魔宮薔薇





「ああ、それはアルバフィカ様だな」


花束を作る作業をしながらコレットが昨日会った男の話をするとベアトリーチェの父親は頷きながらそう言った。


「アルバフィカ様…?」


「あの方は黄金聖闘士でね。あ、黄金聖闘士というのは−−」


ベアトリーチェの父親はコレットに分かりやすく説明してくれた。


黄金聖闘士はアテナを守る為に存在している戦士で、


この町の先にはアテナの間つまりは教皇の間へ続く十二宮があり、黄金聖闘士はそれぞれの星座を守護している。


ちなみに十二宮最後の宮である双魚宮は直接教皇の間に続いているらしく、そのため双魚宮と教皇の間には魔宮薔薇が敷き詰めているそうだ。


「魔宮薔薇はアルバフィカ様が敷いたのだが、あの方は魔宮薔薇に耐える為に長い間、耐毒の修行をされてな。血が毒に染まっているんだよ」


「血が毒に…ですか?」


悲しげに眉を寄せてベアトリーチェの父親は頷く。


「あの方はご自身の体が人の害になると思っていらっしゃる。その血が誰かに危険を及ぼすのを恐れて自ら孤立していらっしゃるのだよ」


(…そうだったんだ)


コレットは近くにあるマントに手を伸ばした。


人間との関係を自ら断ち切る。

(でも…それは)


とても悲しい決断だった筈だとコレットは悲しげに顔を伏せた。







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