(………) 積み卸しの作業をしていたコレットは不意に空を見上げた。 先ほどまで薔薇の陣の香気で暁色だった空が薄紫色に変わっている。 (…不気味な色…) まるで空が紫色に侵蝕されているようだ。 「オイ見ろよ、空が」 「なんだあれは…」 周りにいる村の人達も空の異変を感じて次々と戸惑いの声を零す。 不安や戸惑いの声は瞬く間に村中の人達に広がり、騒々しくなった。 「コレットちゃん、この騒ぎは一体…」 気になって出て来たベアトリーチェの父親は皆の視線が空に向いている事を知り、空を見上げる。 「こ、これは…!!」 空の異変に気づいたベアトリーチェの父親も愕然と目を見開いた。 「まさか冥闘士がここまで攻めて来たんじゃ…」 「きっと薔薇の香気が負けているんだ…!!アルバフィカ様が…」 みるみるうちに村の人達は口々にざわめき出す。 (冥闘士…) 村の人達の会話の中で出てきた冥闘士、という言葉にコレットは何か引っかかっていた。 軽く針に刺されたようにズキズキと頭痛がする。 「アルバフィカ様は負けないわ!!それはこのロドリオ村のみんなが知っていることでしょ?」 すると教皇の宮殿から帰って来たベアトリーチェがみんなの不安の声を拭い去るように叫んだ。 その手には一輪の美しい赤薔薇を握りしめている。 「だけど聖闘士たちはきっとアテナ様を第一に守るだろう…」 「そうよっ!きっとそうなったら私達、見捨てられるわ…!!」 「……っ」 悲嘆めいた村の人達の叫びにベアトリーチェは反論できず、下唇を噛み締めた。 確かに彼らにとって守るべき存在はアテナだろう。 . [mokuji] [しおりを挟む] |