仗助

逞しい腕は私一人を宙に浮かせることなど何でもないと言うように、軽々地面から足を離させた。
「もう……飲み過ぎっスよ」
「あは、仗助くんお迎え? ご苦労さまぁ」
「アンタが呼び出したんだろ!」
腕の中でふわふわと揺さぶられると心地好い。頭までふわふわになってくる。とってもいい気分だ。
「ねえ仗助くん、ちゅうしよ…」
気持ちいい気分のまま彼と唇を重ねようとすると、ギョッと目を見開かれる。
「なッ…何言ってるんスか!」
「しないの?」
「ここじゃあ無理っスよ…!」
途端に耳まで赤くする彼は少年らしさを物語り、何だか私とは不釣り合いに見えた。キス一つで頬を染める少年が、こんな酔っ払いの大人に掴まっているなんて可哀想だ。
「できないんだ〜…」
アルコールのせいで涙腺すら弱まっているのか、ちょっとのことで涙が溢れる。やはり彼とは歳が離れている。それがこんなにも苦しい。揺らめく視界の中で彼は背を丸めて私へ顔を寄せた。真っ赤な顔をしているのに、ちゅ、と小さくリップ音。
「アンタ何子供みたいなこと言ってンだよ。他の男には言ってねーだろうなァ?」
柔らかな感触に、彼の言葉に、面白くなさそうな表情に、つい口許が緩む。
「私、子供みたい…?」
「超子供っスよ!いつもワガママ言うし!」
彼は私を抱きながら歩みを進めた。
「ふふ、そっかぁ、子供かあ」
「…嬉しいんスか?」
「うん、ふふふ」
すっかりご機嫌になる私に「よく解んねェっスけど…」と漏らす。自分だってよく解らない。ただ、彼のことになるといつだって情緒不安定だ。
「ねえ、もっかいちゅうしよ!」
「あぁ〜〜もう〜〜続きは帰ってからっスよ!!」
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