けたたましい音をたてて扉を開いたパンドラは戦況を把握する為、天井にある星座図を見上げた。 (ゼーロス達の小宇宙が星図の牡牛座と共に消えた…天馬星座は未だそのまま…) 「くっ、しくじったか…」 忌々しげに口元を歪めたパンドラは下唇を噛み締める。 冥界の中でも屈強であるゼーロス達の勝利を確信していた。 だが実際はどうだ。 天馬星座は未だにこうして生きているではないか。 「おのれ…おのれ天馬星座!!」 呻いてパンドラは声を怒号の声を上げた。 この失態をハーデスや、双子神が知ったらどうなるか。 パンドラの身体は震える。これらは、怒り、そして恐怖だ。 「いや…」 パンドラは首を振る。 「次こそ天馬星座を仕留めればいいだけのこと!それにお優しいハーデス様ならば最後にはわかってくださる…」 (そうだ。私がいかにハーデス様を愛し、敬い、冥王軍のために尽力しているかを…!!) 『よかろう。その心に免じて今回だけはその失態、許してやろう』 後方に近づく気配にパンドラは恐怖で顔を強張ばらせながら顧みた。 ヒュプノスがパチパチと手のひらを叩きながらパンドラに近づく。 「¨我々¨はな。だが¨ハーデス様¨はどうだろう」 「ハ、ハーデス様はっ…」 『パンドラよ…!!』 「っ!!」 室内に響いてきた声にパンドラは思わず息を呑んだ。 『この度の勝手な行動を説明せよ!!』 「……れは…」 『パンドラ!!」 「はっ…はい!!すぐに参りますっ」 パンドラの言葉を聞いてハーデスの声と気配は消える。 「黙ってお叱りを受けるのか?それとも申し開きでもするのか?」 ヒュプノスは手元に持っている花の香りを楽しみながら言う。 「どちらにしろハーデス様はお前の真心など知ることもなくお前を罰するぞ。あのお方の心にはペルセフォネ様しかいないのだから。」 「く…っ!!」 苦虫を噛み潰したようにパンドラは顔を歪める。 「以前、お前に説明したが…お前の手に余るのなら我々が特別なアトリエを用意するぞ。」 「……できません…愛するハーデス様を裏切るなど…!!」 「このままではあのお方もペルセフォネ様も天馬星座の元へ行く。それだけは何としてでも止めなければならない」 「………っ、」 全ては…冥王軍の為に。 ヒュプノスは花をパンドラの髪にそっと挿して笑った。 . [mokuji] [しおりを挟む] |