女神として






フッとコレットは意識を失い、体がグラリと傾く。


ヒュプノスはコレットの体を支えるとそのまま抱き上げた。


スゥッとコレットの姿が元に戻る。



(覚醒した反動が激しかったようだな…)


しかしこれでペルセフォネ様の力は解放された。


…だが。


「パンドラっ!我々はハーデス様のお心の揺らぎを断てと言ったがペルセフォネ様に手を出せなどとは申しておらぬぞ!!」



「も…申し訳…きゃあああ!!」


激昂したタナトスは翳した手から雷光の奔流を放つとパンドラの全身に凄まじい雷光が迸り、灼いた。


断末魔の叫びを上げたパンドラはしゅうしゅうと全身から白煙を昇らせる。



「私情でペルセフォネ様に手を出し、あまつさえお体に傷をつけるとは…パンドラ、この罪をどう償うつもりだ?」


「…そ、そ…れは…」


優しく口を開くヒュプノスにパンドラは逆に恐怖を覚えて体が震える。


「ハーデス様が知ったら…それこそお前はどうなるか…少し見物かもしれんな」


「そ、それだけはお許し下さい!!」


追い打ちをかけるタナトスの言葉にパンドラは頭を振って切実な声を上げた。


ハーデスの耳に届いたら恐らくお叱りを受けるどころかではないだろう。


下手をすれば殺されるかもしれない。


ヒュプノスは片頬をつり上げて笑う。


「−−よいタナトス。仕置きはペルセフォネ様に任せるとしよう」


ペルセフォネを大切に抱きつつヒュプノスはパンドラに背を向けた。


「ふん、パンドラよ。命拾いしたな」


タナトスは口元に薄い笑みを浮かべると姿を消した。
「よいかパンドラよ。いくらお前がハーデス様を愛し、尽くそうがあの方はお前のものにはならん。…お前の使命はこの方を守り、そしてハーデス様に永久の忠誠を誓う事だ。……その言葉、忘れるでないぞ」


「は…はっ!!」


パンドラは慌てて頭を下げる。


ヒュプノスはその言葉を聞き、微かな笑みをするとコレットをその腕の中に抱いたまま、姿を消した。







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