血と悲しみ




『…テンマ』


「−−、コレット?」


ふと呼ばれた気がしてオレは声を洩らした。


「何をしている?テンマ、遅れるな」


「お、おう…」


気のせいか…


だけど嫌な予感がする。



先頭を走る童虎について行きながらオレは周りを見渡した。


(この辺り…大聖堂のある森だよな…)


やはり冥王復活の場所はオレの故郷なのか…!?


あいつらは…



コレットとアローン、そしてチビ達は無事なんだろうか。



そう思った直後、北の方角から眩い光が放たれた。


「な、何だあの光は…!?」


「あの場所でいったい何が…!?」


いきなりの事に立ち止まった耶人達が騒ぎ出した。


あの方角には…街が…っ、


『テンマ』


「っ、コレット!!」


「な、おいテンマ…!!」


不安が頭を支配し、オレは耶人の言葉を振り切って走り出した。


街は業火に包まれており、家は跡形もなく廃墟と化していた。


¨死¨という言葉が頭をよぎる。



「…!!」


大丈夫…きっと生きてる…!!


現実に目をむけられずオレはひたすら走った。走って走りまくった。


きっと生きてる…!!


アローンもコレットも…きっと…だから…!!


バンッ!


「コレット、アローン!!」


だけどそこには血痕と似顔絵以外何もなかった。

嘘だ…



嘘だ…



こんなのって…


「っ、」


街に戻るがコレットはおろか、街の人達の姿もなかった。


「テンマ、大丈夫か…?」


追ってきた童虎が心配してオレの肩に手を置く。


「くそ!ハーデスの野郎っ…!!」


なんでだ…!!なんでこんなことをしやがる…!!



「うわぁ!!」


すると急に耶人の悲鳴が上がる。


振り返ると耶人が天上に現れた無数の紫の光に当たり弾き飛ばされた。



「耶人!大丈夫か!!」



童虎は急いで駆け寄り耶人の身を支えるが彼の意識は失ったままだ。



「久しぶりだね、テンマいや…アテナの聖闘士」



「お、まえ…」


空から現れたアローンは崩れ落ちた瓦礫の上にフワリと降り立った。


アローンの周りには街の人達が悲惨な姿で倒れている。


背後には禍々しい程の冥衣を着た男達。


それで直感した。


アローンは…ハーデスに選ばれたんだと。




だけど笑顔はいつものアイツだった。






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