ピンポーンとドアチャイムに呼ばれて名前ちゃんは顔を上げました。はぁい、と上擦った声で返事をしてから鏡で少しだけ前髪を直し、ぱたぱた玄関へ走ります。無防備にもドアスコープを覗くことを忘れてしまいましたが、ドアを開けると待ちに待った愛しの彼がちゃんと立っていました。

「一松くん!」

一松くんの顔を見た瞬間飛び付いてしまいたい衝動に駆られたのですが一松くんはそれをひょいと交わし、腕の中のものを守ろうとするのです。ひょこっと一松くんの腕の中から顔を出したのは少し毛並みが落ち着かない黒い猫。名前ちゃんは目をぱちくりしました。

「どーも、お邪魔します」
「へ、あ、どうぞ…」

ぱたん。ドアが閉まった後も一松くんは猫を大事そうに抱えたまま部屋へ入っていってしまいました。




(( 蠱惑する泣き声 ))




名前ちゃんはむすううと頬を膨らませたままベッドへ寝転び、もう読み飽きている漫画をぱらぱらと捲るふりをしました。話を聞いてみたところ、あの黒猫は来る途中にあったばかりの野良猫で、あまりにも可愛いから連れてきたそうです。そこまでに文句をつけるつもりはないのですが彼女の家に来てもなお猫と遊んでいるのは少々面白くない様子、名前ちゃんはオモチャで猫とじゃれる一松くんを睨みます。

「いい子だな」

猫の頭を撫でる一松くんの手はとても優しく、わたしも猫になりたいなんて考えてしまう名前ちゃんは一松くんが大好きで仕方ないようです。しかし小一時間は経っていますし名前ちゃんが読んだふりをしている漫画ももう7周目。さすがに諦めが入ってきてしまいます。今日は構ってくれそうにないなあ。名前ちゃんはしょんぼりと肩を落とすと先日買ってきた漫画を手に取ります。じっくり読みたかった新巻ですが、一松くんがいてもいなくても今なら変わらないと思ったのでしょう、ぱらぱらページを捲っていきました。

「にゃあん」

一松くんに構ってもらえる猫は上機嫌に鳴くので漫画に集中したくても集中できません。普段は可愛い猫すらも恨めしく感じてしまいそうで名前ちゃんは自分の独占欲に嫌気がさします。はあ、とため息をついてまた漫画を読み進めました。

「あっ」

一松くんが短く言葉を吐きましたが、それはもう名前ちゃんの耳には届いていない様子です。漫画は今ちょうど大好きなひとと結ばれそうなところで、名前ちゃんはヒロインと自分を重ねてときめきながらページを捲っていきます。どきどきしながらため息を吐くと、それと重ねるように耳許でふう、と吐かれる息、名前ちゃんはびくんっと肩を跳ねさせて耳を両手で押さえました。

「い、い、一松くん!」
「なに」
「何じゃなくて、急に!びっくりしたでしょ!」

名前ちゃんが振り向くと一松くんの顔はすぐ傍にあり、それまたびっくりしてボボッと頬を染めます。寝転んでいる名前ちゃんに覆い被さるように一松くんがその上へ乗ってきて、名前ちゃんに漫画を持たせました。

「ほら、読んでていいよ」
「は、え、うん…?」

訳が分からず素直に渡された漫画を開きますが、一松くんの顔がすぐ近くにあるのにどういうことでしょう。全く集中できません。

「あの、猫は、」
「窓から出てった」
「あ、そうなんだ…」

一松くんはそれ以上喋る気がないらしく口を閉ざしました。ただ名前ちゃんの持っている漫画をじっと見つめるものですから名前ちゃんは訳が分からないまま漫画に視線を戻してページを捲っていきます。部屋はしんとしているので耳許での一松くんの息遣いに意識がいってしまいそうで名前ちゃんは慌てました。それから、体がちょっと重たいのです。一松くんは容赦なくずっしり名前ちゃんの上に覆い被さっているので重量感に支配されそうで、大きく息が吸えない名前ちゃんは浅い呼吸を繰り返しました。お互いの息遣いがやたら大きく感じます。

「…」
「…」

気まずい…。名前ちゃんはそう思いました。せっかく大好きな彼氏がお家へ来ているのに漫画を読むだけなんてつまらないです。もっと一松くんとお話ししたい、いろんなお話しをしてふたりで映画を観たりお昼寝をしたりしたい。しかし一松くんは名前ちゃんに漫画を持たせたのですからこれを読み終わるまでは何も言い出せない雰囲気でした。名前ちゃんは1ページ、また1ページとページを捲っていきます。内容なんか全然入ってきません。

「っ、ふ」

思わず名前ちゃんの口から声が出てしまいました。出す気はこれっぽっちもなかったのですが、ずっと続く圧迫感から漏れてしまったようです。相変わらず浅い呼吸を繰り返す名前ちゃんは気まずそうに唇を噛みましたが一松くんは何を思ったのか普段から細い目をさらに細めて名前ちゃんの耳許に唇をくっつけました。ちゅうっ。可愛らしいリップ音が耳の中で響きます。

「いっ、ち、まつく…」
「なに」

なにって、こっちがなに!
言い返したかったのですが名前ちゃんが口を開く前に一松くんの舌がぬるっと名前ちゃんの耳の中へ入ってきたので思わず唇を噛みました。急な行動にびっくりしますし、穴の中をぬるぬるしたそれに犯される感触に耐えられません。唾液を擦り付けるようにくちゅくちゅと壁を這い、その水音がダイレクトに鼓膜を叩くのです。

「ひ、う」

濡れた耳から舌が出入りしてぬこぬこと音が強くなってきました。ゆっくりと中を混ぜたり舌を引っこ抜いたりして耳を愛撫する一松くんは名前ちゃんのワンピースのチャックを静かに下ろしていきます。

「ま、まって、いちま」
「読まないの?」
「よむってなに、ん、あ」

一松くんは耳をべろべろに舐めて唾液で汚し、チャックが開かれたワンピースを剥ぐように開きます。耳から項、首へと舌が這い、名前ちゃんははくはく口を開けて酸素を求めました。浅い呼吸の中で気持ちよさに耐えるのはとても辛く、どんどん声が我慢できなくなってきます。

「はあっん、ん、」

少し擽ったい背中を何度も舌が往復し、熱っぽいそれに撫でられながら名前ちゃんはぎゅうっとシーツを掴みます。もう漫画なんて読むどころではないのに一松くんはツツゥと舌を腰に向かわせながら「読まないの?」ともう一度問いました。

「あっあぁよまっなっんん」
「ふうん」
「あ、う、んんあっ…っく」
「何腰浮かしてんの」

びくんと跳ねる腰に一松くんは口端を歪めます。

「ち、ちがっぁ、」
「浮いてるって」

腰を小刻みにちろちろ舐めていたのに急にそれを上に移動させて背中を通り、名前ちゃんの腰はまたぴくっと動きます。首まで上がってくるとぢゅうっと音を立てて吸い付かれ、シーツを掴む手に力が入りました。脳に直接響くような快感はないのですが体がじんじん熱くなってきてもどかしく、名前ちゃんはじわぁと涙を浮かべます。いつもの一松くんの意地悪ですが、名前ちゃんはまだこの意地悪に慣れないのです。

「いちまつくん、いちまつくん、」
「なに」
「もう、や、やだぁ」
「やだって感じには見えないけど」
「やなの…っ」

名前ちゃんがぐすぐす泣くので一松くんはさらに煽られるように口端を引き上げました。泣き顔を可愛いと思うなんていけない彼氏です。シーツを掴む手は力が入りすぎて白くなってきていて、一松くんはそこへちゅっとキスを落とします。

「じゃあどうしたらやじゃない?」
「へ、え」
「べつに、全部いいでしょ、名前は」

一松くんはそう言うと名前ちゃんの言葉を待たないまま再び首筋を舌でなぞり、そのまま二の腕を2往復、それから名前ちゃんの腕を少し強引に掴むと脇の下へにゅるりと舌を捩じ込みます。初めて舐められる場所に名前ちゃんはびっくりしてガバッと顔を上げました。

「ひゃあっ、だ、だめだめ、いちまつく、そこは、っ」
「なんで?」
「ん、うそ、やだあ…っそこやだっあせかいて、んんっ」
「しょっぱい」

抵抗しても意外とがっしりした腕に押さえつけられ、べろべろ嬲られます。恥ずかしさで涙が止まらない名前ちゃんは一松くんが何を考えているのかさっぱり分かりません。暫く堪能してから脇腹へ舌を滑らせ、また腰に戻ってきました。ひくっ、ひくっ、と何度も揺れだしている腰に一松くんは気分が良くなります。

「い、いちまつくん…っ」

もう蕩けた顔の名前ちゃんはもどかしそうに肌を色づかせていました。一松くんはやっと名前ちゃんの上から体を浮かすと、名前ちゃんのワンピースを脱がします。名前ちゃんの体をごろんと仰向けに転がしてからブラを上にずらすとまだ触ってもいないのにぷっくり腫れ上がった乳首が見え、一松くんは引き寄せられるようにそれへしゃぶりつきました。ぢう、と下品な音が響きます。

「っひ、や、あぁ」

唾液がたっぷり乗った舌でつつかれて、反対側は爪で押し潰すように触られました。ふるふる胸を揺らしながら体を捩りますが、動くなとばかりに乳首に歯を立てられてびくんと背中が反れます。いたいのに、きもちい、ど、どうしよう。名前ちゃんは一松くんに意地悪されるのが満更でもないようでした。何度も何度も噛まれ、じんじんする熱が中心に響いていく感覚に声を漏らします。

「あ、ふぅん、ん、っいち、」
「噛まれて、嬉しい?」
「やぁっん、ちが、ん、ん」
「嬉しくないの」

否定しても噛むのを止めない一松くんは前歯で名前ちゃんの乳首をすりすりしながら手はぱんつの上を撫でました。快感からなのか驚きからなのか分かりませんが逃げるように浮いた腰からぱんつを引きずり下ろします。焦らされていたわけではないかもしれませんが身体中を舐め回されているうちにぱんつの中はぐしょぐしょで、糸を引きながらぱんつが足元に丸まります。一松くんの指が名前ちゃんの入り口を叩きました。

「や、いちまつくん、まっ、ん」
「待たない」
「まっ、やあ、あ、」

中指に蜜を擦り付けるように入り口を何度か往復し、一松くんの指の先がぐぷぷ、と入り口に入り込みます。ひく、と逃げようとするのを一松くんは乳首を噛んで許しません。

「っあ、あぁああ…っ!」

ずずず。一松くんの指が中へ飲み込まれていって名前ちゃんは脚をじたばたさせました。乳首も膣も気持ち良くてどうにかなりそうです。ぬめる内壁の感触を楽しむように一松くんは中指をスライドさせて恥骨の裏をなぞりますがそこが弱い名前ちゃんは爪先を丸めて耐える他ありません。乳首からやっと唇を離して顔を上げた一松くんは名前ちゃんに顔を近づけると、涙と唾液で濡れた肌をじっと見つめます。

「ひゃめ…っあっや、やあぁ…っ」
「何で泣いてんの、きもちい?」
「あ、あう、ち、ちがうぅ…っ」
「違わないでしょ、濡れてんだから」
「や、ちが、んっあっあ、」
「おと、すごい」

中指が出たり入ったりするとぬちゅ、ぬちゅ、と中が掻き混ぜられる音が鳴り、一松くんはごくりと喉を鳴らします。熱くてぬるぬるで、一生懸命一松くんの指をおしゃぶりしてくれる、最高に気持ち良さそうな穴が一松くんを厭らしく誘っているのです。一松くんは指をゆっくり引き抜くと、粘度が高そうな蜜を見せつけるように舐め、名前ちゃんの反応を窺いました。

「は、ぁう…っ」

恥ずかしそうに睫毛を伏せる名前ちゃんは頬を染めて手で顔を隠してしまいます。一松くんはもう我慢ができず、今までギンギンになりすぎて痛かったモノを取り出そうとズボンを脱ぎ捨てました。ポケットからゴムを取り出して手早く被せますが名前ちゃんは顔を隠したまま、面白くありません。名前ちゃんの手を掴んで乱暴に退かすと、名前ちゃんは真っ赤な顔で一松くんを見上げるのです。

「い、いちまつくん…」

消え入りそうな声が耳に届くと同時に一松くんは先っぽを名前ちゃんの中へ押し込んでいました。きつきつの中がひくっと震えます。

「や、ぁあんっ、ん」
「っは…、」
「あ、はいってう、ああ…っ」

一松くんは名前ちゃんの内腿を掴みながらぐぐっと全部押し込み、額の汗を落としました。深い息遣いとぎらつく瞳が獣のようで名前ちゃんは喉をひきつらせます。今日は食べられちゃうなあ。名前ちゃんは諦めたようにシーツを握り、一松くんは腰を小刻みに動かし出します。

「あ、あ、ひあ、あ、あ」

馴染ませるように何度も腰を揺すられて、その度声が漏れています。一松くんはその口を塞ぐように唇を重ねて舌を捩じ込みました。いつもより熱い舌が擦れ合い、ぬるっと唾液で滑ります。腰遣いが大きくなりだんだん深いストロークになりながら舌はちろちろ小刻みに動かすので一松くんは器用です。上も下も一松くんが出入りするので名前ちゃんは苦しそうに身を捩りながらその快感に腰を震わせます。

「ん、む、はぁ…っちゅ」
「んーっ、んん!んんう!」
「っ…ん」

声が出せない名前ちゃんはとても苦しそうですが一松くんは名前ちゃんの声ごと食べてしまいたいようです。ぬこぬこ腰を動かしながら唇も離しません。

「ん、くぅっん、ん、んんっん!」
「はぁ…っ」
「んんん、んーっ!ん!」

大きく腰を遣われると内腿が痙攣してきて中が締まります。名前ちゃんがそろそろイキそうだと分かって一松くんはやっと唇を離しました。舐め合いすぎて口の回りまで唾液でべちゃべちゃですが構っていられません。名前ちゃんの太ももをぐいっと自分の肩へ担ぐと、斜め上から体重を掛けるようにずんっと奥にぶつけます。

「ひ、あああっ…あ、あぁあ!」
「ヒヒッ、すごい反応」
「や、やらぁぅ、や、あ…っ!」

奥にぶつかると子宮が揺さぶられるように刺激されて、ここが少し苦手な名前ちゃんは首をいやいや振ります。絶対やめてくれない一松くんは愉しそうに名前ちゃんを見下ろしながらにたぁと笑いました。

「あっ、ああ…っあああ、あ!あ!」

びくんっびくんっ。名前ちゃんの腰が2、3度跳ね、中がぎゅううっと締まりました。膣がうねり、脈打つように収縮します。一松くんは堪らずそれに自分を擦り付けました。

「や、うそ、やぁあっ、いっ」
「は〜…っきもち、」
「いっ、てうのに、や、あ…」

締まる膣でごりごり自分を擦り、一松くんは眉を歪めます。とっても気持ち良さそうな顔で名前ちゃんの顔に汗を落としますが、名前ちゃんははくはく口を開けて肩で息をしていました。はやく、いってよお。名前ちゃんは涙でぐしゃぐしゃです。

「しん、じゃう、あ、あ、あ」
「あ、やば、い」
「あ、あ、あ、ひ、ああ、あ、あ」
「だす、よ…っ」
「ん、はあ、あ、ああぁあ…っ」

最後の力でぎゅうっとお腹に力を込めると、一松くんのモノがどくっと大きくなって奥で熱が吐き出されるのを感じました。びゅう、う、うう…。勢いよくゴムに溜まっていき、一松くんははぁっと息を吐いて体から力を抜きます。名前ちゃんの太ももから手を離すとその体に被さるように体重を掛け、まるで行為が始まる前と同じです。名前ちゃんはぐえっと重たそうに声を漏らしました。

「あ、の、いちまつくん…」
「なに」
「重たいかな、って」
「ふうん」

汗でしっとりした肌が重なり合うのは気持ちいいのですが息が乱れてるうちは苦しいので一松くんを退かそうとじたばたすると、一松くんはフッと目を細めて横へずれました。名前ちゃんの額に張り付いた髪を優しく退かします。

「疲れた?」
「つかれたよ」
「でも満足でしょ」
「ち、が」

否定しようとすると唇にちゅっとリップ音。一瞬だけ重なった唇が柔らかくて何だか気恥ずかしくなりました。ほんとはお喋りして、映画見て、お昼寝したかったんだよ、こういうんじゃなくて、ぎゅうしてたかっただけなんだよ。そう言ってやりたい気持ちもありましたが一松くんが優しい顔で髪を撫でるので何も言えなくなります。まるで猫の毛並みを確かめるように何度も撫でられ、名前ちゃんは瞼が重たくなってきました。

「いち、まつくん…」
「寝ちゃうの」
「ね、ない…」
「いいよ、寝よ」

一松くんは名前ちゃんの額にちゅっとキスを降らせると、名前ちゃんの瞼がくっつくまでその頭を撫で続けてくれました。


END
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耳責め好きなフォロワーさんへ向けて。名前様、お付き合いありがとうございました。
20160520
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