沈痛





「ひとつ、聞いていい?」



空間転移してハーデスのアトリエに着いたコレットはアローンを見上げて言った。


「今もあなたは…私の知ってるアローンだよね?」


「…………どうしてそう思う?」



コレットの問いにアローンは静かに口を開く。


俯いているので彼が今どんな表情をしているかコレットは分からない。


それ故に答えを聞くのが怖かったが、勇気を振り絞って言葉を紡いだ。


「……雰囲気、変わっているから…」


「…ハーデスみたいで?」


「−−−!?」


コレットの見開いた瞳が大きく揺らいだ。


「コレット」


アローンに呼ばれ、コレットは顔を上げる。


「大丈夫だよ…僕はまだ…アローンだから」


「アローン…」


安堵させようと微笑んでいるアローンにコレットは不意に手を伸ばし、頬に触れた。


(……!)


アローンに触れた事で彼の中にいるハーデスが強くなっている事にコレットは気付く。


「コレット?」


「っ、…アローン…お願いだからあまり無理しないで…」



「…!?」


コレットが自分の中に眠っているハーデスの力を感じた事を知り、アローンは目を見開く。


そして同時に気付いてしまった。


コレットがペルセフォネの記憶、そして力を取り戻したのだと。



「僕もハーデスと同じように君を傷つけているのに…君はなんでそんなに…」



優しいのだろう。



「…たとえペルセフォネの記憶を持っているとしても、今いる私はアローンの幼なじみとして生きてきた¨コレット¨だから。」



コレットは笑って応える。そこには今までに見たことない穏やかな光彩の瞳があった。



「……ありがとう、コレット」


アローンは自分の頬に触れているコレットの手を優しく握り、静かに瞼を閉じた。








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