作業が終わり、休憩をもらったコレットは双魚宮に来ていた。目的はもちろん、借りた物を返すこと。 「…やっぱりいない…よね」 神殿の中に勝手に入って良いものかと思って入口で躊躇っていると中から誰か歩いてきた。 「……!」 近づいて来た相手はコレットの姿を見て驚き、足を止める。 (あ、良かった…人、ちゃんといたんだ…) 「あの、すみません…」 「…何しにここにきた?」 暗闇で隠れて相手の姿は分からないが拒絶する声はあの時の聖闘士と同じだとコレットは気づいた。 「お借りした物を返しに…」 「そんなものなど無くても困りはせん。だから早く立ち去れ」 冷然とした声音が響く。 だがコレットは怯まなかった。怯んだらもう二度と会えない気がしたからだ。 「…怖いんですか?その血で人を殺してしまうんじゃないかって」 「…!?」 玲瓏とした表情を浮かべてコレットが言うとアルバフィカは驚いたのか言葉を詰まらせた。 「私には貴方自身に流れる血の辛さは分かりません…ですが…ですがこれだけは分かります…貴方はとても優しい方なんだということが」 「………っ」 「たとえ貴方の血が毒なんだとしても私は気にしません。それだけは覚えておいて下さいね。…マント、ありがとうございました。あとこれはお礼です」 スッと自分で作った花束を畳んだマントの横に置いて一礼すると颯爽と帰って行った。 (…変わった女だ) アルバフィカはコレットが帰ったのを確認するとマントと花束を拾い上げる。 「いい香りだ…」 花の一輪一輪は生き生きとしており、手入れが行き届いている事が分かる。 (毒だとしても気にしない…か) アルバフィカはコレットの姿を思い出し、フッと薄い笑みを浮かべた。 . [mokuji] [しおりを挟む] |