鮮やかな死の色





声と映像が脳内に駆け巡り、コレットは身体がぐらりと傾いた。


「その様子だと思い出したようですね」


タナトスはしたたかな笑みをよぎらせる。


「…私を恨んでいるのですか?タナトス」



「いいえ。我々にとって二百数十年など一瞬のこと。…今日は我等の姫君が罪の意識に苛まれていると知り、心配してここまで駆けつけたのです」


「私は平気です。…これは人としての痛み、貴方達に理解して貰おうなどと考えていません」

「それに…私は覚悟を決めました。…ペルセフォネとして生き、この聖戦を終わらせると。」



「それはハーデス様の為ではなくその器の青年の為に…ですか?」


「っ、…!?」


タナトスの言葉にコレットは目を見張る。



「…失敬。漫ろ言を言い過ぎたようですね」


タナトスは失笑すると左腕を横手に突き出し、時空を歪ませる。


「貴女様のお顔も見れた事ですし、今日はこれで失礼します。…ではまたお会いしましょう、麗しき我等の姫君」


そしてタナトスは時空の歪みに足を踏み入れる瞬間、最後に小さく呟いた。




「…俺は貴女様が己自身を犠牲にしてまで愛している人間が心底疎ましく思いますよ」



「えっ…」


問い掛ける間もなくタナトスは消え去り、時空が元に戻る。


「………」



再び静寂が訪れた部屋でコレットは千切れてしまった花輪を強く握りしめた。






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