助けを呼んだ筈だったのですが、名前ちゃんはたまたま廊下で出会ったベルにひょいと抱き抱えられてしまいました。じたじた暴れてみますがベルは楽しそうに笑っています。

「ししっ、何でこんなとこにいんだよ、ボスのお気に入り」
「は、はなして!れびーがたいへんなの!」
「あ?レヴィ?」

ベルが名前ちゃんに問うと、名前ちゃんは細かく状況を説明してくれました。ふむふむと相槌を打ってくれるので真剣に聞いてくれている様子です。名前ちゃんは嬉しくなりました。

「だからね、いますぐれびーのところにいって!」
「ムリ」

嬉しくなったのは一瞬のことでした。バッサリとベルに言い捨てられ、自分の非力さを悔やむばかりです。ベルは名前ちゃんを抱きながら歩き出しました。

「ど、どこいくの!?」
「どこって、俺の部屋に決まってんだろ」
「れびーが…」
「あいつは放っといて大丈夫だっての。いつもああだぜ」
「え…?そうなの?」
「ししっ、変態だからな」

へん、たい?
こてんと首を傾げる名前ちゃんにベルはますます楽しそうです。新しい玩具を見付けた幼子のように足取りは軽く、直ぐにベルの自室へ辿り着きました。

「とうちゃ〜〜く」

自分の部屋なのにベルはドアを蹴り、乱暴にも足で開けてしまいました。中はとても広く、赤と黒を基調に揃えられたインテリアは何だか大人っぽく感じ、名前ちゃんは感嘆の息を吐きました。

「すごいひろい…!」
「ししっ、ったりめーじゃん。だって俺、王子だもん」
「おうじさまなの?」
「そうだって言ってんだろ」

ベルがソファへ歩いていくとその後ろを健気についていく名前ちゃん。王子様なんて初めて見るものですから、名前ちゃんの目はキラキラ輝きます。

「ねえ、あたまにつけてるのは、かんむりなの?」
「あ?」

名前ちゃんは興味津々といった様子でソファに登ると、上目遣いにベルを見つめます。顔には、すごい!かぶりたい!と書いてあります。とても分かりやすいですが嫌な気分にはなりません。むしろヴァリアーに来て初めてここまで憧れの目を向けられているのです、ベルは何だか嬉しくなりました。

「そうだぜ、お姫様」

ベルはそっと自分のティアラを取ると、名前ちゃんの頭に付けてやりました。名前ちゃんはとっても上機嫌です。大変興奮した様子で、ソファの上をぴょんぴょん跳ね回ります。余程嬉しいのでしょう。

「にあう!?にあうかな!?」
「ししっ、似合ってるぜ」
「わたしおひめさまになれる!?」
「俺と結婚したらなれるんじゃねえの」

ベルはそう言うと名前ちゃんの腰を掴み、自分の膝の上へ乗せました。見ているのは可愛いのですが暴れ回られるのは得意ではないのです。

「けっこんしたら、しあわせかなあ」
「さあな。でも俺と結婚するなら強くなきゃすぐ死ぬぜ」
「じゃあつよくなる!」

名前ちゃんはぐっと拳を握りますがその小ささは殺人と無縁そうです。勿論ベルはこの歳で殺人を犯していたわけですが、一般の子供がするはずもないのです。

「ししっ、いい子じゃん。ならこれをやるよ」

ベルは名前ちゃんに1本のナイフを差し出しました。ベル特製の切れ味抜群のナイフです。

「ありがとう!」

名前ちゃんは嬉しそうに受け取ります。珍しい形状をしているのでじっくり観察し、触っていきます。少々危ない気もしましたがベルは敢えて止めませんでした。名前ちゃんの血が見たかったのです。名前ちゃんはベルの予想通り、直ぐにナイフで指を切ってしまいました。ぷつりと亀裂の入った皮膚からは血が膨らむように出てきます。綺麗な色でした。

「ふ、ぇ…っいたい…!」

名前ちゃんは慌ててベルを見上げると、ベルはすっかり欲情しきっていました。何とも歪んだ性癖です。興奮気味に名前ちゃんの手を取ると、ベルはにやりと笑います。

「あーあばかだな、王子のナイフは切れやすいんだよ」
「いたいよお…っ」
「消毒してやるから待ってろ」

綺麗な血が流れる指にベルは大きく口を開けました。ぱくり。そのまま口へ入れ、舌の上で転がします。じんわり鉄の味が口の中に広がり、ベルは嬉しそうに傷口を何度も舐め回しました。

「ん…っいたい…」

びくっと体を揺らす名前ちゃんの瞳は潤んでいて本当に痛々しいです。が、ベルは舐めることを止めません。ねっとりと舌を這わせ、傷口の回りを行ったり来たり。舌先を尖らせて小刻みに揺らされたり平たくして嬲られたり、名前ちゃんは何だか体が熱くなってしまいました。

「ん…っふ、」
「ししっ、えろい顔…」

ベルが名前ちゃんの指を口から出すと、名前ちゃんの指は艶かしく光っています。指を舐められるのが大変気持ちよかったのでしょう、名前ちゃんはとろんと蕩けた表情をしていました。ベルは名前ちゃんの頭を優しく撫でてやりました。

「なあ、ボスなんかやめて、マジで俺の姫になってもいいんだぜ?」

どういう意味だか分かりませんでしたが頭に触れている手が心地好く、名前ちゃんは気持ち良さそうに目を細めました。
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