タナトスとヒュプノス





「タナトスよ。ペルセフォネ様の様子はどうだ?」


カッ、


チェスの駒を動かし、ヒュプノスは自分とよく似た神、タナトスに問う。


「力は未だに覚醒してはいないようだ。…いや、女神としての自覚がないのかもしれんな」


頬杖をしながらチェス盤を眺めているタナトスは片方の手で駒を玩ぶように器用に回す。


「今のハーデス様としてはペルセフォネ様の記憶など思い出して欲しくはないと思うが…」

「ふっ、人間であれ神であれ誰しも好いている者には嫌われたくはないものよ」


体勢を崩し、タナトスは身を乗り出して駒をヒュプノスの手前に置いた。


「しかし…人間に転生してもあの美しさは変わらない。人間の姿であの容姿なのだ。覚醒したらどのような姿になるか…気にはならないか?」


「…そうだな。なにせ最後に見たのは二百数十年前だったからな…」



ハーデス様が無理やり神界より連れ去った女神。


(さて…ペルセフォネ様がハーデス様に靡くか人間共に靡くか…見物だな。)



様々な思いを巡らせてタナトスは酷笑した






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