※主人公視点/中学生「ザンザス、お誕生日おめでとう!何が欲しい?」
「お前」
きゃー意味分かんなーい。今日もザンザスは日本語を喋ってくれません。私日本人だからイタリア語分かんなーい。
(( 誕生日プレゼント ))その言葉を聞いた瞬間、会議室にいた皆が一斉に吹き出した。これから真剣な会議っていうときに、ボスはなんてボケをかますんだ、と。当然私も苦笑い。だって、年齢差考えてみてよ、ネタにしかならないよ。お誕生日おめでとうー!なんて自分からザンザスに抱き着いたのはいいけどここからどうしたらいいか分からない。
「え、あ、わたし?」
「…」
ザンザスは当然だと言うように足を組んだ。え、何、分かんない。ちらっとスクに視線を投げてみたらスクはすんごい真顔になってた。他の幹部は笑ってるのに何で。
「す、すく…?」
私が弱々しく呼んだらスクはハッとして私から視線を逸らし、直ぐさまルッス姐を見た。ルッス姐もごくりと喉を鳴らしている。え?何?この感じは何?
「どうでもいいけどとっとと会議始めようぜ」
ベルの一言により私は救われた。そそくさと自分の席につく。そわそわしている私を見てザンザスは軽く舌打ちした後、何事もなかったかのように会議を始める。会議中、スクとルッス姐からの視線がすごく痛かった。な、何なのよもう!
「う゛ぉぉい」
「はい…」
会議が終わってすぐ、私の背後にはスクとルッス姐がこわい顔して立ってた。いやだなぁ、何なのよ。すごく物騒。私は気まずく床に視線を落とした。
「ちょっとついてきてくれる?」
「…」
そんな私にルッス姐は優しく言ってくる。それでも長身殺し屋2人に囲まれたら私だって自然と涙くらい出るでしょ。
「あの、」
「言っとくが、嫌だと言っても連れてくぜぇ」
「…」
じゃあ何で聞いたの。スクのばか。大嫌いだ。
「えっうわっなにっやめっ」
「うるせぇ、騒ぐなぁ!」
そうかスクはいつもこうやって標的を黙らせてきたのか。ぼんやりそんなこと思いながら般若のようにこわいスクの顔を見ながらびびって泣いた。さっきまでルッス姐に可愛いドレス着せられてお化粧されて、私何でここに連れてこられたんだろうって思ってたけど、やっと分かった。スクがおっきい箱に私を詰めようとしてる。絶対これザンザスへの誕生日プレゼントだ。最低だこの人達、人の命を何だと思ってんの。
「やっ無理だから!ほんとに!お願い!」
「クソボスが欲しいって言ってんだぁ、従うのが役目だろぉ」
「いやいや何まじになってるわけ、あんなのただの冗談じゃん!ねっ!」
「クソボスが肉と酒以外を欲しがるなんて今までなかったぞぉ」
「えええええ嘘だよそんなの!ザンザス単純すぎる!」
そこまで言ってハッとする。待って、肉って何?私肉扱いされてるの?食べられちゃうの?毎年こうやって生贄とお酒を捧げてザンザスの誕生日を祝ってるの?やばい私ほんとに命が危ない。
「す、すく、見逃して、お願い…」
「無理だぁ」
諦めろぉ、と聞こえたと同時に私の体が浮いて、次の瞬間箱の中に収まっていた。
箱の中でもいやいや暴れたのにルッス姐がねっとりした声で「暴れたら焼いちゃうわよぅ」なんて言うからびびって声出なくなった。抵抗もやめた。ああ、私ヴァリアーに入れて少ししか経ってないのに、ひどい。でも皆なんだかんだ優しかったなあ。それにザンザスだって……短期間なのに(一方的に)すごく仲良くなったし、食べられるのはいやだけど、好きだった。はーあ、寂しいなあ。
「じゃじゃーん!ボス!お誕生日おめでとうー!!!」
感傷に浸っていたら箱の外からそんな声がして、ああ、ザンザス今目の前にいるのかぁ、って分かった。
「…何だそれ」
「ボスへプレゼントよぉ」
「要らねぇ」
やっぱりザンザスがいたらしい。ザンザスの不機嫌そうな声が聞こえた。そりゃそうだよ、こんな大きい箱に入るくらい大きいプレゼントなんか置き場に困るし要らないよね!ね!私をここから出して!びびって声出ないけど!
そしたらスクが意味深な一言。
「なんだぁ、ボスさんよぉ、お前が1番欲しいものかと思ったんだがなぁ。要らねぇなら俺がもらってもいいかぁ?」
「…」
暫く沈黙が続く。箱の中からは分からないけど、多分スクはにやにやしてる。ずかずか足音が近づいてきて、あ、箱が開いた。
「…ざんざす…」
自分でもびっくりするくらい弱々しい声が出た。ザンザスが一瞬驚いたように動きを止めてから、すぐに私を箱の中から取り出した。取り出すって、ザンザスが本当に私をひょいって抱き上げて取り出したんだけど。
「テメェ、こんなところで何やってやがる」
「え、あの、お誕生日プレゼント」
私のこと本当に要らないのかなって思ってこてんと首を傾げたらザンザスは私を担ぎながらスクとルッス姐に向き直った。
「仕方ねぇからもらってやる」
そのときの2人の笑顔ったら。ザンザスに喜んでもらおうと必死なのは伝わってきたけど、それにしてもこのやり方はどうよ。私結局貰われちゃうのかぁ。
「そうかぁ、気に入ってくれて良かったぜぇ!」
「うふふ良かったわぁ。それじゃあ邪魔者はこの辺で退散するわねぇん」
ルッス姐なんかノリノリで投げキスしてるし。ほんとに置いてく気だ。パタンと閉まるドアを眺めて泣きそうになっていたらザンザスが私を担いだままソファまで歩き、少し優しくそこへ私を降ろした。
「…おい」
「あ、う」
声かけられてびくって肩上げたら溜まってた涙が勢いで零れた。あわわ泣いちゃった、どうしよう。ごしごし手で拭ったけど1回出ちゃうと止まらない涙。こんなんじゃ暗殺者失格だって分かってる、でも、ザンザスに食べられるって言われたら誰でもびびるでしょう。
「テメェ、何泣いてんだ」
「え…あの…、」
ちろちろ視線動かして言葉を探すけど上手いものが見つからない。私そんなに語彙力ないんだから。もうストレートに聞いちゃえ。
「ざんざす、わたしのこと、たべるの…?」
嗚咽混じりに聞いた。ザンザスはちょっとだけきょとんってしてから私の頭を撫でた。あれ、優し、い。
「何言ってんだ、カス」
「え、っんう!」
優しいと思って油断したらザンザスが私の唇をぱくって食べた。ふええ、やっぱり私食べられちゃうんだぁ。唇軽く噛まれて、吸われて、ん、なんか、気持ちいい…?
「ん…んん…、」
ちゅっちゅって角度を変えながら何回もキスされる。頭ふわふわする。
「んっ…ざんざすぅ…」
やっと離れた唇から吐息交じりに名前を呼んだらザンザスは深紅の目で私をじっと見つめていた。
「安心しろ、何もしねぇ」
「ん…」
「ガキを食ったりしねぇから、泣き止め」
「ん、」
ちゅっちゅと涙にもキスを落とされ、舐められる。なんか変だよ、えっちだよ、これ、へん。
ガキを食ったりしないって、もしかして大人になったら食べられちゃうのかなあ。でも、それまではザンザスの傍にいれるのかなあ。それなら、まあ、食べられてもいっかぁ…?
「ざんざす、っ」
もう1回名前呼んだらザンザスは少しだけ目を細めて私の口の中に指を入れてきた。う、わ、なんか、おっきくてごつごつしてて、大人の男の人だ。年齢差を改めて思い知らされる。その指でザンザスは私の舌を撫でたりした後、口の外まで引きずり出した。涎出ちゃう、恥ずかしい。
「は、あ…っ」
恥ずかしくてまた涙出てきちゃった。うるうるして視界に映るザンザスの顔がゆらゆらしてる。そしたらそのゆらゆらが近づいてきて。
「んっ、んむぅ、っ」
指で掴まれた舌をザンザスの舌でちろちろ舐められる。うわあ、知ってる、これえっちなキスだ。大人のドラマで見たことあるもん。ザンザスは指を離して今度は深くキスしてきて、舌を絡める。ちゅるって唾液を吸い上げられると体の力がなくなるみたいな感覚に陥る。気持ちいい。心地好くて、眠っちゃいそう。ザンザスのシャツを握っていたらその手に大きな手が重ねられて、なんかどきどきした。なに、これ。
「んっ、んちゅう、ざん、ざす、んっ」
「…」
「ん、んっん、っぷはあ!」
もう無理って思ったらザンザスの唇が離れた。酸素を取り込もうと口を開けたらだらあって涎垂れちゃった。うう、恥ずかしい。でもそれをザンザスがぺろぺろしてくれた。
「ざんざすの、うそつきぃ…っ」
「あ?」
「なにもしないって、ゆった」
「…」
じろって睨んだらザンザスは動きを止めた。これじゃあはくはく息継ぎしてる私がばかみたいだ。絶対許さない。そう思ったのに、ザンザスの顔がほんのり赤くなったから怒るにも怒れなくて、びっくりした。
「え…?ざんざす?」
「ガキのくせに……テメェのせいだ」
「え、え、」
「言っとくが俺はロリコンじゃねえ」
何だか言い訳に聞こえるけどザンザスが可愛く見えて私はザンザスの顔を覗き込んだ。
「ロリコンなの?」
「っ、だから違ぇって言ってんだろ」
じーって見上げてたら頭叩かれた。DVだ。スクがいつも受けてるやつ。
「ざんざす、」
「るせぇ、もう黙ってろ」
私が口を開いたらザンザスは強引に私を抱き寄せて自分の膝の上に私を乗せて胸板に顔を埋めさせた。苦しい、息できない。
「ざ、」
「るせぇ。今から俺のもんなんだから従え」
「…はーい」
もぞもぞ動いてザンザスの胸板から顔を離す。ザンザスの首辺りに顔を乗せたらやっと息が吸いやすくなった。それにしてもなんて強引な人だ。私はプレゼントだから仕方ないけど。
「…」
「…」
「おい」
「はい」
うるさいって言ったのはザンザスなのに話し掛けられたから上を向いたら、ザンザスはまた私にキスしてきた。何だろう、すごく甘えられてる感覚。ザンザスの方が年上なのに、不思議。
「俺はロリコンじゃねえ」
それからもう1回、ザンザスは呟いた。
END
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年上だけど甘えん坊なザンザスが大好きです。中学生主とか完全に私の趣味ですすみません。ザンザスお誕生日おめでとう。名前様、お付き合いありがとうございました。
20121010
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