アイアコスに導かれてハーデス城をコレットは歩いていた。 天井から砂がこぼれ落ちているハーデス城が崩れ落ちるのも時間の問題だ。 先頭にいるアイアコスの表情は分からないが、恐らく無表情だろう。 コレットは後ろから付いて来ているだけなのに彼の存在感は大きく、それでいて畏れの塊のように見える。 神として目覚めたコレットだからこそ気丈に振る舞う事や、彼の傍に居れるのだ。 格下の冥闘士ならば恐怖で近づく事すら出来ないだろう。 「ペルセフォネ様、今生はハーデス様と共に戦うおつもりですか?」 「……ええ。」 訊かれてコレットは手にしていた杖を強く握り締めた。 「……よい心掛けです。冥王軍の指揮も上がりましょう」 フッと笑みをよぎらせ、アイアコスはそう言うとまた黙してしまった。 (…−−!?) コレットの脳裏にスッとテンマが横切った。 誰何するがテンマの姿はない。 錯覚だと思ったが、テンマの気配を近くで感じる。 「…どうかされましたか?」 立ち止まっているコレットにアイアコスは足を止めて振り返る。 「い、いえ…なんでもありません。」 「……そうですか」 コレットの言葉にアイアコスは怪訝な顔で言うと、再び前を向いて歩き出した。 コレットも足を進める。 (…なんだろう…この感じ…) だが胸中に残る違和感は一向に消えず、コレットは胸元に手を添えた。 『−−簡単に言えば気配です。小宇宙が分かれば相手の生死でさえ感知できる』 ふと、輝火の言葉を思い出した。 (もしかして私は…テンマの小宇宙を感じてる…?) だとすれば、彼はこのハーデス城の中に来ているのだろう。 (ここに来ているの…?) テンマ…… . . [mokuji] [しおりを挟む] |