ミスタ

少し身を捩っただけで大袈裟に水音が響く。浴室とはどうしてこうも官能的なのだろうか。濡れた肌がしっとり重なるだけでいつもより厭らしい気分になるのだ。
「何でこっち向かねェんだよ」
後ろから私を抱き締める彼が唇を尖らせるが、この距離で振り向いてしまえば彼にどうされてしまうかなど容易に予想ができてしまう。彼はいつだって飢えた獣のように、私を捕食してやろうと企んでいるのだから。
「…だめ、逆上せちゃう」
「解ってねーよなァ。だめって言われると燃えるんだよ、男は」
私の都合など御構い無しに顎を引っ掴まれて後ろを向かされると、彼の目には既に欲望の色がちらついていた。なんて強引な人。この目で見詰められたら、この逞しい腕で抱かれたら、太い指で唇をなぞられたら、男を求める腹奥が疼いてしまう。
「ほら、口開けろ」
従う必要なんかないのに彼の舌を招いてしまう私は、きっと彼に毒されているのだ。
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