「腹減った」
まーたですか。ひくりと私の口元が引き攣った。ザンザスって食べるか寝るしかしなくない?しかも歳を重ねるごとにどんどん動かなくなってく。そんなんじゃ太るよ、って言いたいところだけどザンザスのあんな綺麗なボディーライン見ちゃったら何も言えない。どこで燃焼してんのよそれ。
「何食べたい?」
「肉」
即答。聞かなくても分かってたけど。仕方ないから私が作ってあげよう、なんて思ったけど、冷蔵庫見たらどう調理すればいいか分からないような大きな肉の塊がずどーんと入っていた。苦笑い。
「ザンザス、」
「何だ」
「ルッス姉に作ってもらおう」
お料理なら任せてね〜んとウインクするルッス姉を思い出した。ザンザスはちょっと考えたけど私に料理ができないと判断したのか、こくりと頷く。失礼だなこの人。
「あ、でも、ちょっと待って」
「あ?」
そうとなれば、と食堂へ移動しようとするザンザスにストップをかける。食堂っていうかあそこはなんか某魔法学校に出てきそうな小洒落た長い机で食事するんだけど。
「絆創膏貼ってくからちょっと待って?」
絆創膏を取り出しながら自分の首筋を指差す。何カ所も色づく真っ赤なキスマークはやたら濃いから目立ってしょうがない。こんなままなんか恥ずかしすぎてとてもじゃないけど出歩けない。なのに、ザンザスは不機嫌そうに私の手首を掴んだ。
「隠すんじゃねえ」
「え?」
「俺のモノって印だ、見せてやればいいだろ」
何をおっしゃいます、そんな恥ずかしいことができる人間がいるんですか。いや、ザンザスができても私はできない!
「そんな恥ずかしいことできるわけないでしょ」
「あ?」
「ああもう、じゃあ、分かった」
ザンザスの手を振り払って、私はちょっと離れたテーブルへダッシュ。そこからネームペンを持ってまたダッシュで帰ってきた。何だと言いたげなザンザスをじろっと睨んで、私はザンザスのシャツを強引に脱がした。もちろん身長差で上手く脱がせられないからザンザスを座らせてから。訳も分からずシャツを脱がされたザンザスは意味が分からなくて若干不機嫌そう。でも私だって怒ってる。少しは思い知れ!
「じゃあザンザスはさ、」
私はネームペンのキャップを取ると、ザンザスの胸におっきい字で「わ た し の !」と書いた。あ、自分の名前書いた方が分かりやすかったかな、なんてちょっと思ったけども。
「これで堂々と皆の前出れるわけ?」
「おい、」
シャツを着ようとするザンザスをまた睨んで腕にしがみつく。
「『俺のモノって印だ、見せてやればいいだろ』」
ザンザスの言葉を引用してやったらザンザスはますます苛ついて、ついに私のほっぺを弱く抓った。
「真似してんじゃねえ、ドカスが」
ザンザスにとっては弱いそれも私にとってはちょっと痛い。ひりひりするほっぺを撫でてたらザンザスはシャツを着て私の手を強引に掴んだ。
「行くぞ」
「え、ちょっと待っ、だから絆創膏を、」
「何度も言わせんな。見せてやればいいだろ」
そのままずりずりと食堂まで引きずられていった私。こんなの理不尽だ!
(( まねっこ ))
(
戻 )