「いいなあ…」

デジャブ?なんてちょっと思った。これは多分花丸2話を見たときと同じ感覚、尽くされたいなあという願望がふつふつ湧き出てきている。長谷部のように審神者相手に尽くしてる訳じゃないけど、いいなあ、羨ましく思っちゃうなあ。

「兼さんになりたい…」

ぼそ、と漏らすと隣で洗濯物を干していた堀川が振り向く。感想が口から出ていたことにやっと気づいて慌てると、堀川はにこっと優しく微笑んでくれた。

「主さんは面白いことを言うね。兼さんは僕にとってたったひとりの兼さんなんだよ、何人もいたら困っちゃうな」
「う、うん、ごめん」

大切な相棒になりたいなんて言ったら気を悪くさせたかと思って咄嗟に謝ると、あはは、と笑う。わたしに背を向けてまた洗濯物を干し始めた。

「主さんは兼さんになったらどうするの?」
「え?あ、あの…」
「言ってみて」

怒らない、のかな。びくびく様子を窺うけど堀川は背を向けてるから表情が読めない。声色はいつもと同じで穏やか、怒ってないのかもしれない。

「そうだなぁ…、堀川とずっと一緒にいるかなあ」
「それだけ?」
「それで、堀川のことを下の名前で呼んでみたりして…」
「うんうん」
「あとは何かとつけて呼び出して、お世話をさせたり…」
「他には?」
「ほ、他に?」

うーん、何だろう。あんまり考えてなかったわたしは困って頭を捻らせた。わたしは堀川にお世話してもらえればそれで十分なんだけど。

「もうないよ」
「たったそれだけでいいの?主さんは控えめな人だなぁ」
「えっ、全然控えめじゃないよ、だって堀川とずっと一緒にいたいって、強欲じゃない?」
「国広」
「えっ?」

堀川は洗濯物を干し終えてカゴを抱えると、やっとわたしの方を向く。にや、と口端だけを上げて見たことのない顔をしていた。

「国広だよ、主さん。そう呼びたいんでしょ?」
「えっ、あ、あ…?」
「ほら呼んでみて」

な、な、なにこれ!
恥ずかしくて顔が熱くなってくのが分かった。たかが刀剣の名前を呼ぶだけなんだけど、頭では分かってるけど、目の前にいるのは意地悪い笑顔を見せながら楽しそうにわたしの反応を眺める少年で、理解が追い付かない。堀川がまた一歩わたしに近付く。

「呼びたいって言ってたのに、僕の名前忘れちゃったの?」
「あっ…い、いや…」
「ねえ主さん?」

堀川がわたしの肩にそっと手を置き、耳許に唇を寄せた。掠れるように囁かれる声がいやに色っぽい。

「僕とずっと一緒にいて、何してほしかったの…?」

何これ何これ何これ!!!
吐息が触れてびっくりして体を引き剥がすと、相変わらず満面の笑みを浮かべてる堀川。な、なに、この子こんなにかっこよかったっけ!?心臓ドキドキうるさいんだけど!

「ほ、堀川…っ」
「もう、名前でいいって言ってるのに呼んでくれる気はないんだね」
「だだっ、だ、だって…!」
「ふふ、冗談だよ。加州くんに叱られちゃうもんね」

じゃあ僕はもう行くね、と堀川はカゴを抱えたまま再びわたしに背を向けて歩き出した。なに、何だったの、もう行っちゃうの。

「くに、ひろ…!」

風でも吹いたら掻き消されそうなか細い声が出た。堀川に届いたかは分からない。堀川は少しだけ足を止めると顔だけ振り替えって、嬉しそうに笑う。

「片したら主さんの部屋にお邪魔するね」
「えっ!!!!」

それは、ど、どういう…!?
意味も分からず焦るわたしを置いて堀川はどんどん歩いてく。ま、待ってよ、部屋に来て、何するの。堀川の笑顔が頭から離れなくて心臓がうるさいくらいバクバク高鳴っていた。わたし、どうなっちゃうんだろう…!
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どうもなりませんでしたし、清光に見つかって怒鳴られました。
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