今日はわりと機嫌が良かった。クソボスと何かあったってのが一目で分かる。俺には関係のないことだが、気にならないわけじゃねえ。それでも名前は誘ってきやがった。

仕方ねえことだ。名前が好きなのは紛れもなくあのクソボス。人殺し以外に脳がねえ、うちのボスさんだ。分かりきっている、だから仕方ねえって思える。それでも気に食わねえ。俺は名前の身体中にキスマークを付けた。俺の女でもねえ、けど、俺が抱いたって印。

「っ、すく、それいたいっ」
「我慢しろぉ」

ナカに挿れたまま胸元にキスマークを付ける。首筋とか見える場所には絶対しない。名前がするなって言ったわけじゃねえが、付けたらおそらくクソボスがまた名前を殴るから。泣いている名前は好きじゃねえんだ。

「は、ぁう」

キスマークはそうそう消えないように濃く付ける。名前は痛がるけどその度にナカが締まってヨくなる。そんなことをしてセックスを楽しんだ。それしか楽しみがねえから。





散々抱いて汗をかきまくったってのに、ヤッたあとに名前は甘えるように俺の胸へ顔を埋めてきやがった。いつもヤッたらさっさと部屋を出ていくくせに珍しい。

「…どうしたぁ?」

甘える名前が可愛くて頭を撫でる。名前はうっとりと大人しくなった。

「スクの手、好き」
「ゔ、ぉぉ…」
「あは、照れた?」

すりすりと首を振って俺の手に頭を押し付けてくる。もっと撫でろとねだっているようで、俺は素直に名前の頭を撫でた。名前はまだ俺の胸に顔を埋めている。良かった、俺の顔見られてねぇ。
初めて俺の名前と一緒に“好き”が出た。俺のことを見てくれた。それが何より嬉しくて、顔が熱くなる。

「何で手なんだぁ…」
「ん?分かんない」
「手、だけなのかぁ…?」
「えー?えっちも好きだよー?」

名前はまだ甘えている。ごろごろ喉を鳴らす猫みてえに擦り寄ってきて可愛いのに言葉が可愛くねえ。俺が聞きてえのはそんな言葉じゃねえ。俺の気持ちがバレたらこの関係が終わるからこれ以上は聞けない。もし聞いても俺のことを好きだと言ってくれるわけがねえ。だが、少しだけ胸がぎゅうと苦しくなった。

…恋する乙女か、俺は。

確かに幸せだ。こんな単純なことで幸せになれる俺もどうかしてやがる。片想いで十分、なんて女々しくて知られるわけにはいかねえが、名前の言葉で一喜一憂できる自分がいるのも事実だ。今は幸せが続いていて怖いぐれえだが、現実は変わらねえ。俺がどんなに幸せでも、こいつが俺に優しくなっても、甘えてきても、こいつがクソボスの女だってことには変わりねえ。分かっている。仕方ねえ。

だが俺は幸せだ。それで十分じゃねえか。


(( 揺るがない幸せと霞んだ世界 ))
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