三人。




コレットが駆けつけた時にはテンマがアローンの目の前にいる少年達を倒していた。


「アローンっ!!」


「コレット…!」


突然の登場にアローンは目を見開いて驚く。


彼の右側の額には血が流れており、手には子犬を抱いていた。


近くには血が付いた石が転がっている。


多分、この傷はアローンが子犬を庇って出来たのだろう。


「痛そう…待って、いま拭くから」


ハンカチを額に当てるとみるみる血の色に染まってゆく。


「ありが…っ、く!」


傷に沁みたのか、アローンは苦痛に顔を歪める。


「よくわかんねぇーけど、こいつら自分の昼飯を食った子犬を虐めようとしててさ、代わりにアローンが赤い絵の具を差し出してたんだ。」


パンパンッ!と手を叩いてテンマは言った。
確かに赤い絵の具は珍しいので売ったらパンなら幾らでも買えるぐらいの金になる。


でもそれはアローンが一生懸命貯めたお金だ。


だからこそテンマはその行為を許すことが出来なかったのだろう。


「だけど酷いよテンマ!彼らだってお金がなくて…だいたい」


立ち上がってアローンは怒った顔になる。


「暴力で解決するのは僕は嫌いだ」


「アローン…」


彼らしいとコレットは思う。アローンはいつだって話で解決しようとする。だけどテンマは先に手が出るタイプだ。


よくよく考えてみるとこの二人、逆のような気がする。


「でもそれはアローンが一生懸命貯めたお金だから黙って見過ごせなかったんだよ。
…それに私がテンマだったら同じことしてた」




「コレット…でも僕は力で解決する方法は正しいと思わないよ」


アローンは口元を引き結び、顔を伏せる。


「ふふっ、それはそうだけど…ほら!テンマ不器用だから、話し合って和解することなんてなかなかできないと思うんだ」


「(コレット、それってさ、フォローしてんのかよ)」


内心、凄く言いたい気持ちになったが、口に出したらややこしくなるので止めた。


「今回はあっちも悪いと思うけど、手を出したテンマも悪いと思う。だから喧嘩両成敗ってことで許してあげて。…ね?」


「…うん。わかった…今回だけだからねテンマ」


「お、おぅ」



(やっぱアローンはコレットには弱いな…)


昔からそうだ。俺らは性格は全く違うが唯一、同じなのがある。


それはコレットに対する気持ちだ。



幼なじみだとか、仲間だとかそんな柔な気持ちじゃない。


きっとそれ以上なのを俺らはコレットに抱いていた。






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