刻々と時間が過ぎていき、彼女はだらだらと嫌な汗をかいた。

「ど、どうしよう…」

(今日、ザンザスの誕生日だ…!)

何故彼女が焦っているのかというと、理由は1つ。誕生日プレゼントを用意していないのだ。
ここ最近これでもかというほどに任務が入り、プレゼントを買っている暇が無かったのだ。今もまた、任務の帰りである。

「もう夜の10時じゃんか…」

今日はまだ彼に会ってすらない。今から何か買おうといっても何が良いのか分からないし、店を開いているところもポツリポツリだ。

(…帰って、素直に謝ろうかな…)

彼女はため息をつき、重い気持ちでアジトへ帰っていった。




(( 欲しいもの ))




コンコン、とノックしても、いつも通り返事はない。ドアを開けると、彼は書類を書いている途中だったのか、頬杖をついたまま目を閉じていた。

「あ、…寝ちゃってる…」

そっとドアを閉めた後、彼のもとへいった。デスクの上には大量の書類。

「裏で頑張り屋のボスさんだもんね…」

クス、と笑って頭を撫でれば、彼はピク、と肩を浮かせてから微かに目を開きはじめる。

「寝てねぇ」
「別に寝てても良いのに」

クスクス笑うと、彼は不機嫌そうに目をゴシゴシ擦った。

「テメェが遅ぇからだろ」
「うん、ごめんごめん」

彼女は彼の後ろへ回り、椅子に座っている彼をぎゅう、と抱きしめた。

「お誕生日、おめでとう」
「あぁ」

チラッと見えた、彼の足元に置かれたたくさんのプレゼント。きっとルッスーリアやレヴィが贈ったのだろう。それ以外にも、もしかしたら昔の女からも貰ったものかもしれない。彼女は少しだけ目を細めた。

「ごめんね、ザンザス。…誕生日プレゼント、用意できなかった…」
「あ?」

彼はギ、と椅子を引き、彼女の方を向いてから抱き寄せる。それから自分の膝の上へと乗せ、彼女の顎をグイッと掴んだ。

「要らねぇよ、そんなもん。代わりにお前を貰ってやるからな」
「え、」

どーゆー意味、と聞こうとしたが、彼によって遮られた。噛み付くように、キスされる。かぷりと唇を噛まれ、本当に食べられてしまう感覚。彼の舌に自分のを絡ませるのに必死で、ふと手に感じた冷たいそれに目も向けられない。

「ん、ふ…ぅ、」

音のない部屋に、微かな水音と息遣いが小さく響いた。暫く続けてから、彼は唇を離して彼女の頬を撫でた。トロンとした目つきで彼を見上げると、ニヤリとするいつもの顔。

「テメェに拒否権はねぇぞ」
「…?」

ぐい、と左手首を掴まれ、顔の前で止められる。
さっき一瞬感じた冷たいものの正体。薬指に光るそれを見て、彼女はポカンと口を開けた。

「ゆび、わ…?」
「言っただろ。テメェを貰うって」
「…!」

どこまでも自分勝手な男。いくら重要な出来事でも、自分の気分だけで決めてしまうのが恐ろしいところだ。

「もう…、ばか」

しょうがないから貰われてあげる、と笑うと、彼も微かに口角を上げた。

「でもすぐに捨てたりしないでね」
「一生離さねぇから 安心しろ」

そう言って彼女の頭を撫でる彼は本当に嬉しそうに、でもそれを悟られないようにぶすっとしている顔で、彼女は思わず吹き出してしまう。

「何だ」
「何でもなーい」

にやにやと笑えばそれに顔を顰めてから、彼は仕返しだと言うかのように激しく熱い口づけをした。


END
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この後「ボスってばこれをやりたくて名前ちゃんに休みをあげなかったのよ〜」「…え、」「…カッ消す…!」みたいなやり取りがあったらいいです。バラされてしまったボス涙目です(笑)
名前様、お付き合いありがとうございました。
20111010
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