色彩





声。



誰かの声が聞こえる。


『ペルセフォネ、』


ああ…誰だろう。


知っている。


私はこの声の持ち主を。


優しい声を。


『ペルセフォネ、どんな事があっても人を慈しむ心だけはをなくしてはなりませんよ』


そうだ。この人は私のお母さんだった人。


もう顔も忘れてしまったけど、ずっとずっと昔にいたお母さん。



『−−−、』


声。



違う声がする。



『すげーっ!お前って歌うまいんだな!』


男の子だ。


笑ってる。


春になったら花が沢山咲くお気に入りの場所。


風の音。青い空。


覚えてる。


その場所で私はテンマと出会った。


『コレット…』


声。


また違う声が聞こえる。



『ありがとうコレット』


アローンだ。


覚えてる。


誕生日に花冠をプレゼントするとアローンは嬉しそうに笑ってくれた。


『ちぇっ!アローンのはあってオレの分はないのかよ』


『あー!もしかしてテンマ、兄さんに嫉妬してるんでしょ』


『ち、違げーよ!』


拗ねたテンマにちょっかいを出してサーシャは笑う。


大切な親友。



大好きな人たち。



覚えてる。



私、覚えてるよ。



…私だけ前に進められないのは思い出に縛られてるからかな?

またみんなであの場所に行けるって考えてしまうからかな…?


甘いよね、私。


もう戻れないって知っているのに。


『コレット…』



ああ…温かい。



もう少しまどろんでいたい。




だけど目覚めないと。



声がするの。



私を呼ぶ声が。



声が…






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