ナランチャ

こちらが甘い雰囲気に持っていこうとどんなに頑張っていても、彼は容易くそれをぶち壊す。それが必ずしも悪いことではない、素直な彼の長所だと思っている。それでも。
「ん…、」
幾度と重ねられた唇を愛撫し、彼の指先はわたしの頬をつつぅと撫でる。熱の孕んだ瞳を恥ずかしそうに揺らしながら、小さく喉を鳴らすのだ。
「なぁ、舌入れてもいい…?」
必ず許可を取る彼に小さく笑みが漏れた。こうして言葉にしないと先に進めないのは少し直してほしいな、なんて。この甘い空気の中で断るはずがないのに。
「えぇ」
薄く唇を開いて招くと、彼はおずおずとわたしの唇を舌でなぞり、口内へ熱を捩じ込んだ。絡み合う舌も、混ざり合う唾液も、擦られる粘膜も、なぞられる歯列も。彼はわたしの口内を味わうように貪った。くちゅくちゅと内側に籠る厭らしい水音と、わたしの背を這う彼の手が、次の行為を示している。離れた唇から唾液が垂れそうになるのを、彼は舌で舐め取った。彼の瞳は男のそれだ。
「なぁ、…いい?」
それでも許可を取るのだから、やはり笑ってしまうのだ。彼に抱き着くように腕を回すと、それを肯定と受け取ってわたしを押し倒す。わたし達の間に、許可など要らないのに。
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