「で、何の用?」

ムスッと唇を尖らせている清光に苦笑いしかできない。腕を組んでそっぽまで向いてて、相当拗ねてるのがよく分かる。

「冷たいこと言わないでよ〜、ほら、一緒に寝よ?ね?」
「そういうのは主お世話係のへし切り長谷部にでも頼んだらぁ?」
「もう、それは花丸の話でしょ、他所は他所でうちはうち!」
「どうかなぁ、アニメ見てデレデレしてたの俺見てたよ。俺から近侍外そうか悩んでたでしょ」
「えっ」
「俺ってば愛されてないのかな〜」

ギクリと肩を上げる。確かにアニメの長谷部はすごく可愛くて、面倒見がいい。あんなに尽くしてもらえるなら近侍にするのも悪くはないかななんて一瞬考えた。日頃近侍になりたがってるのをよく聞くし、清光があそこまでわたしに尽くしてくれるわけでもないから、まあ、試しにちょっとくらい、なんて魔が差しました、はい。でもメンヘラ清光を近侍から外すなんて、その後が怖すぎてできるわけがない。証拠にもうネガティブな発言を始めていた。

「ち、ちがうよ清光。わたしは清光のことちゃんと好きだし愛してるよ」
「ふうん、どのくらい?」
「たくさん、だよ」
「たくさんねぇ。でも主は花丸みたいに部屋に閉じ籠ってへし切り長谷部とふたりきりで過ごしてみたいとか思ってたんでしょ?」
「なっ……そんなこと思ってないよ!」
「ねえ、あいつと何するつもりだったの?」

清光は組んでいた腕をこちらに伸ばし、わたしの顎を持ち上げる。まるで猫と遊ぶかのように喉を細い指で擽られ、居心地が悪かった。てっきり落ち込むかと思いきや、清光怒ってる…?

「ほら俺に言ってみなよ。どんな浮気をするつもりだったの?」
「浮気って、だから、そんな」
「ふたりきりで部屋に閉じ籠って、あいつにどこをどう触られたかった?俺じゃ満足できてなかったんだ」
「そ、そんなんじゃ、」

ほんとに違うのに。清光が指で首筋をなぞり、それに素直に反応するとますます言い訳がましい。こんな些細な刺激で熱を帯びる体じゃ何を言っても誠実に聞こえない気がして、わたしはなるべく声を漏らさないように唇を噛んだ。清光がフッと笑う。

「ここをこうして…、指でされたい?」
「んっ…」
「それとも、舌?」

清光がわたしに向けて舌を見せてきた。いつもわたしをたくさん愛撫してくれる艶かしい舌。見てるだけで欲しくなってきて、膣が締まるような感覚がする。

「あ…、清光…」
「どうしたの?ほら、言わないと分かんないよ」
「し、舌……舐めてほしい……」
「ほぉら、素直になってきた」

清光がくすくす笑う。こんな体にしたのは清光なのに、わたしが淫乱とでも言いたげな物言い。それでも清光の視線には抗えなくて清光にしがみついた。

「主はきもちいことが大好きだからね」
「き、清光も、でしょ?」
「そーね。でも俺は、主のことが大好きだからしてるんだよ」
「わたしだって清光のことが、」
「言わなくていいよ、ほら、俺の膝に跨がって」

清光がわたしの髪を掻き上げ、首筋に赤い印を付けていく。前つけられたのがそろそろ消えたと思ったのにな。

「今日もたくさんきもちいことしようね、主」
「うん…っ」

夜中の静まり返った部屋にはふたりの吐息だけがやけに大きく響いた。
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本当に清光が好きな主と、それが信じられなくて快楽で繋ぎ止めようとする清光(メンヘラ)
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