そんな閻魔様だって大昔は人間だったのです。人間に好意を寄せることはあるでしょう。

「ねぇ、鬼男くんはどんな女の子が好きなの?おっぱいがおっきい子?」
「っはあ!?な、何を言ってるんですか」
「あ、おっきい子なんだ。ふふ、いいよねおっぱい。でも俺はちっちゃくても好きだよ。可愛ければ何でもいいんだけど、やっぱりセーラー服が似合いそうな子がいいなぁ」
「仕事中ですよ閻魔大王、そんな話はやめてください」
「あ、あの子…セーラー服似合いそう…」

そう、例えばこのように。
それは一目惚れとでもいうのでしょうか。判決を下されるのを待っている死人達の列の中に黒髪を真っ直ぐ伸ばした少女が立っていました。遠慮がちに耳の後ろで2つに結われた綺麗な髪。雪のように白い肌によく似合い、閻魔様は思わず立ち上がりました。

「鬼男くん、あの子誰?」
「知りませんよ、死人でしょう」
「俺、あの子知らない」

人間の魂は輪廻の輪ように繋がっています。つまり人間の魂は繰り返されているのです。閻魔様はずっと昔から繰り返し死人を見てきたはずなのに、こんな美少女を見たのは初めてでした。そんなことあるわけがないのにどうしても思い出せません。鬼男くんは眉を顰めます。

「知らないんですか?…おかしいですね。あの子は苗字名前というみたいです。死因は交通事故で、近所の子供を庇って巻き込まれたそうですよ。犯罪は犯してないみたいですね」
「…そう。ほんとにおかしいね。まあ、いいや、」

閻魔様は少女にゆっくり近づいていきました。その間も自分に問いますが、思い出せません。突然魂が作り出されるはずもないのですから閻魔様が知らない顔などなかったのに、困った現象です。

「ねぇ、きみ、名前ちゃんなんだって?可愛いね」
「え、あ、あの…?」

閻魔様は少女の近くまでやってくると、腰を屈めて少女の目線に合わせました。2人の身長は15センチから20センチ差といったところでしょうか。とにかく閻魔様は腰を屈めました。近くでまじまじと顔を見つめられる少女は恥ずかしそうに長い睫毛を伏せ、大きな黒目をちろちろ動かします。

「名前ちゃんはいい子みたいだね。目がすごく綺麗だよ」
「あ、りがとうございます…」
「だから、天国」

閻魔様はぽんと少女の頭に手を置きます。少女の目は戸惑いつつも閻魔様を捉えました。その大きな目には閻魔様がうつってしまうほど閻魔様が近くにいます。

「ね?」

閻魔様がにっこりと微笑むと、少女はうっとり閻魔様を見つめました。
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