花の鎖





ある日コレットは夢を見た。アローンが血の涙を流して泣いている哀しい夢を。


「アローン?」


手を伸ばすとアローンはゆっくり振り返った。


彼の髪の色が毛先から黒に変わる。


「…コレット」


哀しげに小さく紡ぐ言の葉はコレットの心にさえも染みてゆく。


「君はこんな姿でも僕のこと…好きでいてくれるかい?」


「うん、どんな姿をしていてもアローンはアローンだよ」


「ありがとう」迷わず口にすると彼は優しい眼差しで微笑んだ。


「……っ、!!」


ハッと起き上がるとそこは見慣れたはずの部屋だった。


「どうしたコレット?」


テンマが寝惚け眼で目を擦りながら起き上がる。


「ううん…なんでもないよ…ちょっと哀しい夢を見ただけ、」


何故だろう。さっきみたばかりなのに覚えていないなんて。


「そっ、か…。」


テンマは目線を逸らして頭を掻くとコレットの横に座った。


「テンマ…?」


コレットが首を傾げる。


するとテンマは手を伸ばしてコレットの頭を撫でた。


「なんつーか、さ。よく、お前がチビ達にやってたから」


コレットは夜、孤児の子供達が眠れない時や、夢で泣いている子の頭を撫でたりして落ち着かせていた。


テンマはそれを言っているのだろう。


「ありが、と…」


「お、おい!どうしたんだ!?そんなに悲しい夢みたのかよっ」


「う、ううん…でもなんで泣いているのか、わかんない…」


ポロポロと涙が止めどなく溢れてくる。


「ねぇ、テンマ」

「ん、なんだ?」


「私達、ずっと一緒にいられるよね?」


「コレット…」


「離ればなれになってしまったとしても最後にはまた…会えるよね…?」


不安げに瞳を揺らすコレットにテンマは人差し指で額を軽く突いた。


「!?」


「バーカ。んなもん当たり前だろ。たとえ離れてしまってもこの地球にいる限り俺たちは繋がってる。だから安心しろって」


テンマはニカッと歯を出して笑う。


「っ、うん!」


その笑顔にコレットは救われた気がした。





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