「なに!?」 (余の力が…抑えこまれていく…!?) 力が入らず、よろめいたアローンは地面に足が着いた。 (これは…コレットの…いや、それだけじゃない…) 光は次第に弱まり、無数の護符が地面から現れた。 (アテナ神殿全体にアテナの護符が貼られていたとは…!!) 恐らくコレットの力で効果を発動したのだろう。 「この場にペルセフォネ様がいらした事は好機!これ以上貴方の思い通りにはさませんぞ!冥王…!!」 「教皇…!!」 司祭の服に黄金の兜を被った白髪の男が黄金聖闘士達の背後から静かに歩いてきた。 「奴を弱体化させた今ならその身も動くぞアルデバラン」 教皇は言いながらコレット達の許へ歩み出る。 「二百数十年ぶりですかな?ハーデスよ。…まさかそこまでペルセフォネ様の魂を持つ者に執着していたとは思いもよらなかったですぞ」 「…ふ、なるほど…あの時の小僧の内の一人か…老獪になったものだ」 危機感など微塵も意に介さずアローンは笑った。 「この護符は前聖戦のアテナが遺したものか」 「その通り、アテナ様の血で作られた聖なる護符よ。結界を張り続けるアテナ様を無防備にするわけにはいかぬからな。まさかペルセフォネ様に護符が反応するとは予想がつかなかった」 指と指の間に数枚挟んだ護符を教皇は上空に投げた。 「アテナよ!!」 「ええ!!」 教皇の言葉にアテナは気を高める。 「…!何をするつもりなんだ…!?」 地鳴りと振動が神殿全体に轟くと地面がガラスのように透明になり、下に巨塔が出現した。 「…魔塔、封印の地…空間を繋いだのか…」 「そうだハーデスよ。弱体化した貴方ならばこそ私とアテナの力でここへ連れてこれた」 教皇は再び護符を構える。 「…余の魂か…」 アローンは俯いて独白する。 「まったく、お前達は本当に愛すべき愚か者だな」 そして顔を上げて憫笑した。 『いいえ、そのような者たちにその言葉はもったいのうございます』 「−−!?、女の声…」 遮るようにして神殿全体に響き渡った声にアルデバランは眉をひそめる。 『ここは我らにお任せくださいませ』 女の声が途切れた瞬間、空間がぐにゃりと歪む。 歪んだ狭間から頭部のない頸玉だけの馬が二頭、漆黒で塗られた豪華な馬車を率いて神殿に侵入してきた。 . [mokuji] [しおりを挟む] |