赤葦
「なかったことにしよう」
何度読み返してもそう書いてある。アルコールの勢いとはいえ事実は覆らない。記憶がないなら未だしも、覚えてて、なかったことにするというのだ。溜息も吐きたくなる。
「わかりました、なかったことにします」
返事は一択しかない。まだ俺を後輩で居させ続けるなんて。
これを理由に辞めるかと問われたら辞めない。辞めたくはない。ただ、俺が辞めないことに安堵されるのは嬉しくない。あんなことをして、甘えられて、その上去ることも許されない。変に期待をさせて一気に突き放す非情な彼女に、俺はいつまで後輩を演じていればいいのか。俺だけが、息苦しい。
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