「ハーデス様、」 扉越しから男の声が聞こえ、ハーデスは気で相手を感じ取り、口を開いた。 「………アイアコスか。入れ」 「はっ!」 アイアコスと呼ばれた男がハーデスのアトリエに入ってくる。 (……なんて、冷たい目) コレットはアイアコスの瞳を見てそう思った。 身震いするほど迷いのない好戦的な瞳は妖しい光を放っている。 それほど彼は今まで見た冥闘士達の中でもかなり存在感があった。 「…ペルセフォネ様もこちらにいらしたのですね」 ふと目が合い、アイアコスは口を開く。 「え…ええ…」 数テンポ遅れてコレットは答えた。 「…それでアイアコス、何用だ?」 「はっ!アテナの現教皇がハーデス城へ侵攻し、只今ヒュプノス様と交戦されているようです」 「ああ、その事か。それで…?戦況はどうなっている?」 「そ、それが…」 アイアコスを遮るようにドォオン!!と轟音が鳴り、ハーデス城全域が揺れ動く。 「…言うまでもないな」 ハーデスは溜め息を吐いた。 恐らくヒュプノスは教皇に圧されているいるのだろう。 「ここはもう保ちません。…早く避難を…」 「よい。お前はペルセフォネを連れて安全な場所に行け」 「…ハーデス様はどうなさるおつもりで?」 「…聞くまでもないであろう?」 「なるほど…畏まりました。では参りましょうペルセフォネ様」 アイアコスは察し、コレットの方を見向いた。 「……」 コレットはアローンを見る。アローンがニコッと笑った。 彼は彼なりに何か目的があって残るのだろう。 「分かりました。…アイアコス、足手まといにならないように頑張りますから道案内、お願いしますね」 「はっ!このアイアコス、命に代えましてもペルセフォネ様を御守り致します」 朗々たる声音を言ったコレットにアイアコスは跪いてそう宣言した。 . [mokuji] [しおりを挟む] |