「待て大将」
「えっ」

その体に似合わず低い声を出すなあ、なんて常々思っていたけどここまで低い声は初めてだった。振り向くと腕を組んで大層ご立腹な様子の薬研、わたしの隣をきつく睨んでいた。

「ふたりがそんな仲良しだなんて知らなかったなあ、俺っちは仲間外れか?」

わたしに向かって言ってる言葉だろうけど薬研の視線がこちらに向くことはない。ちら、とわたしの隣に視線を飛ばすと、その子はわたしの袖をきゅっと握って薬研を挑発的に睨み返していた。

「もしかして嫉妬してるの?僕と主さんがこーんなに仲良しだから」
「仲良し、なぁ」

薬研の目がスッと細まって、口許が歪む。何かが可笑しくて笑っている顔なんかじゃなくて、怒りを堪えてるような笑顔だ。

「その手を離せ、乱」

落ち着いた薬研の声。でも感情が丸出しのように表情は穏やかでない。わたしの袖はさらに強く握られて、それどころか引き寄せられた。ぐら、とバランスを崩したところに乱の手がわたしの腰へ回る。

「嫌だよ、僕これから主さんとイイコトするんだから」
「乱」
「薬研には見せられないんだってさ」

ふふ、と愉しそうに笑う乱はいつも通り可愛いはずなのに目が笑っていなかった。伏せられた睫毛が妙に大人びていて、わたしの腰に添えられた手もまた力強い。

「そうだよね、主さん?」
「う、うん、まあ確かに、薬研には見せられないけど、」
「…大将?」
「ああっと、気を悪くしないで!隠し事とかじゃないんだけど…!」

内容が内容なだけに、カァッと顔が熱くなった。隠し事、じゃない。でもわざわざ薬研に見せるものでもない。恥ずかしい。それ以上何も言えずに黙り込むと薬研が小さく舌打ちした。

「ごめんね薬研、じゃ、僕達もう行くから」

乱が笑顔のままわたしの腰に力を込めて先を急ぐように促してきた。これ以上ここにいても気まずい気がして、わたしもそれに従おうと一歩踏み出す。乱は、あ、そうそう、と愉しそうに薬研を振り返った。

「そんなこわぁい顔してたら台無しだよ?でも、時には強引さも必要かもね」

じゃあね、と乱。滑らかに揺れる長い髪が綺麗で、わたしは言葉の意味を考えるより先にそれに魅入ってしまう。乱はおやつを目の前にした子供のように愉しそうに、わたしの腰を抱いてる腕と逆の腕に引っ掛けたランジェリーショップの袋を揺らした。

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新しく下着を買ってきた審神者ちゃん、可愛いから誰かに見てほしかったけど短刀とはいえ薬研に見せるのは違うなあと思っていたら、可愛いの?僕に見せて〜!と乱に声を掛けられてあっさり受け入れてしまった様子です。乱は女の子っぽいから警戒心を持っていないのですが実は1番審神者ちゃんを狙っていて、それに気づいてる薬研は面白くないという感じです。(補足が長くてすみません)
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