まだ6月、梅雨の季節だ。
じめじめとしたこの季節は彼女が最も嫌う時期。今日は晴れているが、明日はまた雨だと聞いて憂鬱になる。カラッカラに晴れた今日は嫌というほど暑いのに。

「アイス、食べようかなあ…」

それにしても暑い。半袖でも暑いのでキャミソールになってしまったほどだ。冷凍庫から棒付きアイスを取り出し、口に含んだところで彼女は携帯に目をやった。
白蘭が出ていってもう4時間。すぐ帰ってくるから、という彼の言葉とは反対に、もうそろそろ21時を指そうとしている時計に目がいった。

「遅いよ、ばか…」

ぎゅう、と携帯を握ると、彼女は独りソファに身を沈めた。あと何時間待てば彼は帰ってくるのか、もしかしたら何かあったのか、考えれば考えるほど悪い方向へ進んでしまう。待ち時間というものは苦痛で仕方ない。ぐるぐると考えているうちにアイスを食べ終わり、また暇になった。

──ピンポーン

これから何をしようか考えていたら突然インターホンが鳴らされる。こんなときには誰にも会いたくないというのに。

「はーい」

返事をしてから気怠そうに立ち上がり、アイスの棒をごみ箱に捨ててからドアを開けた。

「はい?」
「ただいま、名前チャン」
「あ、白蘭!」

そこには愛しの彼の姿。久しぶりに大事な仕事だったようで、スーツをお洒落に着こなしている。まるでタキシードのような格好にどきどきと胸を高鳴らせながら彼に抱き着いた。

「おかえりなさい!」
「はいはいただいま」

彼は彼女の額に軽くキスを落とすと、すぐに体を離して彼女を中へ入れる。自分も中へ入るなり、すぐにドアの鍵をガシャリと支った。

「名前チャン?」
「ん?」
「ドア開けるときは誰が相手か確認しなきゃだめって言ったでしょ?」
「え、あ…」
「それに」

彼女のキャミソールに手を掛ける。肩紐を軽く手に取ると、彼はあからさまに眉を顰めた。

「こんな格好で人前に出ようとするなんて、許さないよ」
「ごめんなさい…」

すっかり肩を落としてしまった彼女に目を細める。

「僕じゃない男だったらどうしたの?襲われたら?助けを呼んでも誰もこないよ?」

ちらりと彼を見上げると、相変わらず優しい笑顔を浮かべている。いつもと違うのは、目が笑ってないということだけだ。

「別に、私なんかを襲う人なんて…」
「ふふ、甘いなあ」
「え?」

彼はにこりと笑い、彼女をぎゅうと抱き寄せる。

「自覚がないことは1番困る。僕をこんなに夢中にさせてるのに」
「それは…」
「名前は解ってないよ。…だから、その身体に解らせてあげる」

呼び捨てに変わったのは彼のスイッチを入れてしまった証拠だ。艶美な笑みを見せつけるように彼は、たっぷり愛してあげる、と彼女に囁いた。




(( 薄着の季節 ))




くちゅ、と水音が響く度に飲み込みきれなかった唾液が顎に伝って零れているのを感じる。もう何度目か分からない激しいキスで、目の前がくらくらしてきた。快感で痺れてきた舌はいつもより熱く、敏感になったそれをきつく吸い上げられるとたまらなく悦い。始めは一方的に攻められていただけの彼女だが、今となればキスのよさを十分覚え、未だぎこちないものの白蘭に絡ませようとする。舌の使い方を彼女に教え込んだのは紛れも無いこの男だ。

「ん…、ふ、んん…ッ…」

彼の首に腕を回し、自ら強請ると、彼は濡れた唇で彼女の舌をなぞり、また微かに震える彼女の舌を甘噛みする。ちゅくりと卑猥な音を立たせて、2人の唇が離れる頃には透明な糸が2人を繋いだ。

「ん、く…ッびゃ、く…」
「煽らないでよ」

彼は何とも愉しげだ。にこにこと笑いながら彼女の髪を梳くと、喉に伝った唾液を舐めとるように舌を這わせた。

「ふふ、キスだけなのに、もうそんなえっちな顔して」
「ん、ふ…ぁ…あ、っ」
「名前はここ、好きだね」

器用に服を脱がせながら鎖骨に噛み付く。唇を這わせてなぞり、甘く噛むと彼女は鼻から抜けるような声を出した。

「びゃく…っひ、ん!びゃくらんっ」
「分かってるから急かさないで」

クスクスと笑い、彼の手は彼女の胸へ滑らされる。
人より少し大きめの胸をやわやわと揉みしだく。手から溢れるくらいに豊かなものは少し強めに刺激してやらないといけないのだが、その緩やかな刺激は敢えてのこと。

「ッふぅ、…ぁ、びゃく…?」
「もうこんなに勃ってる」

分かってはいるがわざわざ言われるとカァッと顔が赤くなる。ふるふると首を横に振ると彼はにこりと優しく笑って見せた。

「や、…んぅ…っ」
「嫌なわけじゃないでしょ?」
「ふぁ…ち、が…!ん、く、っ」

先端をぎゅうときつく摘まれ、指先から溢れた乳頭をカリカリと激しく引っ掻かれる。先程のやんわりした刺激と打って変わるその激しさに背中を反らした。

「やあぁ…っん、はっ」
「名前は舐められる方が好きだっけ?」

きゅうきゅうときつく摘まれていたそれを、唇が優しくなぞる。口が加わることで刺激の種類が増えた。

「あっ、だめ…それ…っんぅッ」

指からこぼれる乳頭を舌で円を描くように愛撫される。かと思えば上から強く押し付けるように舌を尖らせて。

「んっ、んーー…っ」
「気持ち良さそうだね」

紅潮して刺激に耐える彼女をクスクスと笑い、彼は太ももへと手を滑らせた。内股を焦らすように何回も撫で、むずむずと腰を震えさせる彼女を見て更に笑みをこぼす。

「ふふ、可愛い」
「や、ん…意地悪……」
「うん、僕もそう思う」

だって、と彼女の下着を脱がせながらにこりと言い放つ。

「恥ずかしくて死にそうって顔してる名前が可愛くて仕方ないからさ」

彼女の責任だと言わんばかりの口ぶりで下着を剥ぎ取った。先程からの愛撫ですっかり秘部からは蜜が滴り、下着にもてらてらと愛液が光った。

「うっわ、えっちな子…」
「やっ…返して…!」

その下着をまじまじ見つめた彼に、カァッと熱が上がる。艶めかしく光に反射するそこに触れてみると、すぐに透明な糸がぐっしょりと絡み付いた。そんなものを見せつけられてはたまったものではない。彼に手を伸ばすが、彼はすぐに下着を放り投げて彼女に笑顔を見せた。

「まだ触ってもないのにこんなに濡れちゃうんだね」
「…っ、」
「ほんと、淫乱な子」

実に愉しそうだ。誰のせいで…と、ぼそりと呟くと、また笑顔をこぼす。

「え?何?」
「だっ、誰のせい、で、こんな身体に…っ」
「僕のせいなの?」
「当たり前、でしょ…!」
「ふーん…」

意地悪くちらりと視線を投げられる。にやにやと口角が上がり、綺麗な瞳には熱が帯びていて。

「僕が毎回気持ちいいことたくさんしてるからねぇ」
「…ん、」

秘部を優しくなぞられる。割れ目を往復させられ、ぬめぬめと蜜が零れてくる。

「でも、初めてのときから、名前はよがってたよね?」
「え…そんな……あっ」

蜜を指に塗り、掬いとるように抉られる。それを彼女の顔の前に持ってこられ、2本の指を繋ぐ透明な糸を見せつけられた。

「見てこれ、こんなこと言われながら、ちゃんと反応してる」
「やっ違っ、違う…もん……」
「違わないでしょ」

ふるふると首を横に振ってはみるが、どろりと指から滴る愛液から目が離せない。彼は小さく口を歪め、その愛液を熱い舌で舐め上げた。

「なっ…!」
「やらしい目、してるよ」

どくんと身体が熱くなると、流し目でちらりとこちらを見て、また秘部へ指を埋めた。

「ッひぃん!やっあっ、あっ…」
「…もっと奥?」
「んっ、んぅ…!」

こくこくと頷く彼女に指を進める。どろどろした内壁はするりと指を飲み込み、奥へ奥へときゅうきゅうと誘い込む。それに抗い指を奥に曲げると、少しざらついた場所に辿り着いた。

「あっ…あん!や…やらァ…っ」
「すごい反応、ここ好きだねぇ」

ぐりんと指を回されると足の先が震えた。ごつごつと乱暴に抉られても全て快感へと変換されてしまう。

「あっ、あああ…!だめ、ぇ…っ」

苦しいくらいの快感に身が狂いそうになる。暴力的な快楽に息が苦しくなり、シーツを鷲掴んだ。絶頂がすぐそこに見えて頭がくらくらしてくると―――…

「……へ、」
「だーめ」

彼は笑顔で指を引き抜いた。熱がナカで解放されず、じんじんと奥に篭ったままだ。

「な、なん…っ」
「今イきそうだったでしょ?だめだよ、そんなの」
「なん、で…っ」

カチャ、とベルトを外す音がする。これから満たしてもらえるのだと思うと身体が期待してしまう。

「名前は僕が欲しくないの?指だけで満足?」
「ち、ちが…っ」
「違うの?指だけでイけちゃうくせに」

意地悪く彼女を追い詰める。絶対的な快感を与えておきながらイくなと言う方が無茶な注文だというのは百も承知だろうに。

「欲しいなら自分から脚開いて?」
「えっ…や、そんな…っ」
「できるでしょ?」

チャックを開ける音が聞こえる。腰が砕けそうに快感を欲しがる自分の熱を抑える術が、これ以外見つからなかった。

「さい、てぇ…っ」
「…いい子」

彼の言いなりになるのは不本意だが、渋々腰を上げてのろのろと脚を開いた。射抜くような彼の視線に堪えられずに小さく開くと、痺れを切らした彼が小さく舌打ちをして彼女の脚を無理矢理開かせた。

「ひゃあ…っ」
「遅いよもう、僕だって限界…」

彼女の脚を肩に乗せ、体重をかけるように熱を埋めた。未だ処女のような狭さを保つ彼女の秘部に顔を歪ませる。

「ん…っ、ああぁあッ…!は…!」
「きっつ……最高だよ、名前のナカ…」

最奥で慣らすように腰を回されて、彼女の腰はふるふる動く。

「や、もう…あ…っ、動い、て、いいから…あッ、お願…っ」

そんな彼女を見下ろし、思わず笑みをこぼす。ここまで淫乱にしてしまったのは、確かに自分だと確信があったからだ。

「飛んじゃだめだよ」

彼の笑顔を最後に、激しい運動に変わる。いつもみたいに焦らし半分に浅いところで出し入れされるのではなく、今日は最初から脚を抱え上げたまま激しく腰を打ち付けられているのだ。何度も何度も最奥を抉られ、子宮口付近でぐじゅりと泡立たせるように動かれる。

「あ…あ、ん…っああっ、おっき…い…ん、くぅ…っ」
「ふふ、えっちな子」

しかし彼女の一言一言に欲情しているのは確かで、どくんと自身が脈を打って質量が増す。心地好い内壁の感触に絶頂を迎えそうだ。

「…あっあああぁ…もう、イッ、ちゃ……ああッ…」
「もう少し我慢できる?あとちょっとだけ、」

彼女の髪を梳きながら、より速まるピストンに身体を震わせる。腰を打ち付ける度震える胸に目を細めた。

「…く、……もう、いいかな……」

余裕が無くなり掠れた声で呟くと、彼は熱を吐き出した。どくどくとナカから溢れるほど、大量に。

「あっ、熱っ…!びゃく、ひ、ああぁ…っ」

彼女もびくびくと身体を跳ねさせ、そして、絶頂と共に意識を手放した。

「あー…飛んじゃだめって、言ったのになぁ…」

余韻に浸りながら、彼女を優しく抱きしめる。まあいっか、なんて呟きながら、彼女の額にキスをした。


END
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リクエストいただいてサイト1周年記念に書いた記憶があります。ちょっとだけ修正しました。そういえばもう2周年ですね…作品が少なくてすみません(笑)これからもよろしくお願いします。
20120611
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