うたちゃん

あの髪色、あの身長、あの体型。顔は見えなくてもすぐに分かる、わたしの大好きなひと。コンビニ帰りなのか小さな袋をぶら下げて歩きスマホをしていた。後ろ姿さえかっこいい。
「うたちゃん!!」
大きな声で呼び掛けると、うたちゃんはゆっくりわたしを振り返る。それからふわりと優しく目を細めてくれるのだ。
「何、今帰り?」
「うん!」
うたちゃんが止まるので走って隣に並ぶと、うたちゃんは更に目を細めてわたしの髪を撫で付ける。
「な、なに?」
「犬みてぇだなと思って」
「犬? 何で?」
わたしの質問には答えないまま、うたちゃんは袋からアイスを取り出してわたしに差し出した。パリパリチョコのアイス。うたちゃんも自分用のチョコミントバーを取り出したから一緒に咥えながら帰ることにする。
「ねえ、何で犬なの? 髪の毛が似てるの?」
うたちゃんは頻繁にわたしの髪を撫でるけれど、犬扱いをしていたのだろうか。口の中でチョコを砕くうたちゃんが鼻で笑う。
「バーカ、ご主人様を見つけて一目散に走ってくるからだろ」
「ご、ご主人様!? 違うよ、わたしはただうたちゃんを見つけたから、それで……」
突然変なことを言い出すうたちゃんに目がギョロギョロ泳いでしまった。うたちゃんはわたしに酷いことを強要してくることがあるけれど、わたしはうたちゃんをご主人様だなんて思っていない。ただ対等の、そう、好き合っている恋人になれたらいいなって思ってるのに。
「知ってる。お前、俺のこと大好きだもんな」
にや、と笑う狡い顔がわたしを覗き込んだ。悪戯に、無邪気に、そして、ほんの少しの色気を孕んだ瞳が細められると途端に心臓が跳ね上がる。あぁ、ずるい、こんなの全然対等じゃない。わたしばかり好きな気持ちを、うたちゃんは散々弄んで愉しむのだ。
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