さて、これからどうしよっか。まずは設定から考えよう。ずっと一緒だった幼なじみ?それとも高校から一緒になったクラスメイト?それとも仲が良い先輩と後輩?あー、これいいかも。年の差って結構好きだし、何より名前ちゃんの敬語って可愛いんだよね。じゃあ先輩と後輩にしよう。部活はどうしよう?どうせなら派手なのやりたいなー。サッカーかバスケあたりがいいけど、運動って結構だるいなー。そりゃあ名前ちゃんがマネージャーで、記録つけるって口実で俺のことずっと見ててくれたりしたら頑張れちゃうけど、他の奴のことも見るんだよね。無理無理、俺堪えられない。運動部やーめた。でも文化部ってパッとしないなー。俺に似合うのなんだろ。
結局名前ちゃんの家の近くのマンションに部屋を借りた。こうしたら一緒に下校したりできるもんね。俺は無意識に鼻歌を歌いながら部屋の鍵を開ける。結構いいマンションなんだよねー、ここ。冥界にいた頃から目ぇつけてたんだ。
「おー、やっぱ広い」
ガチャッとドアを開けたら何ともオシャレな部屋が広がっていた。俺今日から現代人になりきれるかなー。とりあえず家具決めなきゃ。うーん、全体的に黒でまとめようか。黒ってなんか安心するし、それに男っぽくない?名前ちゃんを連れて来てもいいようにオシャレにしたいから、やっぱ黒!
「………」
ちょっとだけ集中して頭にイメージを描く。眼は開けたまま、キュィィンって音が聞こえそうなくらい俺の眼の瞳孔が開いていった。多分今赤色になってる。本当はこういう“閻魔様”っぽくない魔法はかっこわるくて使いたくないけど、仕方ない。
「…ふぅ」
イメージした通りの家具が部屋に並んだ。シンプルにしたかったからあんまり出さなかった、とは言え冥界と違って下界で能力使うってのは疲れるなあ。さっき男の死体を処分しただけでも体力使ったのに。あー、もう今日魔法使えなーい。
さて。さっきの設定の続きを考えよう。今名前ちゃんが高校1年生だから、俺は2年生かな。部活決まらないなぁ、どうしようかな。そういえば名前ちゃん、部活入ってなかったよね。放課後にいつも1人で勉強してるもん。名前ちゃんの記憶捏造して部活で愛を育もうかと思ってたけど…うーん、部活入らないで放課後2人でいちゃつくのもアリかなぁ。
「あー!パンクしそう!」
俺普段仕事しかしてないからこんなに頭使うことないんだからね。でも仕事してるよりマシ。1日中名前ちゃんのこと考えてられるなんて幸せだなー。
「今名前ちゃん何してんだろ…」
ふとこぼれた独り言。無意識に独り言とかきもい俺。まあいっか、誰もいないんだし。冥界にいたら名前ちゃんの行動全部見えてたけど今は分からない。ちょっともどかしい。今頃他の男に口説かれてたらどうしよう。
「…だめだ、今から準備しなきゃ」
今日はもう能力使えないって思ったけど、嫉妬心からか何だか体力出てきた。とりあえずお隣りさんたちと学校側に挨拶と記憶捏造させてもらおう。俺は去年の4月からずっとここに住んでて、学校にもずっと通ってたって捏造。あー、だるい、体力削りたくない。でも名前ちゃんに早く会いたいから頑張っちゃう。
「早く話したいなぁ…」
俺は鍵を持って部屋を出ていった。
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