトド松くんの服を掴むと、トド松くんは口許だけ緩ませてわたしを抱き寄せる。濡れた指でわたしの膣口をなぞった。
「どうする名前ちゃん?」
「あ…っ、」
「やっぱり、やめとく?」
トド松くんの指が中に埋まっていく。やめるかどうするかをわたしに聞きながらトド松くんは手を止めない。わたしもトド松くんにしがみついたままそれらしい抵抗もできず、すぷずぷトド松くんの指を飲み込んだ。
「っふあ、あ、」
「中すごい熱いけどお酒飲んたからかな?それともいつもこんなに熱いの?」
「し、しらな…っ」
トド松くんの指が入りきったと思ったらそれをゆっくり引き抜かれる。息を漏らす暇もなくまた押し入れられ、引き抜かれる。ゆっくりとした動きなのにスムーズに出し入れされて内壁が擦れていった。あ、あ、これ、すごい気持ちいい。
「やぁあ、あ、っうあ、ぁ」
「気持ちいいの?」
「き、もちっ、ひぅ、や、だめ」
「気持ちいいなら大丈夫だよ」
大丈夫、大丈夫、と繰り返しながら指を動かされる。トド松くんの指はすっかりわたしの熱で暖まっていてもう冷たいとは感じなかった。ぐち、ぐち、と粘度の高そうな音が狭い玄関にやけに大きく響いていく。もう何も考えられない。
「とどま、つ、くん、っ」
「まだ怖い?」
トド松くんが中で指を折る。お腹側に倒されると膀胱が圧迫されるような感じがして腰が一気に震えた。トド松くんの胸板を押しても力が入らない。
「っひゃ、あ、!だめ…、そこだめっ、ぇ」
「だめって顔してないよ」
「やぁ…っだ、めとどま、つく…っ」
「気持ちいいね、大丈夫だよ」
トド松くんの指がわたしを責めて、熱を昂らせる。足の間からたらたら垂れるそれが止まらなくてトド松くんは少しずつ指を動かすスピードを速めていった。音が激しくなる。
「ひ、う…っ、や、おとぉ…っ!」
「やらしい音がするね」
「だめ、や、だめぇ、あ…っ、ん」
ぐぢゅ、ぐぢゅ、ぬちゅ、ぬちゅ。内腿が引き攣ってくる。頭が真っ白になってきて快感に溺れそう。
「あっ、あぁっ、あ…!や、あ、ぁあ…っ、」
「ん、そろそろいいかな」
トド松くんが急にわたしの体から自分を離す。途端に膝から崩れ落ちて、本当に力が入ってなかったんだと思い知った。トド松くんはベルトを外していき、それをぼんやり眺めているうちにこれからすることを理解する。
「ま、待って、トド松くん」
「何言ってるの待たないよ」
「だって、わたしたち、友達だよね…?」
焦って喉が張り付く。トド松くんはいつものように優しく微笑み、わたしの二の腕を掴んで再び立たせた。たださっきと違うのは、背中にあるのが壁じゃなくてトド松くんの体だということ。
「ここまできてまだ友達止まりだって言い張るの?」
「待っ、」
トド松くんは強引にわたしの中へ熱を埋めた。質量に吃驚して息を飲み、苦しさは感じるものの、そこは無抵抗にトド松くんを受け入れている。散々触られたから痛みなんかこれっぽっちもない。
「はぁ、あ…っ、」
「中あっつ…、こんなに感じてたんだ」
「や、めてぇ…」
壁に手をつくしかなくてトド松くんの顔が見えない。トド松くんもすごく熱くて、中で更に質量が増した、気がした。ゆっくり抜かれる。
「ふ…っ、や、ぬいて、ぬいてっ」
「うんうん、抜いたら入れちゃおうね」
「っやあ、ぁ、ちがぁ、っあ」
「また抜いて…、入れるね」
「あんっ、あ、や、おくや、だぁ…っ」
トド松くんのが奥をトントン叩いて腰が震えるのが止まらない。壁が暗くて、トド松くんが見えなくて、苦しい。気持ちよさで前が見えない。
「やめ、て…っ、おねが、」
「やめてほしいの?」
トド松くんは優しい声でわたしに聞いてきた。穏やかで、いつものトド松くんみたいな声。腰も動かさずにわたしに問い掛けてくれる。
「だ、って、こんなの、だめだもん…っ」
「だめかな?」
「ともだちは、こんなこと、」
おかしい、と言おうとすると、雷の音がまだ近くで鳴っていた。トド松くんに触られて入れられてるときは気にならないのにこれじゃあ落ち着いて話せない。怖くてびくっと動いたらトド松くんが短く息を吐いた。
「っ、名前ちゃん、まだ怖かったんだ」
「あう、だって、音が聞こえる、からぁ…っ」
「だから僕に任せてたらいいのに」
ね、大丈夫だよ。トド松くんが甘く耳許で囁く。気を許しそうになるからやめてほしいのに、トド松くんはそのまま腰を突き出してまた動き始めた。
「んっ、うあっ、あ…っ、ぁ」
「ほら外すごい雷鳴ってるでしょ、まだ近くで落ちてるね」
「やだぁっ、あ、やめ、て…っ」
「あは、すごい…」
トド松くんの息が荒くなってくる。
「名前ちゃん本当に怖がりだなあ。雷の音する度にびくびくして、中が締まるよ」
「ふぁ、しらな…っ、」
「ねえ、忘れてるかもしれないけどここ玄関だから、あんまり声出すと外に聞こえちゃうかもね」
「!…ん、ふ、ぅ」
「だから指噛んじゃだめだってば…」
トド松くんが後ろからわたしの手に手を重ねて壁につく。腰だけを遣って厭らしい音を玄関に響かせていって、これじゃあ声を我慢しても音が聞こえちゃう。
「や、らぁ…っ、とろまつ、く」
「舌回ってないね、っ」
「あぁあ、あ、う…っら、めぇ、っ」
はくはく口を開けて酸素を吸いたいけど声を我慢しなきゃいけなくてすごく苦しい。トド松くんは相変わらず奥を叩いて後ろからわたしを無遠慮に犯していった。足がもうがくがくで、死んじゃいそう。
「とろまっ、とろまつくんっ、や、あ」
「はぁ…っ、名前ちゃん、最後まで嫌がるの…っ?」
「え、ぁ…っ?」
「ねえ僕のこと、好きになってよ…っ、好きって、言ってよ…っ」
「な、に…っ、あ、あぁう、っとろまつ、く、」
「好き…っ、名前ちゃん、好きだよ…!」
トド松くんの腰ががつがつ中を抉って、もう声が押さえられずに喉を反らした。重ねられた手に力が入る。
「っあ、ああぁあ…っ!あぁ…っ!」
膣がぎゅううっと締まるのを自分で感じて、そこに熱が吐き出された。トド松くんのものがびくびく震えてる。腰から下に力が入らなくて壁に寄り付くと、トド松くんが後ろから支えながらわたしの項にキスを落とした。ぢゅう、と吸い上げられる。
「は、ぁ…っ、とろまつくん…」
「名前ちゃん、抜くね…」
トド松くんが中から出ていく。引き抜かれると同時にとろとろと白いものが一緒に流れ出てきてわたしの足に伝った。情けないことに立っていられず、トド松くんが床に体を倒してくれる。
「はぁ、ぅ、あ…っはあ…っ」
「苦しい?大丈夫?」
「ん…っはあ…、」
なかなか息が整わない。トド松くんはもうけろっとしていて自分だけ何だか惨めだった。わたしは顔を上げてトド松くんを見つめる。
「とど、まつくん…」
「…、泣いてるの?」
「えっ、」
「そんな顔しないでよ…」
トド松くんはわたしの頭に手を乗せて、ぎこちなく前後に動かした。頭を撫でてくれて、る、のかな?
「トド松くん」
「嫌」
「、え?」
「聞きたくない」
わたしだけ惨めだなって思ったら少し目頭熱くなったけど泣いてないし、まだ何も言ってないのにトド松くんは慌ててわたしから手を離す。乱れた服を手早く整えると、床に落としたままだった荷物をさっと抱える。
「えっ、トド松くん、」
「僕謝らないから。全然意識してくれなかった名前ちゃんが悪いんだよ」
「え、え、」
「僕は酔った勢いでこんなことしたわけじゃない。…さっき言ったこと、本気だからね」
「さっき、って」
「じ、じゃあね!」
えっ、と短く声を出す前にトド松くんは鍵を開けて出ていってしまう。力の入らない手を伸ばした目の前でバタンと音が響いて、トド松くんがいなくなってしまった。トド松くんがさっき言ってたことって、ちょっと、待ってよ。
『ねえ僕のこと、好きになってよ…っ、好きって、言ってよ…っ』
『好き…っ、名前ちゃん、好きだよ…!』
心臓がドッと音を立てて胸を苦しくさせた。トド松くん、わたしのこと、好きなの…?
「ちょっと、待ってよ…っ」
頭が追い付かなくて髪を握った。トド松くんとはずっと仲良しの友達で、これまで異性らしいことは何もしてなくて、なのに今日急に、こんな。
「す、き……?」
自分で呟いた言葉に顔がカッと熱くなって心臓が締め付けられた。トド松くんの気持ちを急に教えられて、それをどう処理していいのか分からない。とりあえず乱れた服を直しながら、次にトド松くんと会うときはどんな顔をすればいいかなあ、なんて考えていて、暴れる心臓のせいでいつの間にか雷の音なんて気にならなくなっていた。
END
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難しいお題をいただいてドキドキしていましたが結局レイプになりました。いつも通り性癖全開です。名前様、お付き合いありがとうございました。
20161120
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