ザンザスがまた欠伸をし始めたから時計を見たらもう夜になってた。そういえばさっき夕食食べた。でももうこんなに時間経ってたんだ。

「ザンザス、お風呂入る?」
「一緒にか」
「ちがっ、ばか!早く入ってきなさい!」

まだ仕事してるザンザスに顔を赤くすると、ザンザスは満足そうににやっと笑ってから席を立った。
ザンザスと一緒になんか入ったら即襲われちゃうんだろうな。強引なザンザスってすごくかっこいいんだよね、私嫌がるけどすごく悦んじゃうかも。想像したらちょっといやらしい気持ちになったからやめた。ザンザスに見つかったらまた今夜眠らせてもらえない。
気を紛らわすようにテレビをつけると、ちょうどつけたチャンネルはべたべたのラブストーリー。男女が激しく抱きしめ合い、愛を囁き合っていた。

「……ずる…」

ピッとテレビを消した。私ザンザスに言葉にして愛をもらうなんてめったにない。たまに機嫌がいいときや私が不安なときに、ベッドの中で言ってもらうくらい。普通に聞きたいのに。

ガチャ、とドアの開く音。ザンザスが髪を拭きながら出てきた。ザンザスの姿を見たらきゅうんって胸が締め付けられた。ザンザスはいつも行動で好きって言ってくれてるみたいだけどさ、たまにはやっぱり言葉で聞きたい。私は思わずソファの上で正座した。

「ザンザス、」
「…どうした」

何か悟ったのか、優しく聞いてくる。私の向かい側のソファに座って髪を拭き続ける。

「私のこと、好き?」
「ハッ、今さら何言ってやがる」
「好き?」

きゅう、とショーパンを握りながら聞いた。こわくてザンザスの顔見れない。だって、面倒って思われてるはず。下向いてたら私の座ってるソファがちょっと沈んで、びっくりして顔を上げたら隣にザンザスがいた。

「なんて顔してやがる」
「…う、」

ぐいっと顎を持たれてそっちを向かされる。私どんな顔してる?泣きそう?ザンザスがゆらゆら揺れて見える。

「ざんざす…すきぃ?」
「あぁ、好きだ」
「あいしてる…?」
「愛してる」

涙声の私にキスをしてきた。宥めるようなキス。ちゅーって触れるだけ。唇を押し付けられるだけ。ちょっと長い時間だけど、吸い付いたり噛み付いたり、舌を入れてきたりしない。ただ唇押し付けるだけ。

「…言わなきゃ分かんねぇのか」

唇が離れたらそう言われる。違う、分かってる、伝わらないわけじゃない。

「わかってる、でも、う、ぇ…っ」
「名前、」

羨ましかった。それだけ。ザンザス困らせてるなーって思ったら意味もなく涙が出てきた。もっともっと困らせるのに。

「ざんざす、わたし、すき、だいすき、っ」
「あぁ、俺もだ」
「すき、すきぃっ」
「カスが、泣いてんじゃねえ」

瞼にキスされる。ザンザス優しい。喋るの好きじゃないくせに、無口なくせに、ちゃんと私のペースに合わせてくれる。大好き。

「いつも、ざんざすがすきっておもってくれてる、の、わかってる」
「あぁ」
「でも、ふつうにざんざすがおもってること、ききたい」
「…めんどくせぇ」

勘弁しろという顔。やっぱり面倒な女だよね、子供っぽいよね、ごめんねザンザス。ザンザスはまたぽろぽろ泣く私のほっぺを優しく抓った。

「…結婚してやる」
「っ、え、」
「カスどもの前でお前への愛が永遠だって誓ってやるっつってんだ」

それ、つまり結婚式。私の夢みたい。でも、何で急に。

「なん、で」
「思ってること聞きたがったのはてめぇだろ。言ってやっただけだ」
「結婚、したいの?」
「あぁ。前から思っていたが急ぎでもねぇから言わなかった」
「ざんざす…っ」
「泣くなっつってんだろ、ドカス」

今度はちょっと痛いくらいほっぺ抓られた。痛いよばか、もう、大好き。

「何があったか知らねぇが、式は早ぇ方がいいのか?明日か?」
「っ、ばか、早いよ」

嗚咽混じりに笑うと、ザンザスがやっと安心したように私の頭を撫でた。私が泣き止んだからってそんな嬉しそうな顔見せないでよ。ザンザス、やっぱりいつも言わないだけで私のこと大好きなんだ。

「ザンザス、ごめん、もう大丈夫」
「あ?」
「大丈夫、に、なった」

涙を拭って笑って見せたら今度はザンザスが不機嫌になった。

「結婚は決定だ、拒否権なんかねぇ」
「そういう意味じゃ、」
「てめぇは俺なしじゃだめなんだ」

不安は消えたって意味で大丈夫って言ったのに、もう不安消えたから結婚しなくても大丈夫って意味に聞こえたらしい。ザンザスはムッとしながら私を担いだ。向かった先はベッド。ですよねー。

「ちょっとザンザス、」
「俺なしじゃ生きれねぇだろ」

聞いてくれない。さっきまでの甘やかしのキスじゃなくて言い聞かせるような強引なキスをされた。捩込まれた舌が熱い。

「…分からせてやる」

ザンザスがぼそりと呟いた。


(( 「好き?」「好き」「愛してる?」 ))
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