ミスタ

気怠い身体をやっとの思いで起こすと、隣に居たはずの温もりがなくなっている。休日の彼は随分早起きだ。遊びに向ける情熱を仕事に向け、真面目に早起きするようになればもっといいのだけれど。部屋を出ると珈琲豆の香りが鼻を擽った。
「よォ、漸くお目覚めか? 散々シたのに一人で動けるなんてなァ」
マグカップを傾けた彼が薄着の私を見るなりにやにや笑う。誰かさんのせいで鈍痛が広がる下半身を引き摺って水分を求めに行くと、彼は私の頬を撫でて額に甘いキスをした。朝にはちょっと胸焼けしそうな程に。
「俺が飲ませてやろうか?」
「まさか、自分で飲めるわよ」
残念だと肩を竦めた彼はまだ昨晩の甘い空気を残していた。冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した私は口を潤し、彼のマグカップを覗き込む。
「とってもいい香り。私の分もあるかしら?」
「あァ、淹れてやるよ。低血圧なお前が俺にキスしたくなったらな」
甘えたがりの恋人を持つと大変だ。可愛らしいお強請りに思わず口端を上げてしまった私は、仕方なく彼のそれへ唇を重ねた。
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