ハクレイ





「見ろ!下で聖闘士達が集結してるぞ」


ハーデス城の前で待機していた冥闘士達が崖の下で徐々に数を増やしている聖闘士を見下ろす。


「バカな奴らだ。今更数を揃えたところで…」


「おい!誰か登ってくるぞ…!」


冥闘士の一人が近くの岩場に指を差した。


見ると布地を身体に巻きつけている男が崖を登っている。


男は最後の砦に手を掛けて地面に這い上がると冥闘士達がの前に到達した。


「なんだお前!聖闘士か!?」


「たった一人で何しに来た!!」

半ば呆然としていた冥闘士達は慌てて道を塞ぐ。


だが、男は何も答えない。


「何とかぬかせこの野郎!」


躍起になって冥闘士の一人が武器を振りかざすと男は布を脱ぎ捨てて盾にした。


「…!!」


姿を現した男は冥闘士達より老獪で長い白髪を翻して悠然と佇む。


「じじィ!?なめやがって!」


「構わん殺れ!」


手を振って号令を掛けると冥闘士達は一斉に男に飛びかかった。


「やれやれ、敬老の心が足りぬ奴らじゃ…」


腰をトントンと軽く叩き溜め息を吐いた男は肩に掛けている太刀を使わず、拳で冥闘士の顔面を強打した。



冥闘士のマスクが崩壊し、顔が歪み、倒れる。


男は他の冥闘士の頭を地面に押さえ込み、そのまま冥闘士の身体を崖から投げ飛ばした。


流れるような身体の動きに、冥闘士達はついていけず、男の周りにいた冥闘士達が全員倒れた。


「なんじゃ、冥王軍も質が落ちたのう」


(だが本拠はそうもいくまい)


「ふふ…楽しみはこれからよ」


男は口元に笑みを浮かべてハーデス城に足を踏み入れた。









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