転生





「お前なのかっ!?街をこんなにしたのも…!!」



「だとしたらどうするつもりなの?テンマ」


「っ、お前…なんでこんなことすんだよ!!」


「僕がハーデスだからだよ」



「…!!」


テンマは目を見開く。


そんなテンマにアローンは胸に手を当てて笑った。


「でも相変わらずだね、テンマ二年前と何も変わってない。嬉しいよ」



(花輪…)


アローンの長い袖からサーシャがくれた花輪が見える。
もしかしたらまだアローンは…アローンなのかもしれない。


ふとそんな願望が芽生えてきた。

「ねぇテンマ…この絵覚えてる?」


「あの絵は…!!」


(二年前、テンマが聖域へ行くときに描いた絵か…完成しておったのか)


確かその時には少女がいた記憶がある。


あの少女も奴に殺されてしまったのだろうか…



「君が聖闘士になって帰ったら続きを描くって約束したよね、あの時作れなかった赤を僕はやっと見つけたんだ…真実の赤だよ」


地面から血の海が吹き出し、アローンの周りに倒れていた死体が血の海に沈む。


「な…っ」


(血の海…!?いつの間に)


筆を取り出したアローンは筆先を血の海に浸した。


そしてそれをテンマの絵に向けて×の字を描く。


「ガハッ…!!」


その瞬間、テンマは血を吐いた。


まるで絵の力がテンマを蝕むように。




「アローン…お前…まさかコレットにも…」


「コレットにはしないよテンマ。彼女は僕にとって大切な人だから」


「どういう意…」


伸ばされた手は虚空を切り、そのまま地面に倒れた。


その途端、アローンの手首にあった花輪が切れる。




「バカな!!っく、テンマ!!おのれ−−っ、!?」



テンマの許に駆けつけた童虎はアローンの異変に気付いた。



アローンの金髪が毛先から漆黒に変わる。



(さよなら…テンマ)



さよならサーシャ


さよならアローン



そして−−−




さよなら…コレット




血の涙を流してアローンは童虎達に背を向ける。


「待て」



歩き出した童虎は制止の声を上げた。


「おぬし、なぜ親友であるはずのテンマを殺した…?」


「知れたこと。死は救いだからだ」


振り返ったアローンの瞳には感情がなかった。







[ 36/109 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]