「……んっ」 目を開けるとコレットは部屋のベッドで寝ていた。 「あれは…夢…?」 呟いたコレットは瞼を開けると身体を起き上がらせる。 「…!」 と、同時に手に何かが触れた。 見るとテンマの父親から貰った漆黒の杖だった。 (やっぱり夢じゃなかったんだ…) だが服はパンドラに裂かれたままであり、血がべっとりとついている。 (あれ…!?、傷が…消えて、る…) 意識が戻ったとしても身体はそのままのはずなのにパンドラに刺された傷が消えていた。 (そっか…私、彼女とひとつになったから…) 人間じゃなくなった。 ペルセフォネとして…神の一人として覚醒したのだ。 だから傷が癒えたのだろう。 「−−ペルセフォネ様、お目覚めですか?」 「…はい。」 部屋の外から声が聞こえ、コレットは杖を握りしめる。 木の軋む音が聞こえ、パンドラが部屋に入って来た。 「……ペルセフォネ様、今までの無礼、誠に申し訳ございませんでした。貴女様に手を出した罪は重く、このパンドラ、貴女様から罰を受ける為に此処に来ました」 コレットの前まで来たパンドラはひれ伏して深々と頭を下げる。 (……この人は私を殺そうとした人。だけどそれは私の決断力がなかったせい…だから) 「パンドラ…頭を上げてください。」 「ペルセフォネ様…」 声を漏らし、パンドラは顔を上げた。 「貴女はあの方の忠臣、来たばかりの私を…しかも、ペルセフォネとして覚醒していなかった私を敵として疑うのも無理はありません。…ですから、私は貴女を責める資格などありません」 「ペルセフォネ様っ…」 「…パンドラ、これからも冥府軍の忠臣として尽力を尽くして下さいね」 「は…はっ!!」 (この方は…二百数十年前と変わられた…) ハーデスの器であるアローンと一緒に居させる理由が分からなかったパンドラだったが、ここでようやく理解した。 あの双子神の念願がようやく成就し、こうして意を成したのだ。 (今、目の前にいるこの方こそが…ハーデス様の隣に相応しい方…) コレットが冥府の女王たる厳然とした態度に見え、パンドラは畏怖を感じると共に心底敬服した。 「ところでパンドラ…ハーデスは今どこにいるのですか?」 「はっ!ハーデス様はタナトス様とヒュプノス様がご用意したアトリエで絵の制作に専念されております。必要ならばチェシャが連れていきますのでお呼び下さい」 「分かりました。」 「では私はこれで…あとで侍女を向かわせますので用件があればその者達に仰って下さい」 パンドラは立ち上がると優雅にお辞儀をして静かに部屋から出て行った。 . [mokuji] [しおりを挟む] |