(テンマ…) 『お前が冥府側の女神だとしても俺はこんな別れ方、許さねえからな!!』 ……だけど、 私は聖戦を見届けるってアローンに約束したから。 たとえ…アローンのしている事が許せなくても。 「…こんなところで立ち止まって何を考えておられるのですか?」 「−−!!、あなたは…」 窓越しから空を眺めていると前方から冥闘士が歩いてきた。 彼は以前、コレットが逃げ出そうとした時に力ずくで連れ戻した人だ。 「確か…輝火さん…?」 以前、アローンがそう呼んでいた気がする。 「…オレなどに¨さん¨や敬語などは不要です。あなた様は冥界にとって尊き身分の方なのですから。」 「ちっ、違います…!みんな勘違いしてるけどわたしは…コレットです。ペルセフォネじゃない。」 「しかし、双子神が間違われる筈はありません。それに貴女は無自覚なのでしょうが貴女の小宇宙は他とは違います」 「小宇宙(コスモ)…?」 「簡単に言えば気配です。小宇宙が分かれば相手の生死でさえ感知できる」 「気配…ですか」 あの部屋にある星座図のようなものが彼らの脳に存在するのだろうか。 「私にも感じる事が出きるのでしょうか?その小宇宙を」 「…いったい誰の小宇宙を知るおつもりですか?」 「え…」 「まさか天馬星座ではないですよね?」 輝火は獲物を射抜くような目でコレットを見据えた。 「それは……」 「……」 輝火は重い息をつく。 「何度も言ったはずです。貴女はこちら側(冥府軍)にいると。それを…」 「わかってます…わかって…ます…でも」 沈痛の表情を浮かべるコレットの体が小刻みに震える。 「……どちらかを選べば片方は消えてしまう。貴女はそれが怖いのですか?」 「………、」 サーシャとテンマ。 そしてアローン。 いっそのこと何もかも忘れられたら楽なのに。 「女神の記憶を封じ、人間としての生を生きている今の貴女にはとってこの聖戦は苦痛以外の何ものでもない。…ですが、冥府の女王としての運命を受け入れて下さい」 「…………」 輝火は間違っていない。 どちらにしろ冥府軍についてきたという事で自分はアテナとテンマを失ったのだ。 (私はもう…戻れないんだ) あの頃にも。 テンマやサーシャの許にも。 運命を受け入れなければ。 コレットは震える諸手をギュッと握り締めて目を閉じた。 . [mokuji] [しおりを挟む] |