花園




「…−−」


コレットはアローンが作った思い出の場所で小鳥を指先に乗せて歌っていた。


コレットの歌声に惹かれて小鳥達が集まる。


「……!!」


突如、晴れていた空が曇り宵闇がこの箱庭を覆った。


小鳥達は突然の暗闇に驚き、バサッと羽音を鳴らしてコレットから飛び去る。



そして入れ替わるようにパンドラがコレットの目の前に現れた。


「あなたは…」


パンドラの名を呼びかけたコレット。


だがパンドラは手にしていた槍の矛先をコレットに突きつけて制した。


「な…何をするつもりですか…っ!?」


「黙れ!人間の女め!!卑しい身分でありながら図々しくもペルセフォネ様の名前を名乗り、さらにはハーデス様を誑かそうとは…!!」


烈火の如く怒ったパンドラにコレットはビクッと身を竦めた。



「っ、私は…あの人を誑かした覚えは…」


「ええい黙れ!!」


柳眉を逆立ててパンドラは怒号の声を上げるとコレットの頬を平手打ちした。


凄まじい力で張り手されたコレットはそのまま地面に倒れる。


パンドラは追い討ちをかけるように三叉の先端をドレスに突き刺した。


生地がビリッと破けて隠れていた太ももが露わになる


「…お前やあの天馬星座、そしてアテナの存在はハーデス様にとって害になる」


「!」


ピリッと雷撃がほとばしり、コレットは身を強ばらせた。


「さぞや気分が良かったであろう!ハーデス様のお心をかき乱し、あの双子神も騙せたのだからな!!」

言いながらパンドラはコレットの太ももを、槍で刺し貫いた。


「−−−!!」


あまりの激痛にコレットは声にならない悲鳴をあげた。


白い足やドレスが鮮血に染まる。


「お前さえいなくなれば!!」


パンドラは続けて左の太もも、そして腕に突き刺した。


彼女の怒りは最早八つ当たりに近い。


「っ!!」


全身に激痛が走った。


あまりの痛みにコレットがおとがいを反らして声を洩らす。


(なぜ…この女)


泣かない?


叫ばない?


息を見出しながらパンドラは無意識に追いつめられていた。


何度も貫いた痛みは想像も絶するものがある。それでもコレットは悲鳴の一つも上げない。


「っ、この!!」


パンドラは雷撃を纏わせた槍をコレットの顔面に向けて思い切り振りかざした。


「−−−っ!?」


避けきれない!


咄嗟にコレットは目を瞑る。


その瞬間、腕から流れ落ちた血が手首にはめていたサーシャの花輪に当たり、花輪が光を放った。





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